成功要因1:ITIL導入効果を見極めるITIL導入成功へのステップ(1/3 ページ)

はやりのITIL導入には多大な労力がかかるものだ。効果が得られるにはそれなりの年月がかかる。ITIL導入の成功にはこのタイムラグの間を管理できるかが1つのポイントとなる。

» 2005年07月04日 00時00分 公開
[川浪宏之(野村総合研究所),ITmedia]

 ITILの導入に当たっては、多大なる費用と労力がかかる。仮に、すべてのプロセスを対象にITILの導入を図ろうとした場合、自社要員の労務費や教育費、管理ツールのハードウェア・ソフトウェアの導入費、コンサルティング費を合算すると、一般的には数億円以上の投資が必要となる。

 また、これだけの投資を行なったとしても、直ぐにITILの導入効果を得られるわけではない。一般的なシステム投資案件と同様に、新たなプロセスが定着してから一定度のタイムラグを経て、初めて得られるものである。ITIL導入の取り組みを開始してから起算すると、このタイムラグは1年から数年に渡るだろう。

 ITILの導入効果を見極めることは、この多大なる投資に対する説明責任を果たすと共に、効果を得られるまでのタイムラグの間に、担当者が息切れすることなく継続的な改善を行えるよう、目的意識を明確化・共通化させる点で不可欠な取り組みといえる。

ITILの導入効果を図るには?

 ITILの導入効果とは一体何なのだろうか。サービスサポート、サービスデリバリに二分されるITサービスマネジメントでは、情報技術(IT)を顧客に提供するサービスとして捉え、ビジネスの視点にたってITサービスを適切に管理していくことを指向している。その効果としては、主に次の3つに集約できる。

  1. ITサービスの品質向上
  2. ビジネスおよびその顧客の要求レベルに適したITサービスの提供
  3. ITサービス提供に関わるコストの中長期的な削減

 ただし、これらの効果は同時並行的に得られるものではないので注意が必要だ。各効果には相互に関連性があり、効果が生まれるまでには順番がある。

 上記の3つの効果において、最初に得られるのは「ITサービスの品質向上」だろう。一般的なITILの導入に向けての取り組みは、従来担当者の暗黙知となっていたプロセス・ノウハウを可視化し、構成管理データベース(CMDB)などのツールを用いて情報を共有化することから始まる。担当者の属人性が排除され、プロセスの反復性と質が高まることから、ITサービスの品質向上が達成されるのである。品質向上による具体的な効果としては、発生するインシデント数の削減や、インシデントへの対応時間の短縮などが挙げられる。

 次に得られる効果は、「ビジネスおよびその顧客のニーズに適したITサービスの提供」だろう。これは、サービスレベル管理を通じて、ビジネスおよび顧客のITサービスに対する要求レベルを明確化し、要求レベルに応じてITサービスを適正化していくことで得られる効果である。SLAという、IT部門とユーザー部門との共通言語を設けることで、IT部門がユーザー部門の要求レベルを定量的に把握可能になり、ユーザー部門のIT部門に対する理解が促進され、ITサービスの適正化に向けた、両者間の信頼関係を確立することができる。

 最後に得られる効果が、「ITサービス提供に関わるコストの削減」だ。コストの削減は、システム運用品質の向上に伴う運用保守要員数の削減、サービスレベル管理を通じた過剰なITサービスの是正などにより、中長期的に期待できる効果である。

効果の波及モデル

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