オフショア開発のメリットはやはり人件費の節約にあるが、最近は上海・北京、またバンガロールでもIT労働者の賃金は上昇傾向にあり、中国ではより人件費の安い西安、南京、杭州、成都など地方へ拠点が移っている。インドの場合も地方化が始まっているが、質が高くコスト競争力のあるIT労働者を提供できるように2008年までに200万人規模の技術者増員(2003年は81万人)を実現すべく教育体制の充実が計画されている。なおインドは中国より若干賃金水準が高いと言われる。
ソフトウェア・プロセス成熟度モデル(CMM)については、最近中国でも本格的な取り組みがおこなわれているが、レベル5を達成したのは東軟集団など6社のみである。一方インドでは、73社(2004年)にのぼっている。ちなみにTCSは2004年に世界で始めて全社的統合プロセス改善(CMMI)の最高位(レベル5)を達成した。
中国はオープン系技術ではインドと遜色はないものの、メインフレームの知識には弱い。全般的な技術力ではインドに差をつけられているが、近い将来中国がインドの水準に追いつく可能性は高い。
中国が受注する開発規模は概して小さく、大規模プロジェクトの経験が浅い。従業員規模がトップ企業でも数千人程度で、インドのように数万人規模の企業は無い。インドの大手ITベンダーに対しては、大規模プロジェクトを丸投げできるが、中国企業ではまだ無理だと言われる。これは主にプロジェクト・マネジャーが大幅に不足しているためである。高度な管理者レベルIT人材に関して、中国はインドの研修・教育ノウハウの活用を考えている。実際、インドのIT研修コースは中国でも人気が高い。
インドは金融、通信、医療などの分野のIT技術を得意としており、他方、組み込みなどハードウェア関連分野は中国が得意とする。しかし、テキサス・インスツルメントはインドをシリコンデザイン分野の開発拠点と位置づけるなど、今後インドも組み込みソフトウェアを強化する方向にある。また最近急速に伸びているBPO(業務プロセス改善)分野では、圧倒的にインドが強い。
機密保持や知的所有権保護の体制、法整備については中国と比べてインドの方が数段優れている。他方、ビジネス指向性、ITインフラ、地政学的問題、税制上の優遇措置といった分野では中国の方が優位といわれる。ただしIT優遇政策に関していえば、印中は遜色ない。
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