どうなる? オープンソースのコミュニティー(3/3 ページ)

» 2005年06月13日 18時30分 公開
[Matt-Asay,japan.linux.com]
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Microsoftとコミュニティー

 そしてやはり話はMicrosoftに進む。Microsoftはオープンソース・コミュニティーに関与しない企業のひとつだが、それでもオープンソースに大きく貢献し、またオープンソースから多くを得ているのは間違いない。LinuxはWindowsのライバルであり、Windowsに従っているわけではない。よって、オープンソースはMicrosoftのライバルと言える。オープンソースはプロセスであって、物ではない。前回わたしが調査したとき、Microsoftは十分に優れたプロセスを実現しており、開発手法の効率について何の問題も見あたらなかった。

 ひとつ提案がある。Jason Matusowにも年末にOSBC Boston(2005年11月1-2日)でこれを発言するよう勧めたところだ。Windowsは世界で最も広く普及したプラットフォームだ。現時点でおそらく、インターネットと同じかそれ以上だろう。はっきり言って、ネットを常時使用する人の数が、Windowsユーザーの数を上回るとは思えない(ダイヤルアップ回線を含めればそうでもないかもしれないが)。堅牢なオープンソース・コミュニティーを、WindowsやInternet Explorerで育ててみてはどうだろう。内部で開発した機能ではなく、外部プロジェクトの成果である機能をWindowsやIEに追加し、ユーザーに提供するのだ。

 オープンソースプラットフォームのデフォルトは、なんと言ってもLinuxとFireFoxだ。これはすでに実証済みである。クローズドソースのソフトウェアで使用する場合でも、たとえば、Firefoxの利用者数は徐々にIEに近づいている。今年のDEMOカンファレンスで、Firefoxが使用されずIEで行われたデモを見た覚えがない(もちろん、デモはすべてIEでも動くが、Firefoxが使用され、IEは登場しなかった)。オープンソースプラットフォームはマインドシェアを獲得しつつある。これが重大なマーケットシェアに変わるのは時間の問題だ。

 確かにWindowsは現在でも王者だ。しかし、この繁栄は衰え始めているように思える。あの極めて保守的な企業が衰退しているのではなく、利用者がWindowsから離れつつあるのだ。わたしが自分のコンピュータ(Windows、Mac、Linuxが揃っている)で好んで利用しているアプリケーションは、ほとんどがオープンソースである。オープンソースだから使うのではなく、品質が良いから使っているのだ。FirefoxからVLC(何でも処理可能なメディアプレーヤ)に至るまで、わたしのデスクトップはオープンソースの独壇場のようになってきている。電子メールクライアントの「オフィススイート」機能もますますの充実振りだ。Microsoftとはほとんど縁のない生活をしており、自分から使おうとは一切思わない。

 Microsoftがユーザー離れを食い止め、今あるユーザーのためにユーザー体験を向上したいなら、WindowsとIEをオープンソースイノベーションのブリーディング場とするよう助成すべきであろう。そのような場をなぜLinuxに譲ってしまうのか。あるいは、オープンソース開発者が自分たちの道をWindowsに見出し、WindowsとIEを利用するとでも期待しているのだろうか。だとしたら、Microsoftは自ら痛みを伴わない打開策をとりながら、具体的な利益を得ようとしているわけだ。オープンソースは敵ではない。チャンスだ。

 仮に、オープンソース・コミュニティーにMicrosoftの入る余地があるとすれば(いや、あるはずだ)、コミュニティーが急激に拡大していることを心配するのは、オーバーなのかもしれない。だが、これからコミュニティーに参加するのであれば、まず何に貢献できるかを第一に考え、何を頂戴しようかなどとは考えないで欲しい。コミュニティーが平均して(利益だけを持っていくのではなく)貢献を果たしている限り、どれだけ拡大しようと、あるいはMicrosoftが参加しようとも、尽きることはないはずだ。

Matt Asay: ITMJの定期寄稿者。NovellのLinux Business Officeに所属し、同社のOpen Source Review Board委員長を務める。Novell外部を含むオープンソース全体の恩恵を説き、Novellのオープンソース戦略の策定にも力を貸す。また、Open Source Business Conferenceの共同設立者でもある。

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