プロプライエタリ・ソフトウェアに学ぶ新規ユーザー獲得法Magi's View(1/2 ページ)

オープンソース・ソフトウェアの利用を促進するにはどうすればいいか。アップルのiLifeなどについて考えることで、問題の本質がどこにあるかを明らかにする。

» 2005年04月19日 19時01分 公開
[Kris-Shaffer,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 最良のものが最大の人気を集めるとは限らない。品質の劣る製品が多くの、ときとして絶大な人気を博すのはよくあることだ。しかし、だからといって、市場の多くを獲得するために、品質の追求を犠牲にしなければならないわけではない。だから、オープンソース・ソフトウェアを支持する者として人気を求めたりプロプライエタリ開発者に学ぶことを忌避すべきではない。正しい例を参考にすれば、品質の追求を犠牲にすることなく、オープンソース・ソフトウェアの利用を促進できるのである。

 独占会社のない市場でアプリケーションが人気を集める秘訣は、次の3つだと思われる。すなわち、何らかの意味でクールあるいは魅力的であること、取っつきやすいこと、習慣性があること。こうした特性を備えているアプリケーションでなければ、ほとんどの平均的ユーザーは現状に固執し、新しいアプリケーションを使おうとはしない。実際、多くのユーザーは、自分のコンピュータにあらかじめインストールされていないプログラムなど、決して使わないのだ。しかし、魅力的で設定しやすく手放したくなくなるようなアプリケーションであれば、平均的ユーザーを、現状維持という障害を乗り越えて使ってみようという気にさせることができる。そして、そのようなアプリケーションが数本あれば、一般の人々の間に、オープンソース運動全般に対する強い関心を喚起できるだろう。

 Konfabulatorというアプリケーションがある。仕事に使っているPCにインストールして以来、わたしは何人もの人から、どこで手に入れたのかと問われ、インストールを手伝ってくれないかと頼まれた。目を引くデザイン、楽しさ、設定変更が容易、小さいけれどほかでは得られない便利さを持っているアプリケーションである。

 しかし、FirefoxやOpenOffice.orgのような地味なソフトウェアとなると、Konfabulatorの入手方法を聞いたその同じ人物が使ってみようともしないのだ。こうしたアプリケーションは使えば役に立つはずだが、今使っているWebブラウザとオフィス・スイートに十分満足しており、乗り換える必要性を感じないのである。

 クールなアプリケーションあるいはOSが一般の人々の目を捉えたとしても、覚えるのが面倒だったり使うのが難しかったりすれば不興を買うだけである。インストールができなかったり設定が困難だったり、今持っているデータがほとんど使えなかったりすれば、一般の人々の大部分は使うのを諦めてしまうだろう。インストールの手順を簡単にし、分かりやすい説明書をつければ、新規ユーザーの獲得に大きく近づく。

 しかし、本当に普及を目指すなら、アプリケーションに習慣性がなければならない。「一度使ったことがあるけど、結構クールだよ」と「もう手放せないね」の違いは大きい。ユーザーをして、本当は複雑なアプリケーションの使い方を覚えさせ、友人たちに使用を勧めさせるのは、後者のようなアプリケーションなのである。

iLifeの場合

 オープンソース・アプリケーションは、安定性や機能で勝ることが多いが、常用ユーザーを獲得する能力ではプロプライエタリ・アプリケーションに劣る。例として、大評判のMacintosh用プロプライエタリ・アプリケーション・スイートiLifeを見てみよう。iLifeは、音楽クリップや写真やビデオを作ったり取り込んだり保管したり買ってきたり編集したりするアプリケーションだ。世界最大のオンライン・ディジタル・ミュージック・ストアやあまたあるストリーミング・オーディオ・ソースにもアクセスできるし、自分のライブラリに保管してある写真のプリントを発注することもできる。

 iLifeが人気を博しているのは、すべてのMacにプレインストールされているからだけではない。単純なインタフェース、直感的にわかりやすく配されたメニュー、アプリケーション間の完璧な連携、合理的なデフォルト設定。こうした配慮により、初心者でさえもiLifeを存分に使いこなせるからなのである。初めての人でさえ、数分もあれば、ビデオカメラの映像を取り込んだり、画像や歌のコレクションを作ったり、それをDVDに焼いたりできるのだ。

 それだけではない。そうした各種形式のコレクションを保管する場所としてライブラリが用意されており、直感的で気の利いた方法でコレクションを整理できるし、あらゆる形式のデータを集中管理し複数のラベルを付けることもできる。そのラベルは、iLifeからもFinder(Appleのファイル・マネージャー)からも検索でき、どちらにもインクリメンタルに検索できるバーが付いている。どのような形式のデータであろうと、iPodやオンライン・アカウントと同期が取れ、編集もでき(iLifeまたはほかのプログラムで)、標準ファイル・フォーマットあるいはCDやDVDに書き込むことができる。付属するテンプレートは気が利いており、ドラッグ&ドロップで操作可能。初心者でさえ、数分もあれば見事な作品を完成できる。その上、iLifeアプリケーションは、Macのデフォルト・デスクトップ上にあるDockからクリック1つで容易に起動できるのである。

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