行き詰まるCiscoのsalesforce.com導入プロジェクト

JMPのアナリストは、Ciscoでsalesforce.comのシステムを大規模導入する計画が、エンドユーザーの抵抗などにより停滞していると指摘している。(IDG)

» 2005年07月01日 17時20分 公開
[IDG Japan]
IDG

 かつてCisco SystemsでホステッドCRMソフトの大々的な導入と見られていたプロジェクトが、今は、このプロジェクトの停滞を主張する調査会社の厳しい報告書の題材になっている。

 6月22日に公表された報告書で、JMP Securitiesのアナリストらは、salesforce.comのCRMソフトの導入が一時的に延期されたと示唆している。報告書によると、salesforce.comは2004年後半にCiscoと、最初に最大2000シート、2005年6月までに1万シートを導入する契約を結んだという。

 しかしエンドユーザーの抵抗と統合の問題により、この取引は再交渉が行われ、導入は延期された。現在、取引の完了は2006年3月に予定されている。

 これまでのところ、JMPによると、わずか1000シートしか配備されておらず、Ciscoは導入を見直す予定だ。

 JMPのアナリストの「デューデリジェンス」は、salesforce.comのシステムはテリトリー管理、高度なアカウント階層、予測などの望ましい営業ツールをサポートしていないため、Ciscoのエンドユーザーの間で支持を得るのが遅れていることを示していると彼らは話している。CiscoのITスタッフも、salesforce.comのソフトをそれらツールと連係させるのに苦労し、カスタマイズされたホステッドアプリケーションへの依存に疑問を抱いている。

 Ciscoはまた、変更管理とトレーニングに関して予想以上の問題に対処しており、その取り組みに予定以上のリソースを投じざるを得なくなっている。その結果、営業担当者はまだアクセス可能な既存の非ホステッドCRMソフトに戻っている。

 「最後に、業務リーダーシップの変更や、営業幹部の間に『新しいソフトベンダーのために仕事を混乱させる価値はない』という感覚があることから、salesforce.comサービスへの幹部の支持が弱まっているとわれわれは考えている」とJMPの報告書には記されている。

 Ciscoはこの報告書について口を閉ざし、「全般的な方針として、Ciscoはベンダーとの関係にはコメントしない」と語るにとどめている。

 salesforce.comは、この報告書に関するコメントを拒否したが、次のような声明を出している。「当社は常に顧客満足度に関してトップクラスにランク付けられている。それが今後も続くよう、Ciscoおよびほかの顧客との懸命の協力を続けていく」

 ほかのアナリストは、salesforce.comがたとえ中小企業での迅速な立ち上げとROI(投資回収率)でうまくいっていても、2000シート以上をサポートできるかどうか疑問だとしている。「salesforce.comのプラットフォームに悪いところはないが、この規模に合うCRMソリューションだとは証明されていない」と話すのはNucleus Researchのアナリスト、レベッカ・ウェットマン氏。同氏の意見は、29社のsalesforce.comの顧客に対する調査に基づいている。

 この調査に基づいて先月発行された報告書は、salesforce.comのソフトを使っている比較的大規模な企業は、たいていは1000シートを超えない部門レベルで導入していることを示している。

 しかしsalesforce.comは、Corporate Expressなどの大企業で大規模な導入を何度も成功させてきたと主張している。Corporate Expressは、salesforce.comのカスタマイズ版を営業や共同作業に利用している。

 「昨年、最初の2500ユーザーに迅速に配備できたことから分かるように、われわれの環境においてスケーラビリティの問題はなかった」とCorporate Expressのカスタマーケア・クオリティーシステム担当副社長マーク・ニューウェル氏は電子メールで述べている。

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