OSSの次世代デスクトップ――0.62で洗練するProject Looking Glass 3D APIプロジェクトリード川原英哉氏寄稿(2/2 ページ)

» 2005年04月15日 16時04分 公開
[川原英哉,ITmedia]
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 米カーネギー・メロン大学のHuman-Computer Interaction Instituteでは、その修士コースの研究テーマの1つとしてLG3Dを題材にしている。米コロラド大学のComputer Science学部では、卒業研究のテーマの1つとしてLG3D上での3Dメディアプレーヤーの開発を行っているのだ。日本の大学においては、把握している範囲だけでも、九州工業大学、北見工業大学、北海道大学などで活用していただいている。

 ここでは,九州工業大学の例を簡単に紹介しよう。九州工業大学小出研究室では、IPA 未踏ソフトウェア創造事業の支援を受け、「三次元GUIスタイルの提案とその開発環境の整備」をテーマに、LG3D上でスケジュール管理ソフトの開発を行っている。「Cosmo Scheduler D」と名付けられたこのアプリは、前述の「Java Computing 2005 Spring」においてLG3DのBoFでも発表があった。

 以下のスクリーンショットを見ても分かるように、「宇宙をモチーフにした美しく、楽しいユーザーインタフェースを備えたスケジュールソフト」を目指し、開発が進められている。「楽しく夢のあるアプリケーションにしたい」という開発者の意気込みがよく伝わってくる。LG3Dがこのような夢のある研究に少しでも役立つのであれば、開発者としてこの上のない喜びである。今回のバージョン0.62のリリースによって、さらに多くの事例が生まれることを期待している。

次期バージョンはどうなるのか

 それでは、今後のLG3D開発はどうなっていくのだろうか? ちょっと気の早い話だが、次期バージョンである0.7について少しお知らせしておく。

 バージョン0.7は、米国でJavaOne開催の6月末頃に発表する予定である。その目玉の1つは、Java 3D 1.4上への移行と、それによるパフォーマンス向上だ。LG3DはJava 3D上に実装されているのだが、通常の3Dアプリとは異なった3D APIの使用傾向を持つため、Java 3Dで実装が最適化されていない部分への極度な依存が発生している。これが現状のパフォーマンス低下原因となっている。

 特に、Linuxネイティブアプリの表示で利用しているイメージ(テクスチャ)更新機能における非効率な実装や、3Dカーソル移動時における多量の一時オブジェクトの生成が主だった問題である。Java 3Dのチームは、これらの問題をJava 3Dの次期リリースであるバージョン1.4で解決する計画としている。JavaOneではJava 3D 1.4のベータがリリースされる予定であり、LG3D 0.7はその上で稼動することになる。

 加えて、X11インテグレーション、特にイベント処理周りの大幅な書き換えによる品質向上と、JavaOneデモ開発に向けた機能の追加が行われる予定だ。コミュニティーによるより多くのLG3Dアプリの開発とそのバンドルも期待されている。

JavaOne、そして「Duke's Choice Awards」

 バージョン0.7の発表に加えて、JavaOneにおけるもう1つのLG3D関係の目玉は、「Duke's Choice Awards」である。

 「Duke's Choice Awards」とは、毎年JavaOneで発表される賞で、Javaを利用した最も革新的なプロジェクトに対して授与されるものだ。その募集要項をよく見ると、サンのCEOであるScott McNealy談の引用が目を引く:

"This year, I also look forward to award a Duke's Choice Award to the most creative Project Looking Glass application(今年は、最も創造的な Project Looking GlassアプリケーションにDuke's Choice Awardを授与することも楽しみにしている)"

 応募の締め切りは4月末である。既にLG3Dアプリを開発されている方々、また何かアイデアを持っている人は、ぜひともこの機会にチャレンジしてみてはいかがだろうか。多くの挑戦的なLG3Dアプリを目にするのを楽しみにしている。

最後に、プロジェクトリードから

 LG3Dは、過去20年間本質的に変わっていないデスクトップの革新と、その革新を密室ではなくオープンな環境でコミュニティーと共に行うという、2つの大きな目標も持ってスタートした。

 活動は順調に進展しており、JavaOneでの次期バージョン発表や「Duke's Choice Awards」を控え、さらに盛り上がりを見せる気配だ。プロジェクトリードとしてコミュニティーの方々の貢献には、ただただ感謝の思いでいっぱいである。コミュニティーの交流の場であるディスカッションフォーラムには、お互いを助け合う雰囲気が浸透しており、大変うれしく思っている。

 最後に今後の活動について簡単に触れておこう。開発活動としては、バージョン0.62をリリースして一息つく暇もなく、前述した6月末のJavaOneでの発表と、同時期に予定しているバージョン0.7リリースに向けて準備を進めている。

 JavaOneでは、新しくひとひねりを加えたLG3Dデモをご覧にいただけるよう、今まさに開発チーム一同で頭をひねっているところである。是非ともご期待いただきたい。

 コミュニティー活動において特に注力していきたい点は、LG3Dアプリ開発と他言語へのWebページ翻訳促進である。LG3Dコミュニティを創造力あふれる世界中の技術者、研究者の交流の場へと育てていきたい。そのためにも、今後とも教育関係の方々と研究活動での利用に関し、積極的に話をしていこうと考えている。

 大幅な強化が図られたバージョン0.62のリリースを契機に、ますます多くの人にLG3Dを使ってもらい、より洗練されたデスクトップを目指してコミュニティーと共に開発を進めていきたいと思っている。読者の参加をお待ちしております。

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