「ライバルの存在を歓迎し、No.1ベンダーを目指す」――CiscoのチェンバースCEOInterview

Cisco Systems CEOのジョン・チェンバース氏が、全世界から集まったプレスの質問に答えてより詳細な戦略を披露した。

» 2004年12月14日 21時20分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]

 過去10年の間、Cisco Systemsは買収と提携を繰り返し、現在では他の追随を許さないほどのネットワーク業界ナンバーワン企業となった。

 実際、同社が12月6日〜8日の3日間にわたって開催したアナリスト向け年次カンファレンス「Worldwide Analyst Conference 2004」では、ストレージ以外のすべての関連分野で同社がNo.1のシェアを持っていることを示すスライドを提示。さらに、今後5年間の成長予測を初めて一般に公開するなど、その地位に絶対の自信を持っているようにうかがえる。

 カンファレンスでは、全世界から集まった報道関係者と同社CEOのジョン・チェンバース氏とのインタビューも行われ、Ciscoが今後数年間にわたりどのような戦略を展開するのかが語られた。

チェンバース氏 米Cisco Systems社長兼CEOのジョン・チェンバース氏。印象深いのは、プレゼンテーションの最中にカンニングペーパーをいっさい見ず、相手の目を見て対話するように語りかけるそのスタイルだ。どんな質問が来てもその内容を先読みし、きちんと数字を交えて答えてくる。米国IT企業のトップでも数少ないタイプだといえるだろう

―― Ciscoの業績拡大の鍵をどのように考えていますか?

チェンバース 現状のビジネスに加え、今後はSMB(Small-Midium Business:中小企業)向けやコンシューマ向けにビジネスを拡大するほか、地域戦略に注目しています。特にアジア、その中でも日本は重要な市場だと考えています。ブロードバンドに関して、かつて7位だった国が、今ではナンバーワンです。こうした変化をとらえつつ、次の10年間で鍵となる業界や地域がどこにあるかを見極めていきます。

―― Ciscoの戦略上の強みはどこにあるのでしょうか?

チェンバース われわれは、買収とパートナーシップ構築手法において、業界内でだれよりも秀でていることで知られています。かつては内製中心だったものが買収戦略を取り入れ、いまではパートナーシップ構築まで戦略の幅を広げています。変化への迅速な対応と関係強化が、その企業の強さとなるのです。

―― Juniperらライバルとの競合についてどう考えますか?

チェンバース 現在Ciscoでは主要10製品のラインナップを揃えていますが、それぞれが洗練されており、Juniperに充分対抗できるものだと考えています。さらにCRS-1の性能は、ライバルのそれよりも秀でたものとなっています。われわれは、よきライバルの存在を歓迎します。なぜなら、競争が起こることで製品がより魅力的になり、業界自体の活性化につながるからです。

―― 今回のカンファレンスで5年先までのビジョンを発表されましたが、短期的に、具体的には2005年はどのような分野を重点項目と考えているでしょうか?

チェンバース もし計画通りに事が運ぶなら、ビルディングブロックの構築、ディストリビューション・チャネルの整備、SMBやコンシューマ市場へのてこ入れ、そして国内外のサービスプロバイダ戦略の強化を実現したいと考えています。今後3〜5年のスパンでみれば、企業や政府関連の生産性アップ実現が業界発展の鍵となります。また、生活の水準を向上させるアプリケーション群が、ネットワーク業界の成長につながるでしょう。

―― 基調講演では、ストレージ以外の分野はすべてナンバーワンだと述べていましたが、この分野で成功する作戦は? 例えばライバル企業(マクデータ、ブロケード)を買収するなどの方法があると思いますが。

チェンバース ストレージ分野については、取り組み始めてから約1年半とまだ参入したばかりにもかかわらず、すでに市場3位のシェアを持っています。かつてセキュリティの分野に参入したばかりのころはナンバーワンからは遠い位置にいましたし、(ストレージについても)現状の伸びが続くのなら、充分に追いつくことは可能だと考えています。そしてこの分野で重要なのがパートナーとの関係です。EMCやIBMなど、関連企業との関係強化をさらに進めていきます。

―― 中国市場をどう考えるでしょうか? 現地には多くのライバルが存在します。

チェンバース ロシア、中東、アジアは今後の重点戦略地域です。特に中国は全世界でも最大の人口を持つ国家の1つであり、市場として非常に大きい存在です。また大学からは毎年多くの優秀なエンジニアが誕生しており、人材の宝庫でもあります。CiscoではNetwork Academyによる教育プログラムを提供しており、それら人材の教育や活用に努めています。実際、Linksysの製品の一部は中国で生産されており、Cisco自身の工場も現地に多数あります。市場戦略としては、政府関連機関との密接な関係を築くことで製品の展開を行っており、一般に危惧されるよりも楽観的に考えています。



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