流出メールが暴いた米ISPの“破壊的”なスパマー支援(2/2 ページ)

» 2004年09月09日 16時56分 公開
[IDG Japan]
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 8月31日付けのメールでは、同社に与えられた選択肢が比較検討されているが、その中でシーマン氏は、スパム業者を追い払えば「契約不履行」で法的な問題に巻き込まれる可能性があると指摘している。「そうなれば、どこで境界線を引くかという判断にもよるが、売上高の減少は月間で25万ドルから200万ドルにも及びかねない」

 シーマン氏が検討しているそのほかの選択肢には、ブラックリストを避けるために同社のIPアドレスを頻繁に変えることや、「Spewsなど」のブラックリストを「中傷、恐喝、契約妨害」で訴えるというものも含まれていた。

 だがキストラー氏のような従業員にとっては、スパム顧客を擁護するか、それともSpewsなどの要望に従うかという選択はもっと単純明快なものだった。

 「われわれは既にRBL(Realtime Blackhole List)プロバイダーからの信望を失っている。すぐにでも対処しなければ、彼らや将来の潜在的な顧客からの信望は回復できないだろう」と同氏は記している。

 「ある程度の売上減につながるであろうことは理解している。だが私に言わせれば、今の状況はSavvisにとって何の保証もない大きなリスクだ」とさらにキストラー氏は続けている。

 シーマン氏はSavvisがスパム業者を支援したことを認める一方で、意図的にそうしたわけではないと語っている。

 「ある意味では、当社はスパム業者を支援したことになるだろう。確かにそうだ。だが、意図的にそうしたかと言えば、そうではない」と同氏。

 それよりも、シーマン氏はこの状況を、C&Wの買収を通じて獲得した多数の技術チームの統合に苦戦する企業の問題として捉えている。C&W自身も、Savvisに買収される以前に幾つもの小規模ISPを吸収していた。

 「あるグループが不正使用の問題を担当し、別のグループはIP調達を担当し、また別のグループが会社を運営しているという状態だった。これは私のミスだ。この点について、当社の最高経営責任者(CEO)であるロブ・マコーミックにもっと早くに注意を促すべきだった」と同氏は語っている。

 シーマン氏は自身のメールについて、自社の特定の慣行を正当化するためのものではなく、業務統合の問題に気を取られていた同社の幹部らに対して、高まりつつあるスパムの問題を教育し、彼らのあらゆる疑問を解消することが目的だったと語っている。

 だがテランソン氏は、シーマン氏のこうした説明を受け入れていない。

 「彼らは私に面と向かって、スパムはもうけの多い収入源だと語り、スパムを送っている顧客を切らないよう私に命じた」と同氏。

 テランソン氏によれば、C&Wの買収に先立ち、自社ネットワークにおけるスパム行為を認めないISPであるという評判を懸命に培ってきたにもかかわらず、Savvis幹部は現金を渇望するあまり、スパム企業をホスティングして、彼らにプレミアムサービス(ブラックリストに載ったアドレスを取り替えるために新しいIPアドレスを提供するなど)を販売することを将来有望な収入源と見なしていた。また同氏によれば、こうした方針は「上層部から直接」与えられたものだという。

 テランソン氏によるこうした告発は、シーマン氏らによるメールの内容とも一致しているようだ。

 シーマン氏は自身のメールの中で、Savvisの顧客は「見方によっては、メールマーケティング業者ともスパム業者とも取れるが」、こうした顧客は厳密には米国の迷惑メール対策(CAN-SPAM)法に準拠していると指摘し、「現行の企業ポリシーは数カ月前にロブ・マコーミック(CEO)が定めたもので、いかなる変更にもロブの承認が必要だ」と記している。

 Internet Research Task Force(IRTF)のスパム対策研究部門に所属し、AbuseNetと呼ばれるスパム対策サービスも運営しているジョン・レバイン氏によれば、Savvisが論じている戦略や手法は3年かそれ以上前の米国ISPの間では一般的だったが、今日では稀だという。

 「まるでタイムワープしているようだ。IPアドレスを移動しさえすればスパム業者でもホスティングできると考えるISPが、まだこの国に残っていようとは思ってもいなかった」と同氏。

 レバイン氏によれば、かつては合法なISPでも、IPアドレスの一部あるいは全部がスパムブラックリストによって誤って遮断されるケースがよくあったが、今ではそうしたトラブルはほとんどない。

 「最近では、実際にスパムの問題など全くないのにブラックリストに載せられるというケースは極めて稀だ」と同氏。

 米国ISPの間では、顧客の活動を緩やかに監視したり、容認できる程度の利用ポリシーを強制したりなど、スパム業者との関係を断絶するための手段をめぐり、顧客とのトラブルに見舞われているケースはある。だがSavvisのメールから押し測れるように、今どき、スパム業者を支援し、賛助しようとしているISPが見つかるというのは極めて異例のことだとレバイン氏は語っている。

 「今の時代にそんなことをしている人がいるとは驚きだ。スパム業者がブラックリストを逃れられるよう積極的に支援するなんて、反社会的なこと甚だしい」と同氏。

 スパム対策ブラックリストのSpamhaus.orgには先週の時点で、Savvisがホスティングする146のスパムドメインが掲載されていた。そのうち57個は、スパム対策団体のROKSO(Register of Know Spam Operations)ブラックリストに既知のスパム業者として挙げられていたものだ。

 Savvisは9月8日、今後はSpamhaus.orgと協力し、「SavvisのグローバルなITインフラでスパム行為を促進、容認することのないよう」、ROKSOのデータベースを「主要な基準」として採用する方針を発表した。

 シーマン氏は自社のネットワークからスパム業者を排除する作業に取り掛かる方針を明らかにし、向こう60日間でSavvisとつながりのあるスパム業者の数を大幅に削減できるだろうと語っている。

 ただし同氏によれば、ROKSOのブラックリストに載っているスパム業者が明らかに最初のターゲットになるが、それ以外にSpamhaus.orgでブラックリスト入りしている業者に関しては、本当にスパム業者かどうかを見極める作業にもう少し時間がかかる見通しという。

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