Vine Linux 3.0の特徴(その2)UNIX USER2004年10月号「Vine Linux 3.0のすべて」より転載

2002年10月の2.6リリースから約2年ぶりにアップグレードし、Vine Linux 3.0がリリースされた。本記事では前編に引き続き、Vine Linuxの特徴や、Vine Linux 3.0になって何がどう変わったのかを見ていく。

» 2004年09月12日 12時00分 公開
[鈴木大輔(Project Vine),UNIX USER]
Vine Linux 3.0のパッケージカテゴリ

 本バージョンから新たに、Vine LinuxおよびVinePlusをまとめてカテゴリ分類することになった。メンテナンスレベルで見ると、これまではVine Linuxのみがメンテナンスされていると判断できた。しかし、VinePlusのパッケージは非常に良くメンテナンスされているものから、最初に作ってから放置されたようなものまで存在していた。このため、Vine Linuxで標準でインストールされるもの以外のメンテナンスレベルを判断する手段はなく、全体として「VinePlusは動かないかもしれないもの」として提供してきた。

 しかしVine Linuxとして、もっと多くのパッケージを柔軟に提供しつつ、標準システムとしてシェイプアップしたものを提供するためには、「ある程度以上メンテナンスされたもの」と判断できるソフトウェアパッケージ群が必要と考えられた。また、よりメンテナンスされているVinePlus収録パッケージを安心して使ってもらうためにも必要だったといえる。

 新しいカテゴリでは、Vine LinuxおよびVinePlusは全体として以下の6つのカテゴリに大別され、それぞれのレベルでメンテナンスが行われる。このうちcore、main、develがVine Linuxに相当し、plus、extras、orphanedがVinePlusに相当する。

  • core

 コアシステム。Vine LinuxインストールCDに必ず含まれ、最小構成インストールを行った場合にもインストールされる。将来的にはもう少しシェイプアップされると考えられる。

  • main(main-cd)

 mainはこれまでどおりのメンテナンスが行われ、原則としてリリース後はバージョンを固定、深刻なバグフィックスやセキュリティフィックス以外は修正されない。main-cdはmainのうち標準のインストールCDに含まれるパッケージ群である。今後mainの一部に加えて、パッケージを取捨選択したものを用途(たとえばサーバーなど)に合わせてリリースすることも視野に入れている。

  • devel

 mainに含まれるパッケージの開発用サブパッケージが含まれる。また、mainに含まれるパッケージの構築に必要な開発ツールも、今後ここに収録されるかもしれない。

  • plus

 追加パッケージ集で、これまでのVinePlusのうち、特定のメンテナにより十分メンテナンスされているパッケージが含まれる。このカテゴリに含まれるパッケージは、リリース後も継続してメンテナンスされる。また、従来Vine Linuxに含まれていたもののうち、インストールCDから削除されたアプリケーションの多くはこちらに含まれる。

  • extras

 追加パッケージ集で、これまでのVinePlusのうちメンテナンスがあまりされていないもの、あるいは新規に追加されたものが含まれる。今後継続してメンテナンスされるとは限らないが、メンテナが現れた場合はplusへ移動される場合がある。

  • orphaned

 すでに使われなくなったもの、ほかのパッケージからObsolete*されているものがここに移動され、今後メンテナンスは行われない。将来の利用可能性のために保管される。extras内のものでメンテナンスが一定以上滞ったものは、警告のうえで移動される。


 今後は以上のカテゴリ別にパッケージが管理されることになるが、現在はまだplus/extrasの境界は不安定な状態となっている。機械的に分類されているため、一部でそれぞれに相応でないものも含まれているが、順次修正される予定だ。

今後の予定

 Vine Linuxの開発には、直近の目標と長期的な目標こそあるものの、一般的な商用ディストリビューションや企業中心のディストリビューションのように、細かなリリーススケジュールはあらかじめ決めていない。もちろん、ある時点での予想スケジュールは公表しているが、あくまでその時点での状況を判断した予想のため、デッドラインなどを設けているわけではない。

 とはいえ、大まかな目標ラインを用意して、ある程度の区切りでリリースを行うことは、細かい調整やバグの発見のうえでも必要であることは確かだ。このため、目安として1年に1リリースを想定して開発し、さらに今回からは3.0/3.1のように間を短く取ってリリースバージョンのメンテナンスを行う方針としている。

Vine Linux 3.1

 直近では、Vine Linux 3.1に向けてバグフィックスと細かな調整を行い、2か月程度でリリースする予定となっている。現在のところあまり重大な問題は発覚していないため、この予定の大幅な変更はないと考えている。3.1では、原則としてバグフィックスと設定レベルの調整、一部のパッケージの追加にとどまり、大幅な変更は行われない。また、いまのところ3.1CRとして、これまで同様にハンコムリナックス社から製品版が発売される予定となっている。

Vine Linux 4.0(?)

 リリース直後のためまだ何も話は始まっていないが、目安としては次のメジャーバージョンは1年後を予定している。しかし、これまで同様リリーススケジュールは時機がくるまでは確定せず、リリースできる状態が見えるまではあくまで仮定のロードマップとなる。そのため、ここでは具体的な日程などは公表しない。

 なお、開発はこれまでどおりVineSeedを中心に進められ、基本的な方針や日程もここで議論のうえ決定する。当面はVineSeedの再編成からスタートし、メンテナの登録、ビルドシステムの公開などを行う予定だが、リリース待ち状態にある2つのアーキテクチャの状況を見て、実際の作業に入ることになるだろう。

このページで出てきた専門用語
Obsolete
利用しないことを明示的に宣言すること。メンテナンスされていなかったり、新しいバージョンが出て互換性に問題が発生しているソフトウェアは使用すべきではないため、明示的に宣言する。


UNIX USER 10月号表紙 最新号:UNIX USER 10月号の内容

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Vine Linux 3.0のすべて

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