Solaris 10はLinux攻勢の切り札となるか――前編(3/3 ページ)

» 2005年03月15日 15時53分 公開
[渡辺裕一,ITmedia]
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 更に、LinuxバイナリをSolaris 10上でも動作するよう対応したことも大きな特徴としている。

 高額なOSライセンスに見切りをつけたニーズでは、Linuxネイティブのアプリケーションへと移行する動きも多い。しかし、Solaris 10はRed Hat Enterprise LinuxやSUSE LINUXといったLinuxネイティブのアプリケーションも動作保証するとの狙いだ。もちろん従来のサンアプリケーションとも互換性がある。

 これはBSDのLinuxエミュレーション(当然オーバーヘッドによるパフォーマンス低下が生じてくる)ではないということも注目に値する。Linuxネイティブのアプリケーション開発にかけたコストは、そのままSolaris 10で継承することができ、さらに64ビットCPUへのハードウェアアップグレードで更なるパフォーマンス向上が期待できるとの狙いだ。ハイエンドOS用アプリケーションの相互に互換性を保つ立場として、そのどちらも飲込んでしまうのだ。

 もうひとつの対象は、現在Javaアプリケーションサーバとしても圧倒的なシェアを誇るWindowsの存在だ。Windowsは、サーバ用途よりもクライアント用途が多いが、それでもJava本家のサンとしてはWindows Serverへの対抗策が望まれていた。前述の通りWindowsから比較的違和感のないSun Java Desktop Systemを採用することで引きこみを狙っている。ATOKの日本語IMEの実装、GNOME環境でユーティリティの充実、StarSuite 7バンドルでオフィススイートも完備という具合だ。

画面■ネットワーク構成はGUIで操作可能になっている

無尽蔵なファイルキャパシティとその信頼性を確保

 UNIX系OSのファイルシステムの多くはジャーナリンサポートが普及しており、Linux系ならばext3やReiserFS、XFSも注目されている。ストレージのI/O構造は、データベース運用OSとしての信頼性確保に欠かせない要件であるからだ。

 Solaris 10は、ファイルシステムとしてZFSを採用した。従来のファイルシステムは、個々のストレージ内にパーティションを作成し、それぞれを単独で管理してきた。対してZFSは、すべてのストレージをいちど「Strage Pool」と呼ばれるボリュームにまとめる構造を持つ。そのプールの中からZFSパーティションを作成していくのだ。この様式に近いのは、基本パーティション内に作成していく論理パーティション構造である。

 この構造から想像できるのが、特定のストレージ、あるいはドライブに局所的な負荷がかかりにくい、ということだ。例えば、ログが集中する/varやデータベースの主要データを収めるディレクトリ(パーティション)には、頻繁にアクセスが発生する。高すぎる負荷はシステムダウンに至るかもしれない。しかし、Strage Poolをデバイスとファイルシステムの間に挟むことで、ロードバランサーのようにも働くわけだ。

 また、システムの冗長性としても、Strage Poolが介在することで柔軟に対応することができる。仮にストレージを増減するにしても、formatからnewfs、/var以下の書換えといった従来の作業を行うことなく、管理者はStrage Pooolから操作することで物理レベルのコマンド作業を自動的に行ってくれる。

 さらにZFSは、64ビットのチェックサムと128ビットのファイルシステムで構成されることも特徴だ。32ビットや64ビットで構成されるファイルシステムとは、16億倍の最大キャパシティを得る。Linuxで現在使われているファイルシステムのうち、ext2が16Tバイト、XFSが64ビットの900万Tバイトが理論上、最大のファイルシステム容量。これを16億倍上回るZFSの128ビットファイルシステムは、もはや天文学的数値のキャパシティと言えるだろう。このZFSについてサンは、「今後5年から10年使い続けることができるファイルシステムを想定し、作り上げた」と語っている。その上で64ビットのチェックサム領域を設け、データエラーはほぼ限界測定値以下の精度で保護されている。

 巨大なストレージデバイスもStrage Poolで扱いが容易になり、さらにそのデータエラーも保護される。データセンター規模で扱われるTバイトクラスのストレージシステムを多数抱え込んでも、ZFSはそれを容易に飲み込むキャパシティーがあり、冗長性や良好な作業性、データの安全性も確保するわけだ。

画面■RAIDやストレージデバイスの操作は管理画面からGUIでも行える
図■ストレージデバイスとファイルシステムの間に緩衝剤を作成することでシステムの冗長性を確保する

 次回後編では、ネットワーク構造についてやセキュリティ、そしてSolaris 10を象徴するDTraceについて触れていく。

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