Vender trend――次世代のITシステム環境をオーケストラにハイレベルの協調の実現を目指す「仮想化」システム・リソースの自動運用 第3部

日立が掲げるサービス・プラットフォーム・コンセプトHarmonius Computing(ハーモニアス・コンピューティング)は、「大規模で複雑なITシステムが、あたかも1つのオーケストラのようにタクト一本で思いのままに、お客様が求めるハーモニーを奏ではじめる。」というイメージから名付けられている。

» 2005年02月11日 19時16分 公開
[Open Enterprise Magazine]
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 その背後には、複雑な構成となったITシステムを仮想的な1つの実体に見せる仮想化技術が中核的な存在として位置づけられ、管理負担の軽減と共に、変化に即応できる柔軟性を実現することを目指している。

Harmonious Computingの目標

 日立が掲げるHarmoniusComputingでは、まずシステム全体が実現すべき大目標が提示されている。具体的には、「発展」「共創」「信頼」の3つである(図1参照)。やや抽象的で、ともすれば哲学的ともとれる言葉だが、その内容は具体的に提示されている。「発展」とは、時代の変化やビジネスの成長に沿って最適な構成を取れるシステムを意味し、要は柔軟で拡張性に富むシステムを実現する、という目的だと理解できる。また、「共創」は業務間の密接な連携を図ることで新たな価値を創造していくことを意味し、孤立したシステムの寄せ集めではなく、有機的に密接に連携したシステムを実現するという目標だ。最後に「信頼」は、ミッションクリティカル・システムに不可欠な信頼性を確保するということで、ここではホットスワップや自動代替などの技術によってノンストップシステムを実現するという意味になる。

図1■Harmonious Computingがもたらす3つの価値

プラットフォームの仮想化

 Harmonius Computingを実現していく上で中核となる技術が、プラットフォームの仮想化である(図2参照)。日立の構想では、仮想化は2つのレイヤで実現される。まず、下層のファウンデーション・ミドルウェアのレイヤでハードウェアやOSの仮想化を実現し、その上のオープン・ミドルウェアのレイヤでアプリケーションの開発/実行に必要なプラットフォームの諸機能を仮想化する。日立は以前からミドルウェアのレイヤでの仮想化に熱心に取り組んでおり、自社開発のさまざまなミドルウェア製品を、Linuxなど複数のプラットフォームOS上に実装してきた。これがHarmoniusComputingでのオープン・ミドルウェアのレイヤを構成する土台となっている。ユーザーの視点からアプリケーションを見れば、既にオープン・ミドルウェアによって下層のOSやハードウェアが隠蔽された状態になっているので、一定レベルの仮想化は既に実現されているとえることもできるだろう。今後はさらに、ファウンデーション・ミドルウェアのレイヤでのハードウェア等の制御の粒度を細かくしていくことと、オープン・ミドルウェアの上位に位置するグリッドサービスの充実が当面の課題となる。

図2■日立のプラットフォーム仮想化のレイヤ構造

仮想化による問題解決

 日立は、現状のオープンシステムの問題点を、「業務ごとにシステムが分散する」ことと捉え、4つの課題を抽出している。それは、「分散したシステムの運用管理コストの低減」「空きリソースの有効活用」「費用対効果を考慮した信頼性の確保」「セキュリティ対策運用の効率化」の4つである。

 Part2でも紹介したとおり、分散したシステムリソースを効率的に運用するには、タスクの正確なサイジングや負荷状況のモニタ、動的なタスクの移動などが必要となり、人力で処理するのは現実的でないため、これまではこうした非効率が放置されてきた。業務システムがそれぞれ独立して分散配置されていると、システムが増えるに従って組み合わせが複雑化し、管理負荷は等比級数的に増大していく。このコスト負担はユーザー企業にとっても大きな問題となっているため、まずこの低減が目標としてあげられている。続いて、業務ごとに分散したシステムでは、それぞれ業務ごとに特化したシステム設定を行なう。さらに、各システムはそれぞれの業務のピーク時の負荷に合わせてサイジングされるため、通常時は処理能力を余らせていることになる。平均的な負荷に合わせたサイジングを行ない、ピーク時には他のシステムで余っている処理能力を流用できればシステムの利用効率が向上し、システムコストの削減に繋がるが、そのためには処理能力に余裕のあるシステムに業務処理のために必要な環境を構築した上で、タスクを分散して投入する必要がある。これを実現するには、高度な自動化処理が望まれ、プロビジョニング技術なども必要となる。

 一方、分散したシステムでは、信頼性の実現レベルもまちまちになる。個々のシステムごとに構成が異なるため、信頼性を一定レベルに保つのは容易ではない。各システムの構成に応じて異なる高信頼性対策を実施すれば、システム全体の構成がさらに複雑化することになり、管理コストの増大に繋がる。同じことはセキュリティ対策についても言える。システムの構成や用途、扱うデータの内容が異なるため、要求されるセキュリティ・レベルもまちまちになり、保護手法も異なってくる。こうした複雑な詳細を管理者からも隠蔽し、論理的なサービスレベル定義として指定するだけでシステム側で自動的に信頼性やセキュリティの確保を実施してくれるようなメカニズムが求められているのである。こうした課題を解決するために、日立が取り組んでいるのがサーバレベルでの仮想化による単一リソースプールの実現である。管理対象が仮想的な1つのリソースプールとなることで数の問題が解消され、論理的/抽象的な操作で運用できるようになることでコストを掛けずに効果的な運用管理が実現する。

図3■日立の考えるシステムの仮想化

BladeSymphonyの投入

 日立では、Harmonius Computing構想を具現化する製品として、9月1日に総合サービスプラットフォーム「BladeSymphony」を発売した。この製品は、サーバ、ストレージ、ネットワーク、システム管理ソフトウェアを一体化したソリューション・パッケージである。サーバ部分はブレードサーバとRAIDストレージをファイバチャネル・スイッチで接続し、ネットワーク部ではLANスイッチとロードバランサを統合している。さらに、システム管理ソフトウェアとしてサーバ管理、ストレージ管理、ネットワーク管理の3種類のモジュールを含む「BladeSymphony Manage Suite」を搭載し、基本的な仮想化機能を実現している。この製品の投入によって、日立の現時点での仮想化への取り組みがどのレベルまで達成されているのかを知ることができるだろう。日立内部でも、今後既存のサーバを順次BladeSymphonyで置き換え、サーバ統合に取り組んでいくという。

記事の続きは、以下のPDFで読むことができます。


本特集は、ソキウス・ジャパン発刊の月刊誌「Open Enterprise Magazine」の掲載特集を一部抜粋で掲載したものです。次の画像リンク先のPDFで記事の続きを読むことができます。同特集は、2004年10月号に掲載された第3部です。

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