Qtとは――第1回 フレームバッファでQtアプリ(その1)UNIX USER1月号「デスクトップで動かす・学ぶQt/Embedded」より転載(3/3 ページ)

» 2004年12月15日 20時00分 公開
[杉田研治,UNIX USER]
前のページへ 1|2|3       
ライセンス

 Qtのライセンスは開発者ライセンスです。開発者ごとに商用ライセンスが必要で、使用するプラットフォームに応じてDuo、Trio、Quadといった種類があります。また、機能的にProfessional版とEnterprise版があり、表6が機能の相違を一覧にしたものです。

表6 Professional版とEnterprise版の相違
相違点 モジュール 内容
ProfessionalとEnterprise共通 Qt基本モジュール プラットフォームに共通な基本機能
Qt Designer ウィジェットデザインのためのGUIツール
アイコンビューモジュール アイコン表示
ワークスペースモジュール マルチドキュメントインターフェイスのサポート
Netscapeプラグイン拡張 Netscapeブラウザのプラグイン作成
Enterpriseのみで、ソースコードに包含 OpenGL 3D
グラフィックモジュール
OpenGLラッパー。Qt/Embeddedでは未サポート
データベースモジュール 各種RDBへの独立インターフェイス
ネットワークモジュール ソケットまたはサービスプロトコルレベルでのネットワーク機能
キャンバスモジュール アンチエイリアス、画像移動、コリジョンディテクションなどをサポートする2Dグラフィック機能
テーブルモジュール テーブル機能
XMLモジュール SAX2、DOMレベル2のXMLパーサー
ActiveQt拡張 Windowsのみ。ActiveXサポート
Motif拡張 X11のみ。MotifからQtへの移行をサポート
Enterpriseのみで、別途ダウンロード Qtソリューション MFCからQtへの移行フレームワーク、オブジェクトインスペクタ、翻訳プレビュー、CORBAフレームワーク、ICOイメージ、JPEG 2000イメージ、libxml2リーダー、ファイルロック、リードライトミューテックス、共有メモリ、単一アプリケーション起動、Undo/Redoフレームワーク、パイメニュー、サムホイールなど

 Qt/Embeddedは、次のような理由からEnterprise版のDuoが最小限の組み合わせとなります。

  • 実装にネットワーク機能を使用していること
  • クロス開発環境では、Qtが持っている開発用のuic*などのコマンドラインツールや、Qt DesignerなどのGUIツールを使用すること

 また、デスクトップ版では、開発者ライセンスのみで開発をし、できたアプリケーションをロイヤリティなしで販売できますが、Qt/Embeddedではデバイス数に応じたロイヤリティが必要となります。

 Qt/Windows以外のプラットフォーム*については、ソースコードの公開と無償で配布することを前提にしたオープンソースのライセンスがあります。ソースコードは、ライセンスの記載以外商用版とまったく同じです。商用版ではサポートが受けられますが、オープンソース版にはサポートはありません。

 なお、オープンソース版では、プロプライエタリなコードを併用していると、そのコードを公開しなければならない場合があるので注意が必要です。オープンソース版と商用版の併用はできず、商用には開発の最初から商用版を使用する必要があります。

 このほかに、前述のすべてのQtについて、評価版ライセンスがあります。公的教育機関向けに、教育目的のための無償の教育用ライセンスがあり、公的研究機関向けには、非商用目的でのアカデミックライセンスのディスカウントがあります。

 ライセンスについて*は、次のURLからたどれるLicensingとPricingのページに詳しく書かれています。

http://www.trolltech.com/products/qt/index.html


 「第1回 フレームバッファでQtアプリ」の内容は3回に分けて掲載予定です。次回の掲載は12月17日を予定しています。ご期待ください。

このページで出てきた専門用語
uic
ユーザーインターフェイスコンパイラの略称で、Qt Designerで作成したファイル(.uiファイル)をC++コンパイラが解釈可能な形式に変換できる。

Qt/Windows以外のプラットフォーム
Windows版のオープンソースライセンスがない理由として、財務上や販売上の理由もあるが、WindowsはクローズソースなOSであり、フリーソフトウェア開発のコミュニティを欠いているからだと述べられている。

ライセンスについて
http://dot.kde.org/1081772638/


UNIX USER 1月号表紙 最新号:UNIX USER 1月号の内容

第1特集
Firefoxの飼い方

第2特集
どれを選ぶ? ウイルス対策製品

[特別企画]
・ついに登場! Fedora Core 3
・最新版FreeBSD 5.3-RELEASEの活用術


前のページへ 1|2|3       

Copyright(c)2010 SOFTBANK Creative Inc. All rights reserved.

注目のテーマ