「ソフトウェア買収戦略はうまくいっている」と勝利宣言――米EMC

「勝利宣言をしたくはないが、ソフトウェア買収はうまくいっている」と、米EMCは買収を中心にした最近の戦略がうまく機能していることをアピールした。

» 2005年06月17日 14時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 1990年代、ハイエンドストレージシステム「Symmetrix」で成長を遂げた米EMC。多くのストレージベンダーがそうだったように2000年始めに市場低迷のあおりをもろに被ったが、リストラと積極的なソフトウェア買収戦略により10期連続で成長を遂げるなど、近年その存在感を増している。

 EMCは米国時間6月15日、世界各国のプレスを本社に集めプレス説明会を開催した。古都ボストンから北西へ40Kmほど、ボストンマラソンのスタート地点としても知られる緑の豊かなホプキントンに本社を構えている。

マーク・ルイス氏

 「まだ勝利宣言をしたくはないが、当社のソフトウェア買収はうまくいっている」――EMCの上級副社長チーフデベロップメントオフィサーのマーク・ルイス氏はプレスに向かってこう説明した。同社が大きく成長している背景には、2003年から相次いでいるソフトウェア企業の買収戦略がある。2003年には、バックアップソフトのLegato、コンテンツ管理のDocumentumを相次いで買収。2004年にはVMware、Dantz、そしてネットワーク管理のSMARTSも手にした。

 ソフトウェア企業の買収は、隣接する市場への進出による市場規模の拡大と、ストレージハードウェアへの依存度を大きく引き下げた。今では売上げのほぼ半分をソフトウェア・サービスから上げる。単なるストレージハードウェアベンダーから、顧客の持つ情報の価値を最大化するためのソリューション企業へと変化を遂げている最中にある。

 それを顕著に表しているのが、ILM(情報ライフサイクル管理)戦略だ。EMCがILMを言うようになってからというもの多くのストレージベンダーが同様のコンセプトをうたうようになったが、カスタマーオペレーション担当上級副社長のデービッド・ゴールデン氏は、「ILMはストレージプラットフォームだけでは意味がない。アプリケーション、インフラをもカバーしなければならない。これは情報を中心にした戦略なのだ」と差別化する。

 買収戦略を財務面で強力にサポートするビル・チューバーCFOは「どの企業やどの分野とは言えないが、今後も戦略的な買収を行っていく」とし、買収によって積極的にILM戦略を補強していくという。

管理の簡素化とソフトウェアの統合

 すでに階層化ストレージの採用と単一アプリケーションの限定的なILMを実現している企業は出始めてきた。しかし、将来的には企業規模でのILMを具現化が必要となる。そのため、EMCでは現在、異なるストレージプラットフォームの管理の共通化、手に入れたソフトウェア製品のインテグレーションなどに取り組んでいる。

 ルイス氏によると、来年にはSymmetrixやCLARiXで共通化されたアレイの管理を「Control Center」から可能にするほか、ネットワークを含めたインフラ管理の簡素化に対してはSMARTSを投入し、サーバやアプリケーションまでを横断的に関連付けて障害の特定、自動的な復旧を可能にしていくという。また、LegatoのEmalXTenderとDocumentamの統合を図り、情報の管理も単一のリポジトリにポリシーを適用することで行えるようにする予定だ。

 5月には、同社の仮想化技術となる「Invista」も正式発表し、スイッチ上に動的なボリューム管理、データのレプリケーション機能を持たせることで、ストレージの変更をアプリケーションに影響をもたらすことなく行えるようにしてもいる。ストレージベンダーの中では仮想化技術の投入が最も遅れたものの、「これが正しいアーキテクチャだ」(ルイス氏)と、アウトオブバウンドによるアプローチをアピールした。

 Invistaは、SANスイッチを100ポート以上利用する環境に向いており、大規模なSAN環境を展開する顧客企業に向けの製品と位置づけられる。

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