サンはOpenOffice.orgコミュニティーをどう見ているのか?Interview(2/5 ページ)

» 2005年06月27日 08時46分 公開
[聞き手:可知 豊、木田佳克,ITmedia]

高松 大口の顧客に大量に入るという傾向は、サンが狙っていたところです。

石村 ドイツやヨーロッパでは、StarOfficeは従来から人気がありましたし……。

高松 ヨーロッパでは、Linuxもそうですが、オープンソースが伸びる土壌が整っているという感じがします。

 一方で、ソースネクストといっしょにコンシューマー向けのパッケージを作ったのは日本だけなのです。ワールドワイドで見れば、それが突出して目立ちました。それがきっかけとなり、米国が追従の動きを見せたのです。コンシューマー向けのパッケージを作り、日本と1年程度の遅れで販売を始めました。この背景からも、StarSuiteという製品では日本がリーダー的な動きをしています。

オープンソースに対するサンの取り組み

可知 StarSuiteには、オープンソース版といえるOpenOffice.orgがあるわけですが、ビジネスとして特別な違いはありますか。

高松 オープンソースのコミュニティーで作られているバイナリーは当然ですが無料で出回ります。すると、OEMライセンス契約という展開が非常にしづらいです。サンとしては、ユーザーサポートを付けて、機能を付加するという形にし、さらには購買企業のイメージも維持させつつ良い商品としてマーケットに出すことが使命です。しかし、そのためにはコストがかかるので、多少の値段を付けさせていただくわけです。しかし実際のところ、エンドユーザーにしてみれば、無料で入手できるのか、1,980円なのかはそれほど大きな差として感じられないかもしれません。

 たとえばTurbolinuxに永久ライセンスを提供します、という話になったとすれば、ディストリビュータから見るとライセンス料が莫大な額になってしまうわけです。その見解からどちらを選ぼうか? という話は、世界中で問われています。サンとしては、StarSuiteを選択してほしいという事情がありますが、金銭が関わると即Yesとは言ってもらえないですよね。サンは、OpenSolarisを始めましたが、この場合にも同じようなケースが出てくるはずです。真に考えていかなければならない点です。

 ただし、OpenOffice.org、StarSuite(StarOffice)も同じひとつのタネから生まれてきている物なので、それを大きくひとつに捉えることが重要であり、ほかのオフィススィートとの対抗軸を明確にできることの方が重要だと考えています。

SunRayによる企業のデスクトップへの関心

可知 デスクトップ製品を販売するにあたり、サンとしてのビジネスの違いがありますか。

高松 まず、デスクトップ環境のマーケットについては、マイクロソフトを中心にして広がっている状況があります。世の多くの人はWindowsを使っています。デスクトップのインタフェースか、使いやすくするためのデバイスの充実、この観点はWindowsを中心に作られています。

 その中でサンは後発です。すでにあるさまざまな製品やサービスに対し、不便なところがあればどのように解消すればよいだろうか? という提案をする形になります。しかし、デスクトップ製品をエンドユーザー向けに作る/売るというノウハウは、私たちの中にはまだ十分には蓄えられていません。

 そのため、ユーザーの声を聞きながら修正し、オープンソースのコミュニティーの力を借りることで、より良い物へと仕上げるのが取り組みの真意なのです。このアプローチがいちばん早いと判断したわけですが、そのおかげで注目のある今に至っているのだと思います。

 デスクトップマーケットについては、本当に多くの苦労があります。サンの提案する物を、企業に賛成してもらえる段階まで営業が運ぶのはかなり大変というのが実情です。しかし、キッカケさえ得られれば「なるほど、それでは評価してみましょう、使ってみましょう」と話の流れ方が早いのも実感しています。そして何千台/何万台というオーダーへとつながっています。

 また、SunRayのようにシンクライアント製品が登場することで、かなりやりやすくなってきています。SunRayは、サーバーサイドですべての処理を行い、デスクトップのデータだけをクライアントサイドに飛ばす仕組みです。サンの社内ではすべての社員がSunRayを使っています。実際に使い、ビジネスが成り立っている状況を理解できれば、新たなデスクトップマーケットの可能性を感じてくれるのです。

 このため、最近はSunRayのようなデスクトップ製品が注目を集めていますし、実際に右肩上がりになってきています。Windowsとまったく同じ操作環境という製品ではないため、企業ユーザー向けの製品ということになりますが、まあ、健闘していると思います。

可知 ユーザーからの声を聞いて製品をより良くしていくという話がありましたが、その情報はどのようにしてサンに届くのでしょうか?

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