Ottawa Linux Symposium初日リポート(2/5 ページ)

» 2005年07月27日 15時08分 公開
[David-,japan.linux.com]

 開発体系がこのように変更された結果、有用なパッチが主流のカーネル・リリースに取り込まれるスピードが速まり、またディストリビューターがリリースするカーネルは、カーネルの開発チームがリリースするカーネルに次第に近いものになってきた。

 Linuxカーネルの開発プロセスが進化した大きな理由の1つがBitKeeperの登場だとコーベット氏は言う。BitKeeperは、Linuxカーネルの開発プロセスにおいてソースコード管理システムが利用された初めてのケースで、このおかげでパッチの紛失が解消された。すべてがしかるべき場所に収まり、完全なパッチ履歴が導入された。

 2005年4月5日、BitKeeperの提供元が、フリー・バージョンのBitKeeperクライアントの提供を中止した。その結果、Linuxは、新しい管理システムを見つけざるを得なくなった。その2日後、トーバルズ氏がgitをリリースした(関連記事参照)。BitKeeperと同様の機能を実現する目的で手早く作成されたプログラムである。その2週間後には、カーネル2.6.12-rc3がリリースされた。これには、新たに作成されたgitの開発システムが全面的に利用された。

 コーベット氏のプレゼンテーションの途中で一時中断があった。gitの話の最中に、一匹のシマリスが乱入してきたのだ。全員の注目がそちらに集中した。シマリスはステージの前を走り回り、その写真を撮ろうとする人たちは立ち上がってその様子をうかがっていた。

 git以外の選択肢としては、mercurialもある。

Linuxの将来に関する予測

 Linuxの将来はどうなるのだろうか。その答えはトーバルズ氏でもわからないとコーベット氏は言う。コーベット氏の予測によると、次のカーネルは8月に登場し、Inotifyとkexecが含まれることになるという。前者は、ユーザー空間のアプリケーションに対してファイルシステムの変更を通知するためのシステムで、後者は、緊急の状況においてカーネルの中からカーネルをロードするためのシステムである。後者については、独立した別個のプレゼンテーションとして木曜日に取り上げられることになっている。

 コーベット氏は、プリエンプティブ・カーネルの説明や、近い将来のカーネルで対処すべきスケジューリング関連のさまざまな問題の説明にかなりの時間を費した。今後のカーネルでは、クラスタ・ファイル・システム、FUSE(ユーザー空間のファイル・システム)、ソフトウェア・サスペンド、デスクトップ・サポート、ビデオ・デバイス・サポートなどへの対処が行われるというのが同氏の予測だ。

 ビデオ・デバイス・サポートの面では、はたしてこれはXとカーネルのどちらの仕事なのかという問題について議論が続けられており、答えを出す必要がある。Linuxシステムのグラフィックス・カードの制御や設定はカーネルが行うべきだろうか。それとも、他のすべてのハードウェアと同様に、カーネルはドライバを処理すべきだろうか。

 セキュリティの面では、カーネルがセキュリティ問題に対して独自の関わりあいを持つことになる。信頼できるコンピューティング、すなわちデジタル著作権管理のサポートが、善かれ悪しかれLinuxカーネルに実装されつつある。

 このほか、対処が進められている問題の1つとして、メモリの断片化の問題についても指摘した。コーベット氏のスライド・ショーはLWN.netで見ることができる。

ブート時間やアプリケーションのロードを遅らせる要因は?

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