「ミッションクリティカルな分野での利用を推進していく」とMSのリーズ氏。Interview

Tech・Ed 2004の開催に合わせて来日した、マイクロソフト コーポレーション サーバー&ツール・マーケティング担当 コーポレートバイスプレジデントのアンドリュー・リーズ氏に、ミッションクリティカル分野におけるWindows Server Systemの将来などについて聞いた。

» 2004年09月11日 19時00分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]

 エンタープライズ分野におけるマイクロソフトのサーバシステム攻勢はすさまじい。そしてそれらの製品群のマーケティングを一手に引き受けるのが、コーポレートバイスプレジデントのアンドリュー・リーズ氏である。同氏にサーバ製品群についての取り組みや、VS 2005などについて語ってもらった。

ITmedia リーズさんはサーバおよびツール担当ということですが、どのような製品を担当しているのでしょう

リーズ 基本的にはMicrosoftのすべてのサーバ製品、Windows ServerやSQL Server、Exchange Server、BizTalk Server、MOMやSMSなど、それに加えて開発ツール、Visual StudioやVisual Basicなどです。マイクロソフトの中でも「楽しみ」のある分野だと思っていますし、とくにエンタープライズにおけるミッションクリティカルな分野での利用を推進するために、さらにビジネスを拡大しています。.NETは開発者の方々に最も利用されているプログラミングモデルに成長していますし、われわれも力を入れています。

ITmedia 他のテクノロジーと比較して、.NETが開発者にとって、また使う側にとって優れている点は?

リーズ まず開発ツールとしては、XML Webサービスソリューションの開発が、例えばJ2EEなどと比較して容易に行えるという点です。もう一つは、サーバだけでなく開発ツールやデスクトップ製品すべてを統合するということにいまわれわれは取り組んでいます。こうすることで、一つのソリューションから企業が得られるビジネスバリューがとても大きくなり、コストの削減や管理性の向上などにもつながります。

 われわれがVisual Studio .NETやASP.NETなどを投入するまでは、Javaプラットフォームのほうがポピュラーでした。しかし.NETによるプロダクトの品質がXML Webサービスなどで認識され始めると、急速に広まることとなりました。

ITmedia 日本のIT市場やユーザーの印象は?

リーズ それほど日本市場を詳細に調査したという立場ではないのですが、Webサービスの開発状況を他の国々と比較すると、.NETの普及率の高さは日本も世界と変わらないと思います。Windows Server Systemに関しても、採用率や普及率はほぼ他の国々と同様です。

 特徴的なのは、日本はアウトソースが非常に進んでおり、またガバナンスという観点からですが、企業におけるIT部門の管理がより進んでいけば業績に直結するという意味で、チャンスが期待できます。

ITmedia 国内での稼動状況を見ても、ASP.NETに限らずサーバサイドアプリケーションという手法がそれほど浸透していないように思われますが?

リーズ 確かに5年前までは、マイクロソフトのソフトウェアをミッションクリティカルな分野で運用するということはあまり行われていませんでした。しかし、この状況は様変わりしています。米国では、通信会社がWindows ServerとSQL Serverを用いて、通話ごとに課金システムを動かしてその履歴を取るといった例もあげられています。これはミッションクリティカルな運用例です。こうしたケースが増えており、その理由としては、開発の容易性やTCOの削減が可能といった点からわれわれのプラットフォームが選択されているということだと考えます。またパートナーとの協業も、こうしたことの一因になっています。

ITmedia Windows Server System、あるいはWebサービスと置き換えてもよいですが、これらはそういったミッションクリティカルな分野での導入から進んでいくのでしょうか。エンドユーザーが気軽に利用できるようなシステムではどうでしょう?

リーズ 両方の組み合わせで発展していくと思います。ミッションクリティカルな分野での導入はSQL Server 2005の登場により、より加速化すると思います。日本ではメインフレームの割合が多く、また他のシステムの導入にはとても慎重です。ですから新しいテクノロジーの浸透には時間がかかるということがあります。

 百五銀行の採用例などから、徐々にWindows Server Systemへのマイグレーションの波は広がっていくと思います。

ITmedia Visual Studio 2005でも、2006年にリリースされる次期OSのLonghorn上で動作するアプリケーションや新Officeに関連するアプリケーションは、問題なく開発できるのでしょうか?

リーズ はい。Visual Studio .NETでも2005でも可能です。CLRをサポートしている限り、Longhorn上でもまったく問題なく動作します。

ITmedia Visual Studio 2005では、Team SystemやExpressといったエディションが増えています。これにはどういった狙いがあるのでしょう?

リーズ 現在のバージョンまでは実際にアプリケーションのコードを書くデベロッパーを対象にしていましたが、2005のTeam Systemでは、それをアーキテクトやテスター、実際のアプリケーションの展開・運用者であるITProにまで広げています。システム開発はこうしたさまざまな人々が共同で仕事をする必要があります。そのために、VS 2005ではこうしたメンバー同士のコミュニケーションを高めるための仕組みを用意しています。プロジェクト管理機能などもその一つです。

ITmedia Tech・Edの対象が今回からデベロッパーだけでなく、アーキテクトやITProまでカバーするようになったのは、そこに起因するのですか?

リーズ まったくその通りです。.NETでわれわれが実現し、提供してきたさまざまな機能がきっかけとなって、より多くのアーキテクトと呼ばれる人々がマイクロソフトの技術の検討を始めたり、あるいは実際に使い始めています。こうした人々に対して、さらなるアプローチが必要であると判断したからです。

ITmedia 9月8日に行われたTech・Ed 2004の基調講演では、マイクロソフト社長のマイケル・ローディング氏がユーザーコミュニティの重要性について時間をさいて語っていました。コミュニティについてはどうお考えですか?

リーズ 日本においても、あるいは世界においてもわれわれの成功のためにはコミュニティが重要であると認識しています。ただ、開発者やITProにツールを提供していくアプローチについては、また異なる切り口があると思っています。われわれはツールの提供によって開発者たちに力を与え、かれらはそれを利用してソリューションを作り上げていきます。

 コミュニティによって、そうしたユーザーと、相互の情報交換が可能となります。PASSJの活動などもよい例でしょう。彼らが必要とするソフトウェア利用のシナリオすべてをマイクロソフトが提供できるとは思っていません。そのために、自主セミナーを開催してユーザー同士の情報交換をしたり、彼ら自身が技術の最大活用方法といったシナリオを作り出しています。

 オンラインでの活動も重要ですが、実際に同じ場所に顔をそろえて意見の交換をすることも大切なのではないでしょうか。今回の日本でのTech・Ed 2004は、そうした相互のコミュニケーションを重視した内容になっていたのではないでしょうか。

マイクロソフト コーポレーション サーバー&ツール・マーケティング担当 コーポレートバイスプレジデントのアンドリュー・リーズ氏。
同じく来日中のWindows Server System製品管理ディレクター イリヤ・バクシュテイン氏。

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