高広 活きてくるでしょうね。ただし、日本と米国のBlog環境の明らかな違いがあって、日本のBlogでは書く人が有名人か一般人かという大別してその2つになると思います。ところが米国などのBlogを見てみると、新聞に記名記事を書いているジャーナリストが個人のメディアとして使っていたり、消費者団体が消費者視点から商品を批評するコンシューマリポートの延長線としてオピニオンが語られる場として使っているわけです。
日本では今後、企業としての利用が増えるんでしょうね。例えば神奈川新聞や夕刊フジがWebサイトをBlog化したように、現存のWebサイトの置き換えを中心にして、さまざまなBlog採用が活性化していくと思います。
結局のところBlogというものは、XMLとCSS、RSSに支えられている技術にすぎませんし、今後は、その上に乗るコンテンツや仕掛けででどのような使い方ができるかを模索するという段階に入ってきますね。
ITmedia 国民性と言われましたが、日本人は発言し慣れてない、といったことが関係している?
高広 Blogは、日本人に「発言する」という環境を作ってくれたのだと思います。従来からもホームページ作成サービスは多数ありましたが、これほどまでBlogが人気となっている理由は、2ちゃんねるや価格.comといったコンシューマが自ら情報を掲載するサイトの影響もあると考えています。このようなサイトでは匿名性の高さを維持し、活気のあるメディアとして確立されています。
これらのメディアが出てきた結果、「発言する」ということ、個人の発言に耳を傾けることに慣れてきているんだと思うのです。またネット上でいう「発言する」は、「書き込む」ということとイコールですが、これもケータイやPCによるメールのやり取りで「書き込む」という文化が形成されていますし。ネット文化が一般化する背景とBlogは時代に非常にマッチしたのだと思います。
Blogの可能性は、今まではFace to Faceで名刺交換をした間柄でしか会話ができなかったものを、自分の経験であったりオピニオンをネット上で公開することで、コメントやトラックバックを通じてその人のネットワークを拡張してくれるところだといえます。その結果、パーソナルの枠を超えていろいろな仕事へとつながるなど、機会が増えることもあるわけです。そうするとコミュニケーションの輪が拡張されていくわけですね。
ITmedia 最近、アフィリエイト=Blogといった側面もよく見かけます。公開の容易さがBlogによる広告の乱立になる実情をどのように考えていますか。
高広 それはBlogだけに限らず、クチコミマーケティングをプラニングする際によく出てくる話です。押し付けがましく人を売るタイプのマーケティングは絶対にうまくいきませんし、倫理的に攻められます。
この記事を書いてくれたら、あるいは、この商品を売ってくれたらアフィリエイトでいくら支払いますというアプローチではなく、アフィリエイトがなくてもブロガーがその商品の情報について書いてくれるような環境作りこそが広告会社の仕事です。その結果、アフィリエイト収入を得るブロガーにとっても商品について書きやすくなる環境ができるんだとお思いますね。「売り上げにつながることをしてくれたらお礼をする」という“トレードオフ”が成立する、コンシューマと企業のマッチングビジネスが成立する場所、そのひとつにBlogがある、ということでしょう。
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