成功要因1:ITIL導入効果を見極めるITIL導入成功へのステップ(3/3 ページ)

» 2005年07月04日 00時00分 公開
[川浪宏之(野村総合研究所),ITmedia]
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 波及モデル図の作成に合わせて、すべてのKPIに対して定量的な目標を設定することも重要である。前述した通り、ITILの導入効果を得るまでには長いタイムラグがある。最終的な「財務」の効果を得るまでには、最低でも数年程度は必要である。それにも関わらず、例えばITIL導入の効果を「システム運用コストの30%削減」と掲げたところで、果てしなく長い道程の途中で、恐らく担当者は息切れしてしまうであろう。

 担当者が常に達成感を感じながら、継続的に改善を図っていくためには、「インシデント件数の10%削減」や「インシデント平均対応時間の20%短縮」といった、比較的短期間で達成可能な目標(これをQuick Winと呼ぶ)を掲げることが重要である。

ITILはフルマラソン

 ITILの導入効果の見極めは、フルマラソンにおけるペースメイキングのようなものである。42.195Kmという長い道のりを走り切るためには、途中地点である10Km、20Km、30Kmにおける目標タイムをあらかじめ設定しておき、予定通りのペースで走れているのかを常に管理することが求められる。この目標タイムこそが、KPIの目標値に相当する。

 毎年または半期ごとにKPIの目標値を見直し、継続的にモニタリングし続けることで、目標達成状況や未達成時の適切な是正措置を施すことが可能となる。設定するKPIや目標値については、各企業の状況により異なるであろうが、定量的な指標なしにITILを導入することは、時計を持たずにフルマラソンに臨むのと同じくらい無謀なことである。

 現在、多くの企業で、プロセスの可視化や、構成管理データベースの導入など、ITILの導入に向けたさまざまな取り組みが開始されている。これらの取り組みは、目的を達成するための1つの手段にほかならないが、実際には多くの企業において、手段であるはずのITILの導入自体が目的化してしまっている。ITIL導入の取り組みを既に開始している企業においても、改めて目的を再確認し、今一度、その効果について真剣に見極め直してみてはいかがであろうか。

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