「Office 97の惨事」は繰り返されない?

Office 97ではファイルフォーマットの変更で多くのユーザーがひどい目にあった。次期OfficeではXMLフォーマットへの変更が行われるが、悲劇が繰り返されないと期待できる理由はある。

» 2005年06月06日 12時44分 公開
[eWEEK]
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 人生においては、できるだけ遅らせるべきことがある。そのうちの2つは、皆さんも既によく知っている――死と税金だ。そして3つ目はあまり知られていないが、私たちにとってはむしろ見送りたいものだ。もっとも、いつかは追いつかれてしまうのだが。

 ここでお話しするのは、ファイルフォーマット、特に広範に使われているファイルフォーマットの変更についてだ。こうした変更は、うまく事を運ばなければ、小さなものでも大きな問題を生み出しかねない。確かにこれは命に関わることではないけれど、どうしても開いてくれないファイルを目の前にしたユーザーは、そいつら――あるいは、むしろMicrosoftのプログラマー――の死を願ったことがあるはずだ。税金の面について言えば、ファイルフォーマットの大きな変更を管理するコストはかなりのものだ。

 私の言うことが信じられないという人は、Office 97の大惨事を経験しなかったのだろう。Office 97では予想外のファイルフォーマットの変更が、ほとんどのOfficeユーザーに巨大な互換性問題を引き起こした。Microsoftがこの互換性問題を消し去るには何年もかかったが、同社はついにこれを解決し、それから私は幸せな暮らしを送ってきた。

 それは少なくとも今朝、Microsoftが来年後半にOffice 12をリリースするときにファイルフォーマットを変更するという計画を知るまでのことだ。Microsoftがくだらないプレスリリースを発行することはめったにないが、私はこのフォーマット変更について説明するリリースは、とんでもなくくだらないと思う。それはこんな書き出しで始まる。

 「2005年6月2日、ワシントン州レドモンド発――顧客に新たなレベルのデータ相互運用性をもたらし、業界すべてのテクノロジープロバイダーに新たな市場機会をもたらすため、Microsoftは本日、Microsoft Officeの次のバージョン(現在は『Office 12』というコードネームで呼ばれています)で業界標準のXML技術をデフォルトファイルフォーマットとして採用することを発表しました」

 私にとっては、このリリースのどこをとっても良いことだと確信できる部分はなかった。Microsoftがフォーマットの変更でOffice 97の時と同じくらいひどい失敗をすることはないだろうというぼんやりとした暖かな気持ちにもならなかった。私としては手持ちのコンピュータの間でのOffice文書共有を可能にすることほどには、「新たな市場機会」を必要としていない。XMLに関して言えば、ほとんどの人はまだ「シャツのサイズにしては変だな」くらいに思っている。

 このリリースに書かれていたのは、要するに次のような内容のはずだ。

 「みんな腰を落ち着けてリラックスしたかな? よし、ビルおじさんがニュースを持ってきたよ。悪いニュースじゃあないけれど、覚悟して、そして理解してほしいことだ。いやいや、別にみんながひどい目に遭わされることはないんだよ。1年先のことなんだけど、Word、Excel、PowerPointのフォーマットが変わるんだ。でも、全然大変なことじゃないってビルおじさんは約束するよ」

 このニュースリリースを読んだ後、Office 97の惨事を体験した数人の友人に電話をした。この変更がそう遠くないうちに実施されるというニュースを伝えて、彼らの反応を見たかったのだ。ある友人にはMicrosoftのリリースを読み上げてやり、別の友人にはソフトにした私のバージョンを聞かせた。そちらのバージョンの方が評判は良かった。信じてもらえたかどうかは分からないけれど、このニュースのショックを和らげたことは確かだ。仲間内にはこの変更を特に楽しみにしている人はいなかったようだ。

 しかし、2006年が1997年の過ちの繰り返しにならないと期待できる理由はある。今回のリリースとその後に読んだ取材記事からすると、Microsoft幹部らはOffice 97から教訓を得たようだ。あるいは、少なくとも彼らはもっともなことを言っている。

 まず、Microsoftはやろうとしていることと、その理由とメリットを1年かけて顧客に通知し、説明しようとしている。私が見たところでは、ファイルフォーマット変更には素晴らしい理由があるが、それが正式発表される来週のTechEdで聴衆のざわめきを聞くのはおもしろいだろう。

 同社はファイルフォーマットの変更は苦痛がなく、「.doc」のようなフォーマットの名称に「x」が付く――XML世界では「.docx」となる――こと以外に目に見える変化はないとまで主張している。この移行を達成し、後方互換性を提供するために、同社はOffice 12でレガシーフォーマットをサポートし、Office 2000/XP/2003で新しいフォーマットを読み書きできるようにするアドインを提供すると約束している。

 それでもMicrosoftは新フォーマットに移行する顧客がすぐに受けられる具体的なメリットを示さなくてはならない。IT組織はXMLの驚異、セキュリティの向上、ファイルサイズの削減に引かれるだろう。ストレージコストの大幅な節約につながる可能性があるからだ。しかし、Longhornでメタデータファイル検索のためにユーザーが作ることになるメタデータにより、この効果が相殺されるかどうかを考えなくてはならない。

 だが新フォーマットのメリットは、ユーザー世界の人々には通用しないかもしれない。この世界ではXMLは理解、追求はおろか、まだほとんど注目もされていない。XMLはユーザーが実際に理解しなくてはならないものなのかは私には分からないが、仮に新フォーマットが成功した場合に、その計画に明らかなユーザーへのメリットが入っていたら素晴らしいことだ。

 Microsoftが新ファイルフォーマットのための宣伝活動を行い、皆にこのフォーマットの採用を求める前に、同社の取り組みを見る機会を与えることは期待していいだろう。

 その間に私たちは、彼らがOffice 97の教訓を正しく学んだのか、XMLが平均的なOfficeユーザーに現実的なメリットをもたらすのかを見極めることになる。その結果がどうなるのか分からないが、今のところ、Microsoftはいいスタートを切ったように見える。

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