日本SGI、キヤノン販売など3社と戦略的提携──米SGIからの決別ではない

日本SGIはキヤノン販売、ニイウス、SBMMの3社と戦略的提携を締結した。今回の提携の狙いと米SGIとの関係について日本SGI代表取締役社長CEOの和泉法夫氏に聞いた。

» 2005年04月04日 12時18分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本SGIは4月1日、国内市場における事業基盤をさらに拡大するとともにブロードバンド・ユビキタス事業を加速するため、3月31日付けでキヤノン販売、ニイウス、ソフトバンク・メディア・アンド・マーケティングの3社と資本参加を含む新たな戦略的提携に合意したことを発表した。同社は2001年11月にNECおよびNECソフトと資本出資を含む戦略的提携を行い、米SGIに囚われない事業展開を図ってきたが、今回の発表は同社が新たな動きの前兆を見せたと解釈するべきであろう。日本SGI代表取締役社長CEOの和泉法夫氏に電話取材を行っているので、和泉氏の言葉を交えて紹介しよう。

 今回の話は、日本SGIが進めるブロードバンド・ユビキタス・ソリューションやビジュアライゼーション・ソリューションといった米SGIに囚われない独自のビジョンに基づく事業が軌道に乗ったと判断したために、それぞれの分野で戦略的提携を結ぶことで、ビジネスを加速させようとしたものだといえる。

 キヤノン販売は映像機器や画像の入出力機器を中核とした映像技術分野、ニイウスは金融分野、SBMMについては、パブリッシング事業のノウハウを生かす形で展開している電子書籍関連事業といったそれぞれの分野で、日本SGIが強みを持つ可視化などの技術を融合させることで、新たなソリューション展開を狙うつもりである。このうち、ニイウスに関しては、金融業界だけでなく医療分野におけるシナジー効果も期待される。日本SGIの遠隔医療技術をはじめサイエンス・ソリューションと連携することで、ここでも新しいソリューションを提案していくつもりであるという。

 ニイウスというと、IBMのメインフレームなどを取り扱っており、最近では米SGIのスーパーコンピュータ「Project Columbiaシステム」と覇を争った「Blue Gene/L」を同社の検証施設「グリッド/オートノミック・コンピューティングセンター」内に設置し、グリッドを利用した金融・医療機関向けのサービスを予定しているが、そのあたりのしがらみはないのだろうか。和泉氏はこの質問に対し「そんな些末なことにはこだわらない。それを言ってしまえばNECもSXシリーズを持っているじゃないですか(笑い)」と一笑に付す。

米SGIが拒否権の発動をしなければならない事態ではない

 今回の提携に基づき、これまで米SGIが40%保有していた日本SGIの株式のうち、発行済み株式の10%がキヤノン販売に、同じく5%がニイウスに、1%がSBMMに譲渡された。これにより、日本SGIに対する出資構成比率は日本電気(NEC)が40%で筆頭株主となり、次いで米SGIが24%、NECソフト20%、キヤノン販売10%、ニイウス5%、SBMM 1%となった。

 米SGIは発行済み株式の33.4%を下回ったため、発言力の低下が懸念されるが、これについて和泉氏は「3年間NECグループが筆頭株主としてビジネスを進めてきたが、NECが日本SGIの方向性について強固に意見を通すようなこともなく、(米SGIが)拒否権を発動しなければならないような事態は一度もなかった。それは今後も変わらない。そもそも、今回のような話は各社の同意が得られなければ無理に進めてもうまくいかないものだが、各社に快諾いただき、非常に友好的に話を進めることができた」と話している。

 事実、今回の資本政策に合わせ、日本SGIでは国内市場における米SGI製品の独占販売権を2010年までとする契約を再締結している。2010年以降は自動延長となるオプションも明記されているようで、今回の発表をもって米SGIとの決別とするのは早計だといえる。

「ITの歴史というのはたかだか25年。過去の経験などの積み上げだけで通用するものでもない。若いから何年か下積みしなければならないということでもない。日本SGIは攻めのフェーズに入ったと確信しているが、ますますクリエイティブな才能が求められている」と和泉氏は若い力に期待を寄せる。4月1日付けの執行役員人事でも、黒澤俊邦氏(37歳)、大塚寛氏(33歳)という30代の執行役員が誕生していることからも、数年後も見据えた積極的な人材登用の動きが見て取れる。

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