NetSuite、Salesforce.comに価格戦争

NetSuiteは、アグレッシブな値引き攻勢を開始した。同社の最大のライバルであるSalesforce.comから市場シェアを奪う狙いだ。

» 2005年01月20日 18時05分 公開
[IDG Japan]
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 ホスティング型ビジネスアプリケーションプロバイダーのNetSuiteは、アグレッシブな値引き攻勢を開始した。同社の最大のライバルであるSalesforce.comから市場シェアを奪うのが狙いだ。NetSuiteでは向こう2カ月間、Salesforce.comのCRM(カスタマーリレーションシップ管理)アプリケーションよりも50%安い利用料金を提供する。

 カリフォルニア州サンマテオに本社を置くNetSuiteは、CRM/会計/電子商取引ソフトウェアを利用する顧客を約7000社抱えており、ホスティング型CRM市場をリードするSalesforce.comを顧客数と知名度の両面で追いかけている。Salesforce.comのサービスには、1万3300社の企業、21万4000人のエンドユーザーが会員登録している。

 NetSuiteの値引きキャンペーンについて、Yankee Groupのアナリスト、シェリル・キングストン氏は、「彼らは知名度の向上を狙っている。Salesforce.comのブランドは広く認知されているが、NetSuiteはそうではない」と話す。

 NetSuiteの割引価格は、3月31日までに同社と契約した顧客に適用される。Salesforce.comのプロフェッショナル版(1ユーザーに付き月額65ドル)あるいはエンタープライズ版(1ユーザーに付き月額125ドル)を検討しているユーザーは、Salesforce.comの見積価格をNetSuiteに提示すれば、NetSuiteの「NetCRM」をSalesforce.comの見積価格の半額で利用することができる。現在のSalesforce.comの顧客に対しては、NetSuiteはSalesforce.comの更新料金の半額という価格を適用するとともに、データ移行サービスを無料で提供する。

 Salesforce.comのマーク・ベニーオフCEOは、この値引きは「自暴自棄的な行為に過ぎない」と一蹴し、「当社のユーザーベースの方が遥かに大きい」と余裕を見せている。

 キングストン氏によると、今回の値引きキャンペーンが今後数カ月間、両社のビジネスにどのように影響するか興味深いという。特にNetSuiteが狙いを定めている小規模企業は価格に敏感だ。しかし「どれが自社のビジネスニーズに適しているかということよりも、主として価格でソフトウェアを選択するのは間違いだ」とキングストン氏は指摘する。「アグレッシブな価格設定が、草創期の段階にあるASP(アプリケーションサービスプロバイダー)市場に与える影響も懸念される」と同氏は話す。

 「一部のベンダーが生き残れなくなるような価格戦争だけは避けてもらいたい」(キングストン氏)

 NetSuiteは、ASP市場の先頭に躍り出ることを今年の目標として掲げている。この地位をめぐって同社は、Salesforce.comだけでなくSiebel Systemsとも競争している。Siebelは、自社の会員制サービス「CRM OnDemand」の販促を本格的に進めている。Siebelでは、1年前に立ち上げた同サービスのユーザーベースを明らかにしていないが、同社広報担当によると、第1四半期の収支報告の際にその数字を公表する予定だとしている。

 NetSuiteのザック・ネルソンCEOによると、同社は今年、スタッフの数を300人に倍増する予定であり、2005年末ないし2006年初頭の株式公開(IPO)を目指しているという。Salesforce.comは昨年、株式を公開して大成功を収めた。このIPOで同社は1億1000万ドルの資金を調達し、同社の時価総額10億ドルを超えた。CRMと顧客サービス分野を手がけるASPであるRightNow Technologiesも昨年、IPOを果たした。

 NetSuiteがASP分野のほかのベンダーと異なるのは、同社が広範なアプリケーションスイートを持っていることだ。Salesforce.comなどのベンダーが販売管理ツールにフォーカスしているのに対し、NetSuiteは会計処理、電子商取引、在庫管理、サプライヤー管理、出荷管理などの機能も提供している。

 ニュージャージー州フレンチタウンにあるMy Flat in Londonは、NetSuiteの顧客の1社だ。デザイナーハンドバッグを手がけるMy Flatのトッド・ヘッドリック社長によると、NetSuiteを選んだのは、同社が提供する広範なERP(Enterprise Resource Planning)ツールが必要だったからだという。

 創業2年のMy Flatの現在の年商は300万ドルを超える。ヘッドリック氏によると、事業が拡大して「QuickBooks」(Intuitの会計ソフトウェア)で対応できなくなったとき、最初に検討したのは小規模企業を対象とした従来タイプのERPパッケージだったという。しかしMicrosoftのCRMソフトウェアや「Great Plains」ソフトウェアはカスタマイズに高い費用がかかり、一方、SAPやBest Softwareの販売担当者は問い合わせへの対応や製品情報の提供に時間がかかりすぎた、と同氏は話す。

 ヘッドリック氏はNetSuiteを利用し始めて8カ月になるが、同社のソフトウェアが気に入っているという。また、ホスティングプロバイダーを利用することに決めたことで、社外からでも自社の情報にアクセスできるようになったことにも喜んでいる。

 「このWebアクセス機能は実に素晴らしい。もうこれなしではどうやって会社を運営していいか分からないくらいだ」(同氏)

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