ユビキタスID vs EPCグローバル月刊コンピュートピア(4/4 ページ)

» 2004年11月24日 10時57分 公開
[岡崎勝巳,月刊コンピュートピア]
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 全国展開をしている小売店で商品管理にICタグを利用する場合、たとえば関東や東北などエリアごとに在庫を把握するには、本社に蓄積されている在庫データを改めてエリアごとに分類し直す必要がある。

 しかし、エリアごとにSavantを置いておけば、そのSavantに問い合わせるだけで情報を入手できるというメリットがある。これは、SCMの実現という目標に沿った機能とも言える。また、タグに書き込む情報にも違いがある。EPCグローバルではタグにID情報を記録しておくだけなのに対し、ユビキタスIDセンターでは付加情報も記録できるようにしてある。後者であれば、ネットワークがダウンしている状態でも最低限の情報を入手できるというメリットがある。ただし、タグのコストは前者の方が安価であることは言うまでもない。

米国とは違う日本の流通

 ともあれ標準化は着々と進められており、ICタグの採用機運は盛り上がりつつある。特に米国では商品の流通過程で紛失や盗難が日本よりもはるかに高い割合で発生していることから、EPCグローバルのフレームワークは好意的に企業に受け入れられているようだ。ジレットやP&G、ウォルマートなど世界各国に拠点を構え、商品を流通させている企業がEPCグローバルに参加していることからも、各社がICタグに寄せる期待が見て取れる。とはいえ、米国の状況を日本にそのままあてはめることは現実的には困難だろう。日本では米国より流通過程の欠品率が低いため、システムの導入効果は米国のようには上がりにくいのが実情だ。

 さらに、個人情報の保護の点で問題も残る。ユビキタスIDセンターではCPUを搭載した高機能なICタグの利用も想定されており、その場合には暗号化などの対策が立てられるのに対し、EPCグローバルではICタグの価格を抑えるため、そのような高機能なICタグの利用は想定されていない。果たして消費者はこの事実をどう受け止めるだろうか。

 加えてEPCグローバルのフレームワークは米国で、米国向けに作られたものであり、これを単純に日本で使おうというのは乱暴な話でもある。そもそも電波は国ごとに利用する周波数帯が決められており、その使われ方も異なっている。EPCグローバルではUHF帯(915Mhz帯)を使ってICタグとの通信を行うことを推しているが、国内では今のところUHF帯の利用は認められていない。その点、ユビキタスIDセンターはユビキタスコンピューティングの実現の一環としてICタグの利用を想定している。そして、その仕組みはJISやJANなど既存の多様なコード体系を受け入れられ、利用する周波数帯でもフレキシビリティを備えている。このことを考えると、ユビキタスIDセンターの標準の方が、国内で受け入れられやすいと言えるのではないだろうか。

 もっとも、ユビキタスIDセンター、EPCグローバルともシステムが目指す方向性はそれぞれ異なり、規格の棲み分けが進むことも予想される。果たして、近い将来ICタグはどのように利用されているのだろうか。

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