PeopleSoftから見た買収劇とOracleの今後の展開(1/2 ページ)

日本ピープルソフト社員は一連の動きをどう受け止めたか。また、SAPの藤井清孝社長のコメントも併せ、今後のOracleの動きを展望する

» 2004年12月20日 12時41分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 先週は、米OracleによるPeopleSoft買収のニュースが13日に流れ、1年半にわたった騒動に一応の幕が引かれた。同社の社員は一連の動きをどう受け止めたのか。また、Oracleとの一騎打ちの様相も呈してきたライバル、SAPの藤井清孝社長のコメントも併せ、今後を展望する。

 17日に発表されたSymantecとVeritasの統合や、遡れば2年前のHewlett-PackardによるCompaq買収のように、突然発表されたわけではなかったこともあり、日本ピープルソフトの関係者によれば、13日に買収が発表された際の社員の反応はいたって冷静だったという。元CEOのクレイグ・コンウェイ氏や、製品担当の要であったラム・グプタ氏が相次いで辞任したことからも、日本ピープルソフトの社員に覚悟はできていた。

 ただし、社員の立場からすると、「PeopleSoftのユーザー企業は、製品を本当に気に入って導入していることが多いため、買収後に悪影響がでないか」が気になるという。トヨタ自動車やNTTなど、日本を代表する企業もPeopleSoftを利用しており、社員でなくても今後の動きは気がかりだ。

 PeopleSoftの匿名の関係者は、「OracleはPeopleSoftの製品を取り入れて再統合するべき。たとえば、サプライチェーンマネジメントの需給調整の部分などは明らかにPeopleSoftの製品が優れている」と話す。確かに、データベースにおいては絶対的な評価をするユーザーがあるのと比較すると、OracleのERP製品へのユーザー企業の声は、必ずしもポジティブなものが多いわけではない。

SAPは「少なくとも短期的にはプラス」

 一方、今後はOracleとの一騎打ちが予想されるSAPの日本法人、SAPジャパンの藤井清孝社長は、「今回、PeopleSoftは抵抗しながらも結果的には買収されてしまった。いくら買収される側が抵抗しても、資本力に勝る企業が株を買い上げてしまえばあっさりと成立するという状況は、米国の資本主義では当然の感覚」と一連の買収劇についてコメント。そのため、米国企業の経営者は、自社の株価の下落には、日本企業の経営者以上にナーバスだという。

 同氏は今回の買収がSAPジャパンに与える影響について、「少なくとも短期的にはSAPにとってプラス」と応じた。

 「ERP製品として、Oracleは、Oracle E-Business Suite、PeopleSoft、(旧)J.D.Edwardsという根を異にする3製品を持つことになる。この状況だけでも、導入企業の混乱を招く。安心できる選択肢としてSAPの価値が高まる」(同氏)

 ラリー・エリソンCEOは、PeopleSoftとJ.D.Edwardsの新製品リリースを含め、サポートを10年継続するとしている。同氏の主な狙いはPeopleSoftの顧客ベースだ。毎年ソフトウェアライセンスの20%程度発生すると言われるメンテナンス費用だけでも、かなりの収益を見込むことができると言われる。

 つまり、当分の間、PeopleSoftユーザーからはメンテナンス費用だけを受け取り、次のリプレースのときにOracle“本流”製品に載せ代えてもらえばいいという考え方とも言える。これは、Oracleにとっては非常に合理的なビジネスのように思える。

 だが、ビジネスモデルの話ではなく、製品に焦点を当てると、話はそこまで簡単ではない。最大の懸念事項は、「製品としてSAPに勝てるのか」という問題だ。

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