「IT投資は抑制されていく」――その理由は?ITは経営戦略の実現に貢献しているのか(1/3 ページ)

特等席を失うと言われるIT投資、その背景を探る。(特集:顧客満足度ナンバーワンSEの条件)

» 2005年05月09日 01時57分 公開
[大野隆司(ヘッドストロングジャパン),ITmedia]

  大野隆司 (ヘッドストロング・ジャパン プリンシパル)

 前回は、今後の企業のIT投資が、あくまでも戦略を実現するための企業活動であるオペレーション投資における、構成要素の1つという考え方になっていくという結論を述べた。

ITへの感度を上げる

 ただし、これはITの価値を過小評価するものではない。確かにITは「1つの構成要素」ではあるものの、いまやITのサポートなしにオペレーションを最適化することは難しく、ITが多くのオペレーションの優劣を規定することが多いのも事実だ。企業はオペレーションの構築において、ITについての感度をより上げていくことが必要となってきている。

 また、設備投資におけるITの比重が高くなってきていることも企業の意識を高めている大きな要因だ。マクロなデータではあるが、民間設備投資総額のうち、IT投資額は21世紀に入り既に20%を超過している。

 さらに企業の外部への説明責任の必要性の高まりもあいまって、IT投資を適切にマネジメントすることが強く求められてきている。システム構築の失敗による大幅な予算超過により、財務パフォーマンスに悪影響が及ぶことはむろんのこと、今後は不要なIT投資、すなわち競争優位の確立に貢献を見出しにくいIT投資についての経営責任を問うケースも増えてくるだろう。

 確かに、コンサルタントとして企業の経営会議などを見ると、マネジメント層がITの検証や議論に割く時間はまだまだ少ない。だが、アプリケーションにせよ、技術インフラにせよ、かつてのようにITに対して奇跡を生み出す魔法であるように過剰な期待を誤って抱くような雰囲気や誤解はなくなってきている。一方で、ITをことさら無視することもなくなってきている。

 企業の多くは、人材、設備、のれんなどと同レベルの要素、すなわち経営のインフラとしてITをどのようにマネジメントしていくべきかについて、真剣に検討し始めているし、新しいITのマネジメントのあり方についてのコンサルティングを相談されることが急激に増えてきている。

 以降、IT投資に関する方向性・近未来の動きを解説するが、根底に流れる考えを言っておけば、ITが経営のインフラとしての地位を確立すればするほど、ITに対する聖域的な扱いはなくなっていくということである。

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