近距離無線の新規格「ZigBee」の可能性寄稿(3/3 ページ)

» 2004年11月18日 18時29分 公開
[波多野祥二ほか,OTSL]
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 Bluetoothは、携帯電話機やPDAでの利用を想定して設計されたもので、2.4GHz帯を使用し周波数ホッピング形式のスペクトラム拡散方式を使用して通信する。通信範囲は約10m〜100mで、通信レートは1Mbps(実効上の最大は723kbps)である。

 通信モジュールと10mm角以下と小さくすることが可能であることと、消費電力の少なさが魅力となっているが、技術基準適合証明やロゴ認定の取得が必要とされているため導入コスト面で課題があると言われることもある。

 無線LANは、2.4GHz、5GHz帯のスペクトラム拡散(直接拡散、または、周波数ホッピング)、直交周波数分割多重方式を使用して通信する。通信範囲は、約10m〜100mで、通信レートは最大54Mbpsである。

微弱無線

 微弱無線は、無線設備から3mの距離での電界強度(電波の強さ)が図-3に示す条件を満たしているものが相当し、無線遠隔操縦を行うラジコンや、ワイヤレス・マイクなどで使用されている。

微弱無線局の3mの距離における電界強度の許容値

 微弱無線の通信可能距離は見通しで数m〜200m程度、通信速度は数100bps〜10kbps程度と、近距離、低速の用途で使用される。データ転送速度はそれほど高くないが、電池寿命を長くとることができる点、通信方式や使用する周波数などが法律により限定されていない点、無線局としての免許や端末認証を取る必要がない点などを魅力として挙げることができる。これらにより、各社からさまざまなデバイスが販売される結果を生んでいる。

特定小電力無線

 特定小電力無線局(特小無線局)、ラジオマイク、テレメータ・テレコントロール、ミリ波レーダー(車両衝突防止など)など、用途ごとに使用する周波数や電波の使用方法が細かく規定されている。周波数は用途により、下は74MHz帯から上は76.5GHz帯まで幅が広く、使用可能な帯域も異なるため、通信速度は用途により大きく異なる。たとえば、テレメータ・テレコントロールの場合、400MHz帯と1200MHz帯が割り当てられており、連続送信が禁止されている周波数が存在する(5秒送信したら2秒休止など)。また、転送レートは、4kbps、8kbps程度である。

前編の終わりに

 今回は近距離無線技術の概要について紹介してきた。近距離無線技術は当然伝送路の役割を果しており、そういった観点からは、通信距離と通信速度、周波数帯などの差が注目されるのが当然だと言える。

 しかし、近距離無線技術がどのような場面で使われるのかまで視点を広げると、消費電力と電力供給という制約条件が大きくクローズアップされてくる。さらに、各無線ノードがどのような振る舞いを示すべきか? といったよりアプリケーション寄りの観点からは、サポートされるネットワーク・トポロジの差がアプリケーションのアーキテクチャを左右しそうだということも見えてくる。

 後編では、ZigBeeを中心に、アプリケーション・イメージを構築し、ネットワーク・トポロジ、個体情報、位置情報などの機能について紹介したい。


著者紹介:OTSL代表取締役社長 波多野祥二、水越剛成、水野将樹、水口敏春。OTSLは2003年4月に設立。近距離無線と組込みソフトウェアなどの企画、開発、販売、コンサルティング、教育サービスを提供する。オブジェクト指向技術、分散処理系および組込み系システムの開発経験者が多く在籍している。ZigBee Alliance、JASPARのメンバー。ZigBeeのソフトウェア・スタック(Z-stack)を販売。



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