RFIDが導く新たな社会を感じ取る(2/2 ページ)

» 2004年11月02日 00時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]
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 今回のORF Activity Scoreで言えば、来場者は、プライベート情報である自分の行動履歴を主催者側に意図的に渡すことで、パブリック領域にプライベートが出現することを許容しなくてはならない。しかし、これは来場者が新しい行動の指針を得るために、意図的にプライベートを出していくというアプローチなのである。それを制御する環境がORF Activity Scoreであると言える。この点で、電車内での携帯電話の利用と同じ論理が生まれるという。

 RFIDの利活用をデザインという視点から研究している同氏にとって、人の知覚の中にあるプライベートとパブリックといった仕切りを、どのように捕らえ、システムとして盛り込んでいくかについて考えることも、実験の目的になるとしている。

プライバシー問題への考え方

 これに関連して、SFC研究所でAuto-IDラボ・ジャパンのリサーチフェローを務める梅嶋真樹氏は、RFIDにおけるプライバシーへの考え方について、「RFIDの話の以前に、人は自分がどのように扱われているかを知りたいという根本的な欲求を持っていることを理解するべき」と話す。そのため、人は、相手が自分に関するどのような情報を持っているかが分からない場合に、不快感を持つという。

「プライバシー問題を怖がる前に、全く新しい方法で人と人が結びつくすばらしさを目で見てほしい」と梅嶋氏。利便性を理解することで、プライバシーへの感じ方が変わってくる可能性があるという。

 「プライバシーへの人の感覚という意味で、データベースに持たれている自分の情報が分からないことは精神的にはギリギリ。さらに、RFIDで遠隔から自分の情報を読み取られるという状況では、沸点を超えてしまう」(梅嶋氏)

 そのため、プライバシーについて、情報を扱う側は、個人のどんな情報を所有しているか、それがどのように扱われるかを厳密に本人が知っているという社会にしなくてはならないという。今回のイベントでも、来場者の情報について主催者側が持つものは、明確に本人に知らせていく考えだ。

 視点を変えると、RFIDの利用が進んだ場合、プライバシーやパブリックの新たな形が生まれる可能性があると言える。

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