SME市場でISVパートナーの「ハブ」となる日本オラクル(1/2 ページ)

日本オラクルが中堅・中小企業市場への足場固めを進めている。これまでのパートナーとの関係も見直し、自らは「ハブ」として機能することでWin-Winの関係を構築しようとしている。2004年12月に行われた「ISVフォーラム」の様子と合わせて日本オラクルのSME戦略を見ていこう。

» 2004年12月31日 02時51分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本の中堅・中小企業は今、インフラとしてのブロードバンドの浸透、効率化の波など環境の変化に伴い、ITなしでの経営は考えにくい状況になりつつある。しかし、SMEでターゲットとなる顧客の多くは、自身が変化するためにITをどう活用すればよいのか、また、そもそも誰に相談すべきか、といった点が障害となり、挫折してしまうケースも多い。

 そうした中堅中小規模のビジネス、3文字英語でいうSME(Small and Medium Enterprises)もまた、新たな局面を迎えている。

 そうした中、日本オラクルは、システム提供側であるパートナー企業への支援を大幅に強化しつつ、直接SMEに対してもさまざまな支援施策を展開している。

いまだ残る「高い、難しい」という誤解

 オラクル製品というと、多くの人の頭に漠然と浮かぶのが、「高い、難しい」という印象ではないだろうか。時代の流れとともに、企業におけるデータベース利用のすそ野が広がってきた現在、売上額で3000億円以上の企業約400社については、9割程度のカバレッジを持つ日本オラクルも、300億円以上3000億円未満の層(約3000社)になると5割程度に、さらに300億円未満になるとそのカバレッジは1割以下という現実がある。300億円未満の層で大勢なデータベース製品はMicrosoft SQL Serverなどで、この層においては日本オラクルの認知度は低く、冒頭のような評価がむしろ「定説」のように思われている感もある。

 一般的に、市場のすそ野が広がり下に行くほど案件自体の単価は下がる。しかし、このことは案件が簡単であることと同義ではない。これまで単価が高い大企業の案件を中心に扱ってきた日本オラクルの営業の立場からすると、モチベーションを維持することも容易ではないだろう。しかし、それでもSMEに目を向けなければならない理由は、マーケットシェアという観点からすると、上記のカバレッジが示すようにあまりにもはっきりと色分けされていることは望ましくないからである。そうした色分けが前述の「高い」という漠然としたイメージなどにつながっているともいえる。つまり、SMEにおいては収益でのシェアではなく、まずマーケットシェアが今の日本オラクルには求められている。それに向けて事業体制、組織体制を大きく見直した」と話すのは、日本オラクルの「Mr.SME」こと、執行役員クロスインダストリー統括本部長の三澤智光氏。同氏は続けて、「高い、難しい、しかし早いという印象のオラクル製品を、安く、簡単で、速度は変わらずというメッセージを販売戦略、製品戦略の両面からきちんとSMEにアピールしていく必要がある」とSMEに対する熱意を見せる。

 三澤氏、そして日本オラクルがSMEでマーケットシェアを得るために重要な役割を担うと考えているのがISVパートナーである。しかし、これまでのパートナー戦略は必ずしもISVパートナーにとって十分に満足できるものではなかったようだ。

日本オラクルのSME戦略を担う「Mr.SME」三澤智光氏

ISVパートナーとの関係改善に向けて

 オラクルのISVに対する取り組み自体は、かなり以前から行われていた。例えば、オラクルのパートナー(Oracle PartnerNetwork)企業が持つオラクル製品をベースとしたパッケージやソリューションについて、オラクルがマーケティングのサポートを行う「On Oracle」というプログラムは1996年には存在していた。

 しかし、当時のオラクルは急成長している時期で、注目するISVも多かったことから、「On Oracle」というロゴを作り、あとは「この指止まれ」とするだけでISVが集まった感もある。実際、On Oracleに関しては、オラクル製品をベースとしたISVパッケージ検索Webサイトとしての役割以上のものはないように見える。

 「本来目指すべき技術支援や販売機会の創出という点では手落ちがあった」と話すのは、日本オラクルでクロスインダストリー統括本部営業推進部のディレクターを務める遠藤哲氏だ。

遠藤氏 「ISVもアフターケアが楽にできる商材を求めている」と話す遠藤氏

 そもそもSMEでISVパートナーがこれまで以上に重要となるのはなぜか? 先の例で300億円未満の市場というのは、潜在顧客が20万社に及ぼうかという数である。そんな多数の顧客に対して、それらのユーザーが持っているオラクル製品に対する誤解を解いてまわるような営業活動を行っていくのは現実的には難しいものがある。

 日本オラクルでは「Oracle Direct」という営業ユニットが存在している。同組織は100人を超える比較的大きな規模でテレセールスを行っているが、そうしたリソースをフル活用してもカバーしきるのは難しい。そのために重要となってくるのがパートナーである。

 SMEの顧客は、スクラッチからシステムを構築するよりも、パッケージをカスタマイズして使うことが多い。そのため、そうしたパッケージを提供しているISVパートナーを支援し、間接的ではあるが、結果的にオラクル製品を購入してもらう方向に進めることが重要となるのだ。

 また、製品戦略に関しても、従来の1CPUで98万円という価格体系はSMEではかなり高い。これでは、ISVパートナーのパッケージ価格よりオラクル製品のほうが高い、あるいは、3分の2近くをオラクル製品のライセンス価格が占める、といった状況を発生させてしまう。そうなってはISVパートナーとしても、市場競争力の観点から極めてオラクル製品を担ぎにくい。

 そこで投入されたのが、Oracle 10g SE One(Oracle 10g Standard Edition One)のような、最小構成で10万円を切る製品だ。また、ISVパートナー向けには「ASFU」(Application Specific Full Use)と「Embedded」といったフルユースの契約と比べて有利な仕切りとなる契約形態も用意され、販売支援の体制が取られている。とはいえ、これらの契約形態についてはまだまだISVパートナーの認知度も十分ではないようで、後述するISVフォーラムでも契約形態についての説明が行われていた。

 これらの契約形態をうまく利用することで、ISVパートナーはオラクル製品を担ぎつつ、市場競争力を持つ商材を手にでき、日本オラクルはSMEにおいて認知を広げることができる。

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