RHELにはWS、ES、ASと3種のパッケージがあり、それぞれは機能が限定されている。最も低価格なものはデストップ向けとされたWSの4万1,790円である。しかし、RHEL WSのWSは「WorkStation」の略称であり、ほとんどのサーバパッケージが含まれておらず、自らで追加インストールしてもパッケージアップデートサービスからは対象外だ。事実上、Samba程度の小規模なサーバか、もしくは本当にデスクトップ用途向けである。
Solarisの得意とする分野は、数百〜数千に及ぶユーザー管理が可能な比較的エッジからエンタープライズのニーズだ。ここには、RHELであればASパッケージで対抗しているが、その価格帯は20万7,900円〜34万6,500円だ。Red Hatによるこの価格設定は、Solaris 9以前の複雑なライセンス体系、価格を踏まえてのことと想像に難しくない。
確かにサンは、従来のライセンスにサーバ用途/デスクトップ用途やシステム構成によるライセンス価格の差別化もしていたが、Solaris 10ではそのような差別化を廃し、どのような用途、システム構成であっても同一バイナリで提供した。もちろんライセンス料金も無料だ。また、最も高価なPremiumサービスを付帯しても、年360ドル(約4万円)という価格設定なのだ。
無償で提供し、ビジネスモデルが軌道に乗って価格を引上げてきたLinux陣営。一方、サンは価格を引き下げてLinux攻勢に出たわけだ。さらにSolarisには、Open Solarisでエッジも巻込む手も残している。Solaris 10はマルチCPUのサーバ用途、そしてデスクトップ用途でも、すべて無料で利用できるようにしたのだ。実際にデータセンターのようなミッションクリティカルなサーバにはサービスプランも購入、各種サービスを受ることになるだろう。しかし、トータルコストとして年30万を超える金額と、年360ドルではかなりの差が生じてくる。
Solarisは、従来にも何度か低価格路線への変更を試みたことが何度かあった。
Solaris 9にしても、旧来のSolarisライセンス体系と較べれば相当な割安になっている。それでもLinux攻勢には反撃できず、遂には用途やシステム構成に関わらず、無償ライセンスへと踏み込んだ。
ひとつにはOpen Solarisの存在もあるが、もうひとつはSolarisという名前の「アピール」だと筆者は見る。UnixライクなOSを考えるユーザーに、Linuxは多くのディストリビューションを知らしめることができた。しかし、そこには「Solaris」という名は食込めなかった。同時にライセンスやサポートが当時のLinuxに対して高価であることから、初期LinuxブームでSolarisはサーバ用途で個人向けのワークステーションではない、といった誤解も招いてしまった。
サンとSolarisがトップエンドの領域で圧倒的な力を握っていたのは事実であるが、サポート料金やメンテナンス費用で高価なイメージを持たれていたことも否定できないところだ。指名買いをしていたユーザーは、景気も相まってコスト削減へとシフトせざるを得なくなった。
Solaris 10とOpenSolarisは、こうしたイメージを払拭し、シングルCPUのエッジから主力とするエンタープライズまで、幅広く対応できることを強調し、Linuxユーザーの奪還を目指している。
Solaris 10はSPARCプロセッサはもちろんのこと、x86系といってもAMD Opteron、Intel XeonのマルチCPUまで幅広く対応する。とりわけ、64ビットの次世代CPUに肩入れしている。
その端的な例が32ビットと64ビットのソースコードは同一のものが用いられていることだ。実際、カーネル、及び主要ドライバのディレクトリには32ビットと64ビット用が並行インストールされている。例えば、エントリーレベルのシステムから次世代CPUのハイエンドシステムに変更しても、ハードウェア的な互換性は保たれるのだ。
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