SunのNAS強化戦略が明らかに

Sunは、ユーティリティコンピューティングおよび「Zettabyte File System(ZFS)」のサポートにより、NAS製品群を強化する方針だ。

» 2004年12月13日 18時09分 公開
[IDG Japan]
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 Sun Microsystemsのネットワークストレージ部門の幹部によると、同社はNAS(Network Attached Storage)製品ラインの強化に向け、ユーティリティコンピューティングおよび自社の新しい「Zettabyte File System(ZFS)」をサポートする計画だ。

 カリフォルニア州サンタクララに本社を置くSunのネットワークストレージ部門のバリント・フライシャー副社長兼CTO(最高技術責任者)によると、同社の新しいNAS製品群には、「Honeycomb」と呼ばれる新しいディープアーカイビング技術が組み込まれる可能性もあるという。これは同社のラボで開発された技術で、WORM(追記型)ストレージへの対応改善などが売り物。

 だがフライシャー氏は、SunのNAS製品に新機能が搭載される時期については言及せず、1年以上のスパンで段階的に新機能を組み込む予定だと述べるにとどまった。

 高い拡張性を備えたファイルシステムであるZFSは、今年発表されたSunの「Solaris 10」OSでデビューした。「今日、顧客は膨大な数のファイル、膨大な数のオブジェクトを保存することが要求されるアプリケーションを使っており、ZFSはこの問題の解決に役立つだろう」とフライシャー氏は語る。例えば、NASでロケーション管理やネーミング機能を提供するコアエンジンとしてZFSを利用できるかもしれないという。

 Sunは9月に、「StorEdge 5210」でNASアプライアンス市場に参入。12月には、第2弾のNASアプライアンス「StorEdge 5310」を発表した。

 Sunは、NASで用いられている主要なファイルシステムであるNFS(Network File System)の生みの親だが、NFSはNAS専用ではないシステムに採用された。フライシャー氏によると、実際、多くの顧客がSunのサーバをNASサーバあるいはNFSサーバとして利用しているという。

 「しかしこれらの製品はNASアプライアンスとして設計されたものではなく、NFSサーバとNASアプライアンスの間には大きな違いが存在する」とフライシャー氏は話す。

 「われわれもこの点を少し誤解していた。NASアプライアンスを開発することがビジネスの拡大につながるとは考えていなかった」(同氏)

 フライシャー氏によると、NASは本格的なトランザクション処理環境には向いていないという。SAN(Storage Area Network)ほどのパフォーマンス、信頼性、データ整合機能を備えていないからだ。「SAN製品は仮想化技術を搭載しているため、拡張性の面でもNASより優れている」と同氏は付け加える。

 NASアプライアンス市場への理解を深めたSunは、「当社のOSおよびマルチスレッドCPU技術を投入することによってNAS製品のパフォーマンスを強化する計画だ」とフライシャー氏。同社の現行のNAS製品はIntelのXeonプロセッサを使用している。

 ミッドレンジ分野からNAS市場に参入したSunは、「NAS製品ラインの幅を広げ、ハイエンド分野ではスケーラブルな高性能アプライアンス、ローエンドでは低価格のエントリーレベルの製品を投入する予定だ」とフライシャー氏は付け加える。

 Sunは9月、自社のストレージ製品の一部で従量課金方式のユーティリティコンピューティングサービスの提供を開始した。

 「顧客は、単なる容量ではなく、管理された容量にお金を払っているのだ。これには、ストレージ時管理、バックアップ、リストアといった機能が含まれる」とフライシャー氏は話す。さらに同氏によると、Sunは自社の仮想化/プロビジョニング技術である「N1」の開発を通じて、顧客が求めているのは単なるキャパシティ・オンデマンドではなく、サービスとサポートを含めた総合的なパッケージだということを認識したという。

 Sunは、従量課金式サービスを「StorEdge 9980」および「StorEdge 6920」(いずれもSANストレージ製品)のみに提供している。これは、両製品がユーティリティコンピューティングに適したパーティショニング技術を備えているからだ。

 フライシャー氏によると、ハイエンド製品の「StorEdge 9990」もパーティショニング可能なストレージシステムを備えており、Sunは同製品でもユーティリティコンピューティング技術を提供する予定だ。

 さらに同社では、開発中のNAS製品の一部にも、ユーティリティコンピューティング市場に製品を売り込む上で必要となるパーティショニング機能を組み込んでいる。フライシャー氏によると、LinuxとXFS(オープンソースのジャーナリングファイルシステム)をベースとしたNAS製品や、Microsoftの「Windows Storage Server」の普及に伴い、NAS市場のコモディティ化が進んでいるという。「Sunはこのコモディティ市場をリードすべく、顧客が求める機能セットを定義し、これらの機能を早急に次期製品に追加する方針だ」と同氏。

 「SunがNAS製品で組み込みLinuxの採用を考えていないのは、コモディティ化という脅威が存在するからだ。「Linuxをストレージに組み込む価値は感じられない」とフライシャー氏は話す。

 「Linuxのもう1つの問題は、ストレージシステムに多くの付加価値を盛り込む場合、カーネルレベルの修正内容をオープンソースソースとして公開しなければならないということだ。そうすれば差別化要素がすべて失われてしまう」(同氏)

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