代理人が情報開示を求めてきたら応じる必要はありますか個人情報保護Q&A

» 2005年03月17日 08時28分 公開
[古本晴英,ITmedia]

 個人情報保護法は、情報主体本人の権利利益を守るために制定された法律です(法1条)。したがって、ある特定の個人情報について、その開示請求、訂正等の請求を行うのは、情報主体本人であることが原則です。しかし、一般の社会生活の中では、法的権利なども本人でなく代理人が行使することがよく行われます。本法も開示請求や訂正等の請求について代理人によって行うことができるとしています(法29条3項)。この条文を受けて制定された規則には、未成年者の親権者、成年後見人のほか、開示請求などを委任されたものが代理人として請求ができると規定されています(規則8条)。したがって、情報主体本人から依頼を受けて代理人になったものが、本人に代わって開示請求等を行うことができるということになります。

 そうすると、請求を受ける側としては、代理人と称して請求してきた人物が、果たして本当に代理人なのかどうかを判断しなくてはならないということになります。本人が直接請求してくる場合も、全く関係のない他人に開示等をしないように、請求しているのが本人なのか確認する必要がありますが、代理人が請求してくる場合、これに加えて、本当に委任を受けているのか、請求しているのが委任を受けた代理人本人なのかということについても確認する必要がでてきます。

 本人確認の手段・方法については、社会生活上のさまざまな場面ですでに運用が行われています。本人や代理人の本人確認のためには、住民票、免許証、印鑑証明書などの提示を求めることなどが必要になります。これに加えて、代理権を確認するために委任状の提出を求めることもよく行われています。

 法律は、どの程度厳格な本人確認を行わなければならないかという具体的な方法を定めているわけではありません。情報の保管方法や情報の種類によって、手続きの厳格さも変わるべきであり、一律に決めることは適切でないとの判断があったのでしょう。他方で法律は、手続きが本人に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない(法29条4項)とも定めていますので、安全管理と迅速な手続きとの間の微妙なバランス感覚が必要になってきます。いずれにせよ、無用な混乱やトラブルを生じさせないよう、どのような請求にどのような手続きが必要であるかを、予め決めておくことが大切になるでしょう。

古本晴英プロフィール

1998年弁護士登録。日弁連情報問題対策委員会委員。社団法人自由人権協会(JCLU)理事・事務局次長。民事、刑事の訴訟実務のかたわら、弁護士会の個人情報保護対策の実施や、国民生活センターの客員講師として個人情報保護法の講座を担当している。主要著書に「Q&A個人情報保護法」(三省堂、共著)、「個人情報管理・運用の実務」(新日本法規、共著)がある。

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