レガシー移行の選択肢は「オープン」だけ?

日本企業のレガシーシステムを構築してきた技術者が一斉に定年退職するといういわゆる「2007年問題」に注目が集まっている。解決策は必ずしもオープン化だけではないようだ。

» 2005年08月01日 19時59分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 日本企業のレガシーシステムを構築してきた技術者が一斉に定年退職するといういわゆる「2007年問題」に注目が集まっている。団塊の世代の中でも、最も人口が多いとされる1947年生まれの人が退職するという意味で、情報システムの枠を超えて、社会問題として扱われるケースも見られるようになってきた。6、7年前に多くの技術者を恐々とさせた2000年問題が、「20xx年問題」というフレーズに必要以上の力を与えてしまっているような気がしないでもないが、現実に2007年問題にぶち当たる企業ももちろん多い。

 一般には、メインフレームを中心とした手作りの情報システムを、ERPなどのオープンアプリケーションで再構築するというシナリオが典型的な対応策として取り上げられることが多い。だが、実際には、企業がレガシーシステムとして蓄積してきた資産も多く、オープン化が必ずしも有力な選択肢とは考えづらいケースもある。

既存資産を生かした東京堂

 東京の四谷で、ドライフラワーや造花を販売する東京堂は、以前のシステムが作りこみに作りこみを重ねた結果、「身動きができない」システムになってしまったため、再構築を検討した。また、FAXや電話での受注データの入力にかかる負担を減らしたり、オンライン受注を増やしていくことなども見据えたという。取締役で総店長の亀子貴之氏は、「当初はERPなどのパッケージアプリケーションの採用を考えたが、パッケージでは業務要件を満たせないことが分かってきた」と話す。

現在9.7%のネット受注率を上げて行きたいと話す亀子氏

 そこで同社は、iSeries上で自社開発することを決め、2003年1月に要件定義を開始し、システムインテグレータとともに開発を行った。RPGのベテラン技術者の開発知識と若手が持つ業務知識を有効利用する効果もあったという。

 「iSeriesを選んだのはRPGのロジックが明解であったこと、また、ロジックとGUIを分離できることを評価した」(亀子氏)

 そして、同社はiSeriesベースの基幹システムとの連携性を高めるためのプラットフォームとして、「C/S Bridge」と呼ばれるIBMのミドルウェアを採用した。C/S Bridgeは、既存の基幹システムの資産を利用しながら、GUIアプリケーション、Webアプリケーションの構築を支援するもの。オブジェクト指向によってプログラムを細分化したり、アプリケーションを効果的にGUI化できることが特徴となっている。

 東京堂ではILE RPGで690本、Delphiで205本、合計895本のプログラムが運用されており、それらをC/S Bridgeを用いて、GUI化、Web化したわけだ。

 同社の事例から見えることの1つは、iSeriesでシステムを構築している企業が、Webベースのシステムに再構築しようとした場合に、ロジックを新たに作り直さなくても、既存のシステムにC/S Bridgeを被せる形で対応できることだ。

 Web化したいからと言って、バッチなどのシステムをゼロからJavaで再開発するといった方法では、かかる手間やコストは膨大になってしまう。また、Javaでは上位互換性が必ずしも保障されていないため、業務ロジックをすべてJavaで構築すると、将来バージョンアップするときに、綿密なテストの実施が求められる可能性もある。

 「Webブラウザを使うエンドユーザーにとって、バックエンドで動くプログラム言語がRPGでもCOBOLでも、Javaでも関係ない」と割り切れるならば、画期的と言えるかもしれない。

 また、iSeriesのハードウェアを運用するユーザーにとって、ビジネスロジックがRPGやCOBOLで書かれていて、GUIを自由に選べるのが理想的な環境の要件として挙げられるかもしれない。ハードウェアやOSをアップグレードしたときに、GUIが分離されていれば、すぐに新たなGUI環境を構築して移行できるからだ。ビジネスロジックとGUIの分離は、企業の情報システムとして必要な柔軟性を確保する上で、今後も大事な要件になる。

今最も売れているというプリザーブドフラワー。本物の花に特殊な加工をすることで、生きているのとほとんど変わらない状態の造花を実現している。

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