日本SGIが明かすスパコンの本音(2/2 ページ)

» 2005年02月01日 03時28分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
前のページへ 1|2       

「Opteronの採用は考えにくい」

 TOP500にはAMDのOpteronを採用したシステムも見られるようになってきた。現時点でのOpteronシステムの最高位は、Opteron 2.2GHzを2560基搭載する中国の曙光(Dawning)4000Aの17位だ。TOP500におけるAMDと中国の躍進について戸室氏は次のように話す。

「SGIがAMDのプロセッサを採用する可能性は極めて低い。インテルがコンパイラも含めた総合的な開発環境まで提供しているのに対し、AMDはプロセッサだけです。こうした体制は、問題が起こったときの対応力となって現れてくる。この点で、インテルとビジネスを進めていくのがベストだと考えている。中国に関しては、記録を出すことにこだわっている印象がある。実際現地で話を聞いてみても、それだけのシステムをどう使いこなしていくかという部分でビジョンが弱いように感じた」(戸室氏)

 なお、AMDについては、SGIのボブ・ビショップCEOも64ビット開発環境がまだ十分に整備されていない旨の発言をしている(関連記事参照)。AMDがSGIに自社のプロセッサを採用してもらおうと思うなら、企業買収を考えるくらいの気持ちでないと難しいかもしれない。

インテルと進める省電力化

 さて、SGIから熱い視線を向けられるインテルだが、しっかりとその期待に応えようとしている。それが前述の省電力化についてである。

 SGIは、同社のサーバ「Altix」の次バージョン(2005年後半に登場予定)で、プロセッサをインテルのMontecitoに載せ替える予定であるとしている。Montecitoは、90nmプロセス製造による第4世代のItaniumプロセッサ・ファミリ。インテル初となるデュアルコアを採用する予定だ(関連記事参照)

 デュアルコアの部分が強調されているが、より重要なのはDBS(Demand Based Switching)のような電力管理機能の部分だと戸室氏は話す。シングルコアで複数のスレッドを動かすよりも、コアの数を増やしたほうが効率的な処理につながるため、電力管理機能が優れていれば、マルチコアのほうが消費電力が少なくなると予想される。SGIでは、DBSの機能をAltixに実装することを検討しており、システムの負荷によって動作クロックを動的に変更し、消費電力を抑えることで省電力化を図ろうとしている。

 現在、ドイツのミュンヘンにあるライプニッツ研究センター(LRZ)は、SGIからAltixを購入することをすでに決定している。同センターでは、Montecitoを2560個(コアは5120)搭載するシステム(Rpeakは32テラFLOPS程度)を2006年前半に導入する予定だ。この事例で導入されるシステムの消費電力を見ることで、DBSの採用でどの程度の省電力化が図られるかを見ることができるだろう。

「この段階は第1フェーズ。第2フェーズでは、Motecitoのさらに次世代となるMontvaleを3328個搭載したものとなり、Rpeakは69テラFLOPS程度まで向上する。欧州でも最大規模のスパコンとなるはず」(戸室氏)

 アメリカでは2011年ごろをめどに、Rpeakで3ペタFLOPS、Rmaxで1ペタFLOPSの性能を持つスパコンを完成させる見込みとなっている。しかし重要なのは、性能を誇ることではなく、「どう使うか」であることは間違いない。SGIは、ハードウェアを作り込む一方で、その能力を最大限に引き出すソフトウェアの開発技術も進めていくことになるはずである。

 「効率的に使うためのアプリケーションやサービスが本当に大事な部分」と話す戸室氏。地球規模の環境解析に需要がある限りスパコンの需要がなくなることはないだろうが、そうしたビジネスにはSGIが得意とする「可視化」の技術が欠かせない。SGIとスパコンはこれからもともに歩んでいくといえそうだ。

世界最高峰の研究機関のトップが3月に

 日本SGIでは、2月28日から3月1日にかけて、「日本SGI ソリューション・キュービック・フォーラム 2005」というフォーラムを都内で開催する。このうち、HPC関連のフォーラムは見どころが多いものになりそうだ。

 Columbiaシステムが納入されたNASAからは、先進スーパーコンピューティング部門の最高責任者であるウォルト・ブルックス氏が、海洋研究開発機構からは地球シミュレータセンター長の佐藤哲也氏が登場予定となっている。世界最高峰の研究機関のトップが台風(ハリケーン)の進路予測にシミュレータがどう貢献したかを講演する予定だ。

 また、東京大学地震研究所地震火山災害部門の古村孝志助教授が、「地球シミュレータ&可視化で挑む大地震の強震動予測と災害軽減」というテーマで講演する。新潟中越地震やスマトラ沖地震といった自然災害が相次いで発生しているだけに、減災について知るにはいい機会になるだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ