パートナー企業とのデリケートなバランスを取るARMの戦略Interview(2/2 ページ)

» 2004年11月25日 15時30分 公開
[IDG Japan]
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サクスビー卿 パートナーシップというものは、パートナーをちょっと動揺させるくらいでないと、おそらく何もできません。ARM創業当時、パートナーの多くは独自のツールを使っていましたが、それらはすべて異なり、互換性がなかったので、当社がもっといいツールの提供を申し出ました。今では当社のパートナーは皆、当社のツールを支持しています。その理由は、当社では、新しいアーキテクチャやモデルを発表するとき、ツールもすぐに使えるよう用意してあるからです。

―― OptimoDEは、DSPと非常によく似た特徴を備えています。TIが気を悪くするとは思いませんか。そういえば、TIはまだOptimoDE技術のライセンスを受けていませんね。

サクスビー卿 ロードマップと選択肢を提供していれば、パートナーはそのうち当社のやっていることを認めてくれるものと信じています。なぜなら、その方が彼らもコストを削減できるし、より早く製品を市場投入できるからです。これが当社の基本的な戦略とロードマップです。どんなパートナーとも、正面からぶつかるのは馬鹿げています。またパートナーにとっては、プロセッサの設計費用が課題となっています。0.35マイクロメートルから90ナノメートルへの移行によって、プロセッサ設計にかかる費用は50万ドルから2400万ドルに跳ね上がります。当社はARM技術のライセンス供与によってパートナーに、金額に比して高い価値を効果的に提供しており、パートナーのコスト削減に貢献しています。

 創業当時、パートナーはそれぞれ独自のマイクロプロセッサを使っていました。今では、当社のパートナーは134社ですが、Intelでさえ、ARMの技術を採用しています。IntelはそれをXScaleと呼んでいますが、これは、少々違うルックスを持たせた方がマーケティング上、都合がいいからです。しかしIntelは、ARM技術のライセンスを受けることで、より高い投資効果を上げています。設計の費用は私たちが負担しているのですから。当社からライセンスを受けた技術が機能しない場合、ライセンス料の支払いは不要です。パートナーがすべての設計を社内で行った場合、開発チームの残業代も予算オーバーも、すべて負担しなければなりません。

―― IntelはXScaleではARMの名称を使っていないほか、新しい命令を追加しています。こういう関係は、ARMにとって不都合はないのですか。

サクスビー卿 Intelとは素晴らしい関係を築いています。当社はかつてDigital Equipment Corp.(DEC)と共同でStrongARMという製品を作り、その後、IntelがDEC(の半導体部門)を買収しました。ご存じのように、Intelはブランドを非常に重視する会社ですから、自社ブランドを推進するため、次世代のStrongARMをXScaleと呼ぶことに決めたのです。パートナーはそれぞれに独自の名称を付けていますよ。TIはOMAPと呼んでいます。たまたまIntelが、ほかのパートナーよりブランディングに多額を投じているということでしょう。しかし実際には、IntelのXScaleはほかのすべてのARMアーキテクチャと完全互換です。Intelは一部特殊な命令を追加していますが、システムチップを見れば、TIのチップにも、特殊なDSP命令が載っています。つまり、何も変わりはありません。ARMのパートナー全員が、収益拡大のために、それぞれ多少の差別化を図れるようでなければなりません。

―― ARMのライバルはどこから現れると思いますか。

サクスビー卿 ライバルはパートナーの中にいます。基本的にパートナーは全社、独自のマイクロプロセッサを設計しています。必ずしも、当社に設計を発注する必要はないのです。彼らが当社に発注しないとすれば、当社が優れているからです。発注するとすれば、当社提供のソリューションを使った方が内製するより費用効率が高いからです。パートナーには、作るか買うかの決断が常に付きまといます。当社にはまた、MIPS(Technologies)のように、直接競合するライバルもいます。



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