企業内Blogは使い物になるか? 日立BOXERBLOGに見る方向性(2/2 ページ)

» 2004年10月29日 16時38分 公開
[木田佳克,ITmedia]
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小川 開発するよりも市場参入を急いだというのが最大の理由です。また、TypePadのシックス・アパートは、製品への思い入れが強く、そして信頼できるシステムだったということもあります。

 Exciteやライブドアなどのように内製という選択もあったわけですが、Blogシステムそのものを作り込むよりも、リーダーやクローラなどのツールによって補完すればよいという見解です。このため、専業と組んで相互互換した方が得策だと考えました。Blog機能の核となるMT自体も、シックス・アパートが技術的に明るいので問題ありません。

ITmedia G3やVは内製ですか? また内製であれば、そちらと比べてBOXERBLOGはコントロールしづらくなるといった面はないのでしょうか。

小川 それはありますね。例えば、ASPとして見れば、MTはコンシューマを狙っているので温度差はあります。しかしMTはソースが公開されているので多少は手を入れることができるため、現状はそれほど問題になっていません。MTのテンプレート配布ツールといった補完ツールも用意しています。

 企業内で使うのであれば、デザインを重視する必要はありません。それよりも決まった機能(表示)がすべてのユーザー間で統一化されている、という点がとても大きなポイントです。

 また、SNS連携の展開も視野に入れています。SNSで本人を確認し、Blogを見てどのような人かを知り、IMで話して場合によっては会ってみるなどという、この情報連携はビジネスでも同じように当てはめることができるはずです。現在、要件定義を始めているところです。ケータイ用のRSSリーダーにも取り組んでいます。

日立が取り組む真価とは

ITmedia Blog=日立は、これまでのイメージではないという意見がありませんか?

小川 日立にはソフトウェア事業部がありますが、ここでは過去からの資産を引き継ぐ基幹利用に相応しいものといったテーマがあります。しかし、ここBOXERビジネスグループでは、昔からの資産なく取り組んでいけるため、比較的しばりが無いのです。

 そして、サービス開始に至った理由としては、日立のニューバリュービジネスとして、ユビキタスに必要なサービスの一環になり得ると判断されたからです。

 企業によってはミドルウェアにはそれほど投資ができないという要求があります。BOXER VはLinux上でのシステムですが、BOXERBLOGもオープンソース構築をするためには、則したサービスだと考えています。

ITmedia インターネット上のサービスとしても展開可能な内容だと思いますが、日立の基盤戦略以外に企業フォーカスのメリットは何ですか。

小川 進化する過程でインターネット上ではキャパシティの問題に当たることになります。スケーラビリティを重視して、サービスが止まらないこと、安定性を重視するといった方向に行かざるを得ないです。機能性よりも安定性を要求される傾向にあるのです。

 また、サーバ運用にエンジニアの力を割かれるという問題もありますが、コンシューマが欲しい機能と企業が欲しい機能は似て非なるものなので、しっかりと分けて考えなければなりません。ここを抑えなければおかしなプロダクトになってしまう可能性があります。例えば、スキンをたくさん用意しようなどと考える方向性です。効率性によりフォーカスしなければならないということです。

 このためイントラネット利用であれば、比較的使い勝手を追求することができて進化しやすいです。また、日立の利用規模で問題が起きなければ、ほかの企業でも大丈夫だろうという判断材料もあります。

 BOXER Vは、大学にも導入されているのですが、学生が好みによってデザインを変えたいといった意見が寄せられている、と聞きました。しかし、システムサポートを考えればページ上で、その場所に同じ物があるということがとても重要であり、あるべき物がそこにあるという、工業製品の考えが必要です。

ITmedia 日立内で実際に使われていて、どのような反響がありますか。

小川 私の部署ではもちろんですが、ほかでも実験的に使い始めています。かなり見方が変わってきています。社内のイントラネットをBlog化するという動きもあり、社内上のやり取り、クレーム問題の情報蓄積などもBlogに書き込めば再利用に役立ちます。日立の本体で5万人規模なので、立ち上がれば早いと思います。

ITmedia 年代により賛否両論はないのでしょうか。

小川 ありますね。まずは全社員で自由に書かせてよいのか、といった問題や、書き手を選ぶような展開もありますが、進化の過程で普及のスピードが追いつかなくなるとその技術は無くなってしまいます。

 カルチャーを変えるという側面もあるので、トップダウン型を考慮して社長からのコメントがRSSリーダーで読むことができるといった展開が浸透しやすいかもしれません。

 ある意味、日立とBlogという従来であれば結びつかなかった面に意味があるのかなと思っています。SixApartでも当初、日立がBlog? というコメントもありました。

ITmedia スパムコメントについてはどのような意見を持たれていますか。企業内利用では今後問題にならないでしょうか。

小川 コメントを受け付けているというインターネット上の企業Blogサイトは少ないですね。スパムを防ぐという仕組みは、現状では難しいと思います。それに比べ、トラックバックでは比較的好意的なことしか書かれないと感じます。

 それよりも、コメント記入した際に名前のリンクがURL未記入でばEメールアドレスが露出してしまうという点は、既に疑問視されています。あとは、成りすましが簡単にできてしまうため、TypeKeyをどのように普及させなければならないのかという課題もあります。企業内利用であれば、MTのLDAP化などといった方向性に注目したいです。

ITmedia 現状のトラックバックの利用形態は必ずしも容易ではないと思うのですが、企業内利用の観点ではどう展開しますか。

小川 トラックバックの仕組みは分かると簡単ですが、理解には時間が掛かりますね。企業であれば、トラックバック利用には敷居があるため様子を見ています。

 構想ですが企業利用においては、ボタンクリックですぐにトラックバック送信といった仕組みが必要かもしれません。ただし、MTを改変するという展開になるので、まだ具体的ではありません。なるべく社員トレーニングはしない仕組み作りを目指しています。

ITmedia 企業内におけるトラックバック利用のメリットは見えていますか?

小川 トラックバック同士の仕組み自体がよいのではなく、第三者が見ていることに価値がありますね。似ている情報を渡り歩くという興味の連鎖は、企業内情報共有でも有効だと考えています。

ITmedia 最後に……、BOXERのネーミング理由は?

小川 私がボクシング好きなのですが、boxerというスペルは覚えやすく親しみやすいだろうとの理由で名付けました。また、うまくドメイン取得できたことも決め手となりました。

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