第1回 ITILはITサービスの救世主か?運用管理のベストプラクティス集「ITIL」とは何か?(2/3 ページ)

» 2005年07月04日 00時00分 公開
[西野弘(プロシード),ITmedia]

 ここで指摘しているのは、1つの会社の中でさえ事業部が異なるとそのやり方が違うというような、組織的な標準化と実践が行われていない状態のことである。あなたの企業でPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを基盤にした、組織的な進化の仕組みと人財の育成が行われているだろうか?

 またライフサイクルの視点とは、企画から発注仕様書を作成し、システムの調達を行い、発注側も受注側もそれぞれの視点でプロジェクトマネジメントを実施し、品質チェックを行ってから。実際の運用に入り、その運用を高度化して、いずれは廃棄かグレードアップをしていく一連のサイクルのことを指している。本来は、このサイクルをITベンダーも発注者と一緒になってきちんと推進すべきであるが、日本ではその多くは発注側が悪くいえば「丸投げ」をし、緊張感のない関係の中で一連のIT取得行為を行ってきたのが現実ではないだろうか。

 IT業界の出身ではない筆者は、その構造にシンプルな疑問を持っている。発注仕様書なるものをベンダーがすべて書いていたり、これだけテクノロジーが進化しているにもかかわらず、技術を学ぶことはできても発注仕様書の書き方の本もなければ、講座もないのが不思議でならない。

 行政であろうが企業であろうが、PCやサーバ、ルータが欲しくてIT投資を行う人はいない。ITを活用して行政サービスや事業を行うために取得したいだけなのである。言い換えれば、ITサービスを受けたいとうことである。つまり、ITサービスをどのように受けるかが最大のポイントとなる。

 IT業界の方に聞くと、ITILが日本に本格的に入ってきて、保守運用の担当部門やそこで働く人にはじめて「われわれに日が当たってきた」と聞くが、これは大変おかしな話だ。本来ユーザーが一番求める、安定した品質のITサービスにこれまで日が当たらないとはどのようなことであろうか? 先に書いたように技術の変化に日が当たり過ぎ、それを使いこなしてITシステムを構築する点ばかりに視点がいっていたせいであろう。

 ITILが日本に入ってきたことで、日本のユーザーとIT事業者にとって、今後のIT活用に大きな変化をもたらす可能性があると感じている。ITILが保守運用のマネジメントフレームであると紹介されるが、まさにITILは本来のIT取得の目的を達成するための重要なフレームワークの1つであると認識している。

保守運用での活用の仕方

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