照準を合わせた「Stinger」、日本IBMがDB2 V8.2を正式発表

日本IBMは9月10日、「DB2 Day 2004」カンファレンスを行い、64ビットLinuxにフル対応したデータベース「DB2 UDB V8.2」を正式デビューさせた。

» 2004年09月10日 17時41分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 IBMは、「Stinger」というコードネームに「ハチのひと刺し」という意味を込めてDB2の最新バージョンを開発してきたというが、「携帯型の対空ミサイル」という物騒な意味もある。その威力が9月10日、300人を超える国内のデータベース開発者らに披露された。その照準はOracleやMicrosoft SQL Serverにピタリと合わせられている。

 日本アイ・ビー・エムは都内で「DB2 Day 2004」カンファレンスを行い、64ビットLinuxにフル対応したデータベース「DB2 UDB V8.2」を正式デビューさせた。

 DB2 Dayの開幕前に行われた記者発表会で中川いち朗DB2インフォメーション・マネジメント事業部長は、「2年ぶりのバージョンアップ。満を持しての出荷。64ビットLinuxフル対応によってサーバ統合のニーズにもこたえられるようになった」は話す。

 Linuxというと、例えば、Webサーバのようなスケールアウトによって拡張性を追及する領域に使われるイメージが強いが、中川氏は、「zSeries上でLinuxを活用し、ばらばらに導入されたサーバを統合したいニーズが増えている」と指摘する。同社によれば、国内のzSeries新規ビジネスの30%以上がLinux関連だという。新しいDB2では、これまでのIA64、AMD64に加え、Intel EM64T(Extended Memory 64 Technology)、IBM eServer pSeries、iSeries、およびzSeriesで稼動するRed HatやSuSEにも完全対応した。さらに、SuSE Linux Enterprise Server 9ではカーネル2.6の大容量メモリページをサポートしており、パフォーマンスも大幅に改善できるという。

 TPC-Cベンチマークには、1tpmC当たりの価格によってプライスパフォーマンスを示す項目があるが、現在のところ、HP ProLiant ML350(Xeon/3.06GHz×1基)、SuSE Linux Enterprise Server 9、そしてIBM DB2 UDB Express Edition v8.1の組み合わせが1.61ドルでトップにランクされている。2番手にもProliant ML350(Xeon/2.8GHz×1基)、Microsoft Windows Server 2003 Standard Edition、そしてIBM DB2 UDB Express Edition v8.1の組み合わせが1.68ドル着けており、ワンツーフィニッシュだ。こうしたベンチマークによって一概に実際のシステムのTCOを論じることはできないが、ひとつの参考にはなるだろう。

 ちなみに、システムのパフォーマンス競争では、Oracleに軍配が上がり、Itanium 2/1.5GHzを64基搭載したHP Integrity rx5670クラスタシステムとRed Hat Enterprise Linux、そしてOracle Database 10g Enterprise Editionの組み合わせが、118万4893tpmCを叩き出している。

可用性とオートノミックにも磨きがかかる

 Stingerの魅力は、優れたTCOや拡張性ばかりではない。V8.2から新たにディザスターリカバリ機能「HADR」(High Availability Disaster Recovery)が搭載され、遠隔地にあるスタンバイDBサーバに対しても数秒で切り替わるなど、24時間連続稼動が可能となった。

 また、V8.1から組み込まれたオートノミック機能も、さらにその領域が広がった。新しいDB2では、バックアップを自動的に行うよう設定したり、物理データベース設計の変更に関してDB2がアドバイスしてくれるという。後者については、アドバイスによって再設計したところ、約7倍もパフォーマンスが向上したケースが紹介された。

 中川氏は、「これまでDB2を運用した経験のない技術者でも十分なパフォーマンスが得られる。DB2を新規採用する顧客らにはその点が評価されている」と売り込みに自信を見せる。9月1日から「DB2 & WebSphereキャンペーン」(DB2 ExpressとWebSphere Expressを同時購入40%オフ)が開始されているが、オープンソースなどでシステム構築したが、業務が拡張したため、システムの更新を考えている中堅企業がターゲットだ。

 ISVの取り込みについても、SQL Serverより先に、.NET Framework上でアプリケーションやコンポーネントを動作させるためのCLR(Common Language Runtime)をサポートし、その強化を図っている。開発を目的としてIBMのソフトウェア製品をダウンロードできるISV向けの「ソフトウェア・アクセス・オプション」も65%オフの4万1790円で提供されるという。

 DB2 UDB V8.2は、9月17日からダウンロードできるほか、10月29日からはメディアでの提供も始まる。なお、価格はV8.1と同じ、DB2 UDB Personal Edition V8.2 Installが6万6000円からとなっている。

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