動き出す「IPコールセンター」特許、その影響は?

CosmoComが行使を考えている特許は、IPベースのコンタクトセンターに関するもので、適用範囲は極めて広範だ。同社はライセンス契約を取り付けたい考えだが、必要なら訴訟も起こすとしている。(IDG)

» 2004年09月22日 10時20分 公開
[IDG Japan]
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 IP(インターネットプロトコル)コンタクトセンター技術の特許を保有する米ソフトベンダーCosmoComが、自社特許の防衛に動くことを考えている。同社関係者が9月20日、明らかにした。

 同社は、IPデータネットワークを利用するカスタマーコンタクトセンターを構築するための技術を発明した企業であると、同社執行副社長のスティーブ・コワルスキー氏は語る。この技術は音声電話に加えて、電子メールやテキストメッセージングなどの新しいアクセス方法の統合を可能にする。また、オペレータが分散した施設やホームオフィスから作業できる「バーチャル」コンタクトセンターも、この技術により実現されると同氏は説明している。

 コスト削減、勤務地の融通、社員と顧客の満足度向上が期待できることから、中小企業はIPベースのコンタクトセンターに目を向けつつある。さらにこうした新技術は大企業にも支持されるようになり、2006年には市場を席巻することになるだろうとDMG Consultingの社長ドナ・フラス氏は語る。Cisco SystemsはCosmoComとともにIPのみを利用したコンタクトセンター事業を展開しており、またAvayaやNortel Networksなど従来の交換機ベースのコールセンター業界における大手プレイヤーも、IPベースの新技術を支持しているとフラス氏。

 CosmoComは1996年に設立された未公開企業で、同年の4月1日に同社の特許クレームは有効になったとコワルスキー氏。同社は企業の社内コールセンターや、BT Groupなどのキャリアによるコールセンターサービス向けに使われるソフトを販売している。

 CosmoComの最新の特許(米国特許6,614,783号)は「インターネット・公衆交換電話網の通話ルーティングを利用する自動マルチメディア通信コールセンター分散システム」というタイトルで、2003年9月2日に発行された。これは2000年に発行された同社の特許(6,046,762号)の「延長」であり、この特許を拡大したものだとコワルスキー氏は説明している。同氏によると、最新特許の方がより強力な特許クレームを含んでいる。最新特許は適用範囲が極めて広範で、音声通話、マルチメディア通話、電子メッセージを発信者の情報とともに受け取ったり、転送する手法もカバーする。この特許が発行されて以来、CosmoComはこれをどう取り扱うかを検討してきたと同氏。同社は現在、この特許を侵害しているベンダーがあるかどうかを調べ始めたところだ。

 「当社の特許をどの程度侵害しているか、1つ1つ調べなくてはならない」とCosmoComの会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)アリ・ソネシュ氏。同氏はこれら特許の発明者と記載されている。CosmoComは特許を侵害しているベンダーを発見したら、そのベンダーからライセンス契約を取り付けたい考えだが、必要であれば訴訟を起こすつもりもあるとソネシュ氏は話している。

 同社はベンダー各社に同社技術の利用をやめさせるつもりはないという。

 「この業界の発展を妨げる気はない」とソネシュ氏。

 CosmoComがライセンス契約を求める動きに出ても、業界が失速することはなさそうだが、ほかのベンダーが「自分たちはCosmoComの特許を侵害していない」と考えている場合は、法廷闘争に持ち込まれる可能性があるとDMGのフラス氏。「ソフト業界ではこういったことはよくある」

 このような特許行使のリスクは、訴訟のターゲットにされる側の企業だけに降りかかってくるものではないとボストンの法律事務所Testa Hurwitz & Thibeaultの共同経営者スティーブン・フランク氏は指摘する。

 「特許を行使する時は常に、(裁判所で)特許を無効化されるリスクを負う」とフランク氏。しかし、ほかの業界での訴訟が何らかの指標になるとしたら、CosmoComの動きが業界全体を失速させることはないだろう。

 「こうした動きはたいてい業界を抑え付けることにはならない。単に価格の問題だからだ。起こり得るのは、ビジネスコストの上昇だ」(同氏)

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