無線ICタグは中小企業の武器になる、製造業で実証実験

「無線ICタグを使った生産システムのめどがついた」――NTTデータら4者は、今年3月に実施した製造業における無線ICタグの実証実験の結果を明らかにした。

» 2005年08月05日 21時36分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 NTTデータ、慶応大学、日本プラントメンテナンス協会、東洋精器は8月5日、今年3月に共同で行った無線ICタグの製造業での実証実験の結果を発表した。

 日本プラントメンテナンス協会の理事 村瀬由堯氏は「製造業の納期遅れゼロを実現できるのが無線ICタグ。実証実験でも期待できる結果となった」として、「無線ICタグを使った生産システムのめどがつき、日本の産業界に衝撃を与える」と述べた。

 実証実験は浜松市で機械部品を製造している東洋精器の工場内の生産ラインに、NTTデータの無線ICタグの管理システムを導入し、行った。実施期間は3月14日から25日。富士通製でユビキタスIDセンターの基準に準拠した13.56MHzの無線ICタグ、100枚を使った。

カート 工場内で使う自動車部品のカート。部品を載せて各工程を移動する。生産指示票に無線ICタグを付けた

 工場内で使う自動車部品の生産指示票に無線ICタグを貼付し、素材の払い出し、旋盤と穴あけの2つの工程で実証した。無線ICタグのリーダーはそれぞれの工程の入口と出口に付けた。工程を通過する生産指示票の無線ICタグを読み取ることで、素材の滞留時間や加工時間が分かる。素材の通過情報を現場や管理者が把握し、「情報の流れとモノの流れの整合性を無線ICタグで確保して、一連の流れの可視化する」(NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎氏)ことを期待した。

 実証実験では、生産管理・出荷サブプロセスを確認できるモニタリングシステムを利用した。このシステムを使うことで各注文が工場内のどの工程にあり、予定通りに作業が進んでいるかを目で確認できる。システムは管理者だけでなく、現場の作業者も確認可能。各注文に対していつまでに作業を終了させないといけないかを確認できるため、「現場で緊張感と安心感が生まれる」ことを期待したという。

 実証実験の結果は「無線ICタグのシステムが製造現場の担当者に受け入れられることを実証した」(山本氏)ことで、現行の製造工程で無線ICタグのシステムが利用できることを確かめられたとの認識だ。

 ただ、「効果を挙げるためにはモノの流れを整備することなど、あらかじめ製造現場で改善する必要ある」とも指摘。村瀬氏は「中小企業や機械組み立ての企業、部品メーカーは明確な効果が期待できる」と述べた。

 実際にシステムを導入し、実証実験に参加した東洋精器の代表取締役社長 小岸宣夫氏は、「実証実験参加の狙いは多品種に対応する製造システムの開発と、プロセスの改善をスピーディ、継続的に行うため」と述べたうえで、結果について「実績情報を早く流してスピーディに工程の問題点を解決できる。中小企業を強くする大きな武器になる」と語った。

 「納期遵守と品質保証が無線ICタグのシステムを導入する最大の目的。ぜひ導入する方向で検討したい。予算などを議論している」と述べ、導入に前向きな姿勢も見せた。

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