動き出した欧州のスーパーコンピュータネットワーク

欧州の8カ所のスーパーコンピューティングセンターが構成するテラスケール分散型システムが始動した。現在は4つのセンターのシステムをつなぎ、22TFLOPS以上の処理能力を実現している。(IDG)

» 2004年11月11日 16時17分 公開
[IDG Japan]
IDG

 欧州の研究者らは今や、新しいスーパーコンピュータネットワークに研究活動の支援を求めることができる。

 「ちょうどテストを完了したところだ」とDistributed European Infrastructure for Supercomputing Applications(DEISA)コンソーシアムに加盟するEdinburgh Parallel Computing Centre(EPCC)のデビッド・ヘンティ氏は語る。「われわれの新しいスーパーコンピュータネットワークは、今ビジネス向けに提供されている」

 5月に立ち上げられたDEISAは、欧州連合(EU)から「6th Framework Program」の下で一部資金提供を受けており、欧州の8カ所の国立スーパーコンピューティングセンターで構成されている。その使命は、広範な科学技術分野における科学的発見の支援だけでなく、欧州のコンピュータ科学、特にグリッド技術の分野を進歩させることを目的としたテラスケール分散型スーパーコンピュータの共同構築・運用だ。

 今の第一段階では、4つのセンターが所有するIBMのスーパーコンピュータを接続している。プロセッサ数は4000個を超え、22TFLOPS以上の処理能力を達成できる。

 来年始まると見られる第二段階では、少なくともさらに2つのセンターが所有するスーパーコンピュータを接続し、処理能力が向上する見込みだ。さらに、DEISAの専用ネットワークの転送速度を現行の1Gbpsから10Gbpsにアップグレードする予定だ。

 DEISAは現在、スペインのバルセロナ科学技術大学にあるスーパーコンピューティングセンターと話し合いをしているところだとヘンティ氏。同大学は近く新しいスーパーコンピュータを導入する予定だ。「スペインのセンターが加われば、われわれのスーパーコンピュータネットワークの能力は大きく高まるだろう」と同氏は語る。

 先週、IBMとスペイン教育科学省は新しいスーパーコンピュータ「MareNostrum」を発表した(11月6日の記事参照)。このシステムは欧州で最も強力であり、世界でも上位10位に入ると両者は主張している。このマシンは2520台のeServer BladeCenter JS20システムをクラスタ化し、Linuxを搭載している。現時点では3564個のPowerPCプロセッサで構成されているが、完成時には4564個のプロセッサを搭載するとIBMは説明している。

 MareNostrumはIBMとスペイン教育科学省により、人体、気象学、環境、工業プロセスの科学・工業研究のために構築されている。このシステムは現在マドリードのIBM技術センターにあるが、年内にバルセロナの「永住の地」に移動する予定だ。

 IBMが実施したベンチマークによると、1万6000個のプロセッサを搭載した同社の新しいBlue Gene/Lは最近、NECの地球シミュレータを追い抜いた(11月9日の記事参照)

 だが当面は、最初に参加した欧州の4つのスーパーコンピューティングセンターは、P690、P690+、P655などBlue Gene/Lよりも性能の低いIBMコンピュータの導入基盤に依存することになる。この4つのセンターは、フランスのInstitut du Developpement et des Ressources en Informatique Scientifique、イタリアのConsorzio Interuniversitario、ドイツのForschungszentrum Julich、Rechenzentrum Garching of the Max Planck Societyだ。

 IBMはDEISAで大きな役割を演じているが、この取り組みには間もなくSGIが参加する。来年、オランダのSARA Computing Network Servicesセンターが、416個のItaniumプロセッサを搭載したSTG Altixを接続する予定になっている。

 この新しいスーパーコンピュータネットワークは、物質科学、宇宙学、プラズマ物理学、工業流体力学、生物学などのライフサイエンスといった重要な科学技術分野に携わる欧州の研究者を対象としている。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ