「BIのROIはファジー」と語るCognosのCEO(1/2 ページ)

Cognosのロブ・アッシュCEOがインタビューに応じ、BIの導入に伴うユーザー側の課題と、新たなユーザー層を前にした自社の課題について説明した。

» 2004年10月25日 12時53分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米カリフォルニア州パームデザートで9月末に開催された「Business Intelligence Perspectives」で、カナダ・オタワ州のビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアベンダー、Cognosのロブ・アッシュCEOは、COMPUTERWORLDのインタビューに応じ、ROI(投資対効果)の測定基準が“ファジー”であるという特性など、BIプロジェクトに関連した課題について語った。

――Cognosの製品ポートフォリオは顧客から大きな支持を得ているとのことですが、逆に、最大の不満は何ですか。

アッシュ 当社の事業は顧客にとってさらに戦略的重要度を高めており、このため法規制遵守のための機能などへの顧客の期待が高まっていることでしょう。Cognosは、このような、より高い期待に応える必要があります。それは、これまで当社が成長のベースとしてきた部門レベルの期待に応えることとは異なります。当社のサービス事業へのアプローチとも関係ある課題で、セールス事業とサービス事業をどうやって、より良く統合させるかにかかわる問題です。

 当社の顧客は現在、自社にとって最も戦略的なサプライヤーとビジネスをするような形で、Cognosとビジネスをすることを望んでいます。それには、当社がもう少し成長することや、ディストリビューション戦略やサービス戦略を進化させることも含まれます。

――アナリストの中には、半分以上のBIプロジェクトが限定的成功、もしくは決定的失敗に終わっていると言う人もいます。どうしてBIの失敗率はこんなに高いのでしょうか。

アッシュ 私はBIの失敗率がそんなに高いとは思いません。(データ)ウェアハウジングの失敗率が高いのだと考えています。企業はいきなり(データ)ウェアハウスを構築しようとして、間違ったアプローチを採っています――BIと分析に適したウェアハウスを構築していないのです。パフォーマンス管理がデータウェアハウスのキラーアプリケーションだということが分かったという顧客の声をよく聞きます。ITインフラではなく、パフォーマンス管理のためのデータウェアハウスとして見れば、データウェアハウスをどのように構築し、それをどう運用するか、どのような特質を持たせるか、などを理解する助けになると思います。

 BIサイドでは、当社の契約更新率は90%近くに達しています。これは、歴史的な高さで、BIプロジェクトの失敗を物語ってはいません。そして、当社はこのようにデータウェアハウス事業の進化を経験していますが、BIはデータウェアハウスとは独立したオペレーションが可能です。投資は少なく、結果はかなり早く出る傾向があることから、小さく始めるケースが多いようです。つまり、失敗したとしても、大きな失敗ではなく小さな失敗で済む傾向があります。

――「結果」の話が出たところで、BIはROIを生むという一般的見方があるようですが、それを具体的な数値に落とせる人は、どこにもいないようです。これについてどう思いますか。

アッシュ 測定基準がファジーだと言っておきましょう。残念ながら、事業運営というのは、何らかのファジーな測定基準を含むものです。それは、直感よりはもう少し確かな感触が得られる物事の積み重ねのようなもの――正しい方向に向かっているという認識を与えるものです。例えば、自動車メーカーがスペア部品の追跡周りでBIを導入し、スペア部品を生産する機械のダウンタイムを1%減らしたとします。これは、150万ドルの設備投資に対し、年間500万ドルあるいは1000万ドルの節約になります。かなり良いROIです。これはファジーでしょうか? 機械のダウンタイム削減には、ほかの要素が貢献した可能性もあるので、ちょっとファジーですね。でも、私に言わせれば、これは概算指標であり、ファジーなROIですが、感触はつかめます。つまり、10なのか8なのかは分からないが5以上であることは確かだ、ということです。

――企業はもっと具体的なROIを要求してきませんか。

アッシュ もちろんです。企業は投資を二つのカテゴリーに大別しています。一方は、転換の可能な投資で、この場合、ROIはよりファジーなものになります。顧客データの一貫性が増すことで、顧客サービスが向上し、見返りが得られるでしょう。もう一方は、ファンダメンタルな投資で、この場合は「確かなROIを示せ」ということで計算を迫られます。これに対応することは、われわれの課題です。Cognosには独自のROI計算方法がありますが、それでも課題は課題です。インフラを購入するのではない、新しいITの購入者、新しいビジネス顧客が出現してきたことの合図だといえます。この人たちは、感触だけでは製品は購入しません。具体的な結果を購入するのです。

――BIツールは、一部の分析家が用いるツールから、企業内の多くのユーザーが使うものになりつつあります。これは良いことでしょうか、悪いことでしょうか。

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