「PC市場の悪影響はない」――Dell、年商800億ドルへの道を語る

「われわれはPCの成長率に縛られてはいない」と主張するDell CEO。サーバやサービスの採用が増え、PCが売上高に占める割合が低下するとの展望を掲げた。(IDG)

» 2005年04月08日 10時06分 公開
[IDG Japan]
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 米Dellは4月7日、同社が冷え込むPC市場の影響を克服し、2009年までに年商800億ドルを実現できるペースで成長を続けられることを金融アナリストに納得させるのに大いに骨を折った。

 同社はプリンタ、サービス、エンタープライズサーバ、モバイル製品(ノートPC、PDAなど)といった利益率が高めの市場への投資を増やす計画だと、ケビン・ロリンズCEO(最高経営責任者)はこの日、米テキサス州のThe Four Seasons Hotelでの講演で語った。同社幹部らは、IDCやGartnerなどのアナリストが予想する、向こう数年にわたるPC市場の段階的な減速から悪影響を受けることはないと努めて主張した。

 「われわれはPCの成長率に縛られてはいない」とロリンズ氏。PC出荷台数はここ2年、安定した2けた成長を記録してきたが、IDCの3月時の予測では、2005年の出荷台数は前年比9.7%増になる見通しだ(3月24日の記事参照)

 企業がITインフラバックボーンとしてDellのサーバ、サービス、ネットワーキング製品を採用し続ければ、同社の売上高におけるPCの割合は向こう数年のうちに低下するだろうとロリンズ氏は語った。同社はまた、こうしたハードの導入、サポートに伴うサービスからの売上を増やせると信じているという。ITサービス市場には莫大な潜在売上があるが、同社はサービス部門の育成にあたっては慎重に事を進め、主に同社ハードを採用している既存顧客と協業することを優先する考えだ。

 Dellは売上高に最も貢献し、世界市場でトップシェアを誇るPC事業を完全に無視しているわけではなかった。IBMがLenovo GroupにPC事業を売却し、最近Hewlett-Packard(HP)がトップを交代させたことは、DellのPC事業がライバルを食い物にして他社よりも急速に成長するチャンスになるとロリンズ氏は語った。

 「混乱の時期には、顧客は安定したベンダーへと流れる」(同氏)

 しかし、この日の会合の主な焦点は、Dellが年商800億ドルの目標を達成するために、いかにほかの事業を改善するかに当てられていた。ロリンズ氏によると、同社はこの目標を向こう3〜4年で達成したい考えという。この目標は、同社2006会計年度の第1四半期となる今四半期から始まった。

 Dellはプリンタ、ソフト、周辺機器、ストレージなどの市場に踏み出したばかりだとロリンズ氏は語った。欧州など、HPがリードしている米国以外の市場に成長の余地はあるとも。

 ただしDellは、同社としては単なる規模の拡大よりも利益の拡大の方が重要であると明言した。

 「われわれのライバルは損を出して、あるいは買収を通じてシェアを獲得しようとしている」と同社創設者のマイケル・デル氏は語った。同社はシェア獲得のために利益を犠牲にするつもりはなく、競合他社と比べてコストがかなり低いため、利益とシェアの両方を獲得できると考えていると同氏。

 向こう数年のPC出荷台数の成長見通しはこれまでより控えめだが、ロリンズ氏は、Dell独自のコスト構造で、年商800億ドルに向けて市場を上回る成長を達成できると主張、過去10年間、同社が実際にPC市場低迷の際にも市場以上の成長を遂げてきたことを指摘した。

 「デスクトップPCの販売で利益を出せる企業がほかにあるとは思えない。われわれの財務は、これまでのどの時点よりもいい状態にある」とCFO(最高財務責任者)のジム・シュナイダー氏は語った。

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