いくらなら使えるか、ICタグの値段〜コストの壁と現実的な価格を探る月刊コンピュートピア(2/2 ページ)

» 2004年11月05日 17時30分 公開
[松錘,月刊コンピュートピア]
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 同プロジェクトでは、ISO規格に準拠するUHF帯(900MHz)のICタグを開発ターゲットとする。ICタグの製造技術は、日本が国際競争力を発揮しやすい分野であるだけに、国としても手遅れにならないよう手を打ったということだろう。

 ただ、ライバル関係にある企業がうまく協調し、研究が国のもくろみどおりに進むかどうかはわからない。研究成果である知的財産の分配はどうなるのか。ともすると6億円が露と消える恐れもある。

技術革新で5セントの壁に挑む

 もちろん、企業からも先進的な技術が発表され始めている。たとえば日立製作所は「ミューチップ」と呼ばれる超小型のICタグを開発している。その特徴は、サイズが0.4ミリ角と小さいことに加えて、ICチップ上にアンテナを搭載していること。

 いわゆるアンテナ内蔵型チップであり、一体成形にすることで、外部アンテナのアッセンブリするコストを削減した。製造ラインも変更することなく従来の半導体製造ラインが使えるという。2005年には5円以下で提供されるとの見方もあるが、価格競争が進まなければ高値のままかもしれない。

 一方、米国の超小型ICタグメーカーであるエイリアン・テクノロジーも5セントの価格にチャレンジしている。同社のICチップのサイズは0.18ミリ角と非常に小さい。製造法もユニークだ。ウエハをダイシング(切断)するのではなく、ウエハの裏側からエッチングによって切り離している。

 これによって切断幅が狭くなると共に、チップ形状が相撲の土俵に似た形になる。この形がポイントで、エンボス加工で同じ形状の凹みを多数持つ基板用フィルムを用意して、このフィルムの上に大量のICチップを液体と共に流し込むことで実装する。凹みに入らなかったICチップは回収され、ロスがないという。

 同社によると、数百億個のオーダーなら5セントは実現可能という。ただし、月産数百億個は、米国市場を独占した規模に近い。現状はここまで進んだ。今後、どの企業が5セントの壁を突破できるのか、注目していきたい。

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