総論2:SEの生命線は顧客満足思考ユニクロの業務改革に見る(2/3 ページ)

» 2005年04月26日 17時42分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 むしろ、もっと上流のSEやITコンサルタントが描いた初期のシステム設計に問題があったのではないか。突発的な要件に都度対応させられることほど、下流で待機するエンジニアにとってつらいことはないだろう。使う側である顧客の立場になって考えれば、未来の拡張性などを考慮し、何かしらの手を打つことができたはずだ。

 設計の段階で破綻したシステムが、そのまま上手に回ることはあり得ない。これは、方向性の問題であるため、多少稚拙なたとえを使っても分かる。たとえば、電車で、東京から北海道へ向かおうとする人が、誤って大阪行きの新幹線に乗ったらどうなるか。名古屋あたりで「どうもおかしい」と気づき、下車して、東西南北を彷徨ったとしても、決して北海道に着くことはない。唯一の選択肢は、新幹線に乗って一旦東京に戻ること。つまり、システムで言えば作り直しだ。

 だが、予算や期間の関係で作り直しもできないとき、SEやITコンサルタントは、「悪魔の囁き」を耳にするようだ。そして、不本意ながらも顧客に小声でこう話す。「スキーは新潟でもできます」「カニよりも広島の牡蛎の方がうまい」など。システムで言えば、スコープの大幅縮小によるカットオーバーを意味する。つまり、システムの方向性を間違えてしまった瞬間アウトであり、いくらプログラム言語や下流の設計手法を身につけていても、なす術がないということになってしまう。

 この結果、苦しむのは顧客企業だけではない。システム導入プロジェクトには、初期の設計が未熟であることのトバッチリを受けて、毎晩毎夜の苦労を強いられているSEやプログラマーがあまりにも多い。

 ロバートスクリプトについて、今も時々システム開発に詳しい人に尋ねることがある。反応と言えば、「どこもそんなもんですよ」「失敗事例の典型」「設計ミスじゃないの?」といったもので、特に驚きはないようだ。そのときと比較してテクノロジーが進化した2005年の今も、現場の状況は大して変わっていないことになる。そこで、「SEの苦悩」は重々承知の上で、あえて、SEマインドを問うてみたい。

 果たして、多くのSEは企業の情報システムを最適化することに、心から責任を感じているのだろうか。「マインド」とはすなわち「心」。SEの心は、当然だが、常に顧客満足になくてはならない。

ユニクロの業務改革に見るシステム部門のあり方

 ユニクロを展開するファーストリテイリングは、自社の業務改革においてRetekを導入したことで知られる。Retekは、先日米Oracleと独SAPが争い、Oracleが買収することになった小売業向けパッケージアプリケーションだ。

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