「アジアがネットワーキング市場を牽引する」とノーテル社長Interview

ノーテルのアジア太平洋地域社長兼日本法人社長であるジョン・ジアマテオ氏によると、「アジアこそネットワーク成長の牽引力」だという。

» 2005年02月15日 23時33分 公開
[ITmedia]

 モバイルやVoIPの統合といった要因をてこに、ネットワーキング市場にようやく回復の兆しが見え始めてきた。その動向と新たな市場に向けた取り組みを、ノーテルネットワークスのアジア太平洋地域社長兼日本法人社長であるジョン・ジアマテオ氏に聞いた。

ITmedia 一時期のバブルから一転して厳しい時期を迎えたネットワーキング市場ですが、最近ようやく回復の兆しが見え始めてきたようですね。

ジアマテオ そのとおりです。2001年から2002年にかけて厳しい時期を経験し、2003年もまた、市場の成長はゆるやかなものにとどまっていました。しかし2004年は回復の兆しが徐々に見え始めてきています。特に、アジア地域はこの成長を牽引しており、大きなチャンスがあります。

 ノーテルは、全世界的に見てもアジアこそが今後の成長のエンジンだとみなしています。インドやパキスタン、インドネシアやベトナムといったコミュニケーションインフラの整備がまだこれからという国々では、今後大きな成長が見込めるでしょう。一方、日本や韓国、オーストラリアといったネットワーク先進国では、ネットワークの統合が起こりつつあります。それも、ワイヤレスを中心に第三世代への移行にフォーカスしている点が特徴です。従来型のワイヤードネットワークやTDMから、VoIPも含めいっそうリッチな機能を備えたネットワークへの移行が起ころうとしています。ノーテルは、この中で引き続き強い地位を占めるべく、積極的に開発および投資を行っていくつもりです。

ITmedia 分野ごとに見るとどうでしょう? やはりワイヤレス(携帯)市場が有力なのでしょうか?

ジアマテオ 最も早いスピードで成長しているのはワイヤレスマーケットです。ノーテルはこの市場に対し、CDMAやUMTS、GSM、GSM-RやワイヤレスメッシュLANなど、あらゆるワイヤレステクノロジにまたがる広範なソリューションを提供できると自負しています。

 一方、ワイヤラインの市場も成長しています。特にキャリアでは、TDMからVoIPネットワークへの移行が進んでいるところで、これまでにアジア地域の12のキャリアがノーテルの製品を用いてVoIPネットワークを実装しました。

 オプティカルネットワークも大事です。というのも、日本や韓国といった国ではブロードバンドが爆発的に普及しました。その結果、光ソリューションに対する需要も伸びているのです。日本ではNTTコミュニケーションズやKDDIがわれわれの製品を採用しており、昨年は50%の成長を見せました。韓国でもコリアテレコム、SKテレコムなどがノーテルのオプティカル製品を採用しています。

 エンタープライズの市場も着実に回復しつつあります。この分野では、インドで大規模なコールセンターに関する案件が成立するなど、VoIPや統合ソリューションとそれを支える技術にフォーカスが当たっています。エンタープライズ市場はアジア全体で20%成長しましたが、ノーテルはそれ以上のペースで成長しました。2005年もこのペースを維持したいと考えています。もう1つ、顧客にとって関心事となっているのはセキュリティです。その意味で、AlteonやContivityといった製品は、2005年も引き続き成長すると見ています。

ジアマテオ氏 アジアはネットワーキング市場成長の鍵を握ると強調したジアマテオ氏

ITmedia 先ほどから業績の点を強調されていますが、そうした成果が得られた理由は何でしょう?

ジアマテオ やはり技術が大きいでしょう。ノーテルは常に、イノベーションのリーダーとして評価されてきました。その好例がVoIPです。MCIやSprintなどが採用していることからも分かるとおり、アジア地域だけでなくグローバルにキャリアグレードのVoIPを提供しています。

 キャリアにとっては、アジアでオペレーションを行っていることもポイントになると考えています。NTTコミュニケーションズやKDDI、コリアテレコムや豪・テレストラなどの顧客と強い関係を保ち、意見に耳を傾けた上で新製品を提供しています。

 信頼性や拡張性、セキュリティ、ミッションクリティカル性といった点で顧客から高い評価と信頼を得ていることもポイントです。最も顕著な例がニューヨーク証券取引所ですが、毎日数十億ドルにも上る取引が、ノーテルのネットワークの上で行われています。香港やボンベイなど他の主要な証券取引所でもノーテル製品が採用されており、これもわれわれに対する信頼や安心感ゆえだと思います。

ITmedia 中国や韓国における合弁会社設立に向けた動きも業績に関係しますか?

ジアマテオ いえ、2004年度の実績には影響しません。2005年の事業に、よりよい影響を与えてくれるものと期待しています。2004年後半には数十億ドル規模の契約を得て、ノーテルの全世界のビジネスにおけるアジア太平洋地域の割合は14%となりましたが、2005年はこのモーメンタムがさらに加速し、より大きな比率を占めるようになるでしょう。

 韓国においては、ナンバーツープレイヤーのLG電子と合弁会社設立に関する覚書を交わしたところです。先進的なテレコムマーケットである韓国において、強力な地位を築くことが目的です。この提携にはもう1つの目的があります。この合弁会社を、テクノロジを全世界に輸出していくためのハブにすることです。他国のずっと先をいく韓国市場に優れたソリューションを投入していくことで、さらなる差別化につながると考えています。

 一方、中国におけるプーティエン(普天)との合弁は、別の目的を持っています。第三世代携帯電話へのフォーカスです。プーティエンの持つW-CDMAおよびTD-SCDMAの技術を活用し、シェアを最大化していければと考えています。

ITmedia 日本に関してはどうでしょう? NECと日立がアラクサラネットワークスを設立し、富士通とCiscoが提携するなどの動きがありましたが、ノーテルの戦略は?

ジアマテオ 1つ言えるのは、われわれは長期にわたって日本市場に関わってきましたし、今後も引き続き、強力にコミットしていくということです。確かに日本市場では、ベンダーレベルでの提携が牽引する形で一種の統合プロセスが起こっています。こういった状況に置いてローカル(=日本)企業との関係を構築するならば、互いにメリットのある形でなくてはなりません。やり方はいろいろ考えられますが、日本におけるプレゼンス拡大のため、パートナーシップ展開も含めいろいろと模索していきます。

ITmedia 今後のネットワークの姿はどのようなものになると予想しますか?

ジアマテオ 第二世代、第三世代、ワイヤレスと、あらゆる分野においてもっとIPが活用されるようになるでしょう。TDMからVoIPにいたるまで、あらゆるネットワークが統合され、ネットワークの世界が根本的な変化を迎えることは間違いありません。結果として堅調な成長が期待できますが、このチャンスを生かせる企業はそうは多くはないでしょう。ノーテルは、この変化を見据えて年に数十億ドルを研究開発に投資しています。

 また、プロセッサがその典型例ですが、テクノロジが非常なスピードで高度化し、誰もがパワフルな機器を安価に入手できるようになりました。その結果、機器への投資は減り、代わりにサービスや統合といった部分に投資がなされるようになっています。キャリアも、オペレーションインフラより、新たなサービスやそのマーケティングといったところに力を注ぐようになってきました。だからこそノーテルもそこに焦点を当て、サービスに注力しています。その一環として、「ノーテルがこの複雑な世の中を簡素化します」というブランドキャンペーンを展開し、信頼を確立していきたいと考えています。

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