Debian Common Core Allianceは弱者連合か?Interview(3/3 ページ)

» 2005年08月10日 18時16分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

佐渡 別にわれわれはDebianだけをpushしているわけではありません。ディストロを使うだけであれば、別にRed Hatでも構いません。われわれはディストリビューションに中立であることを信条にし、同じようにカーネルレベルサポートを提供することができます。また、顧客もRed Hat Enterprise Linuxのような従来型の製品も求めているはずです。

 VA Linuxのビジネスの多くを占めるLinuxカーネル関連のビジネス、その中でもカーネル障害解析サービスであるVA Questは高い成長を見せています。その枠内での案件を見て思うのは、やはりほとんどのシステムにRed Hat Enterprise Linuxが使われているということです。その次がDebian GNU/Linuxですね。そのほかは無いに等しいかと思います。これは、基本的に多くのシステムでは標準としてRHELを使うが、特殊な用途だったり同じ構成で大量のサーバーを用意する場合にはフリー(自由)なDebianが使われる確率が高くなるということです。ここで言う「特殊な」とは、多くの場合さまざまなカスタムメイドなシステムであることが多いのでフリーが求められるということです。一般ユーザーには案外知られていませんが、Debianは非常にシビアな性能を求められる世界でも使われています。

 DebianではRHELと違ってプロプライエタリなソフトウェアを組み合わせてシステムが作られることはほとんどありません。これはDCCAの目論見でもあるISVの支持がないということに繋がるわけですが、われわれはそのような状況でもいいと考えています。オープンソースのミドルウェアの信頼性が上がりつつある現在、すべてフリーなソフトウェアでミッションクリティカルなシステムを構成することは問題にならなくなりつつあります。すべてフリーなソフトウェアでシステムを構成するのであれば、わざわざRHELにする必要もないし、そもそも上にのせるプロプライエタリ・ソフトウェアも要らない。

 このような案件では提供側か発注側にサポート責任がまわってきますが、それでもフルオープンソースという市場は今後確実に大きくなるでしょう。ベンダーロックインで痛い目にあったシステム・インテグレーターやユーザー企業は多いわけですが、そのような企業ほどフルオープンソースでいざとなれば自分達で制御権を持つことができる世界は魅力的に映るはずです。この世界を支えるLinux OSとしては、やはりベンダーニュートラルでフリーなOSであるDebian GNU/Linuxが向いています。

 ということで、質問の答えとしては、このようなフルオープンソースでベンダーニュートラルな世界を推進するためにDebianをpushしているということです。そんな世界では逆にVA Linuxもベンダーロックインできないじゃないかという突っ込みがありそうですが、われわれは確かな技術力と信頼だけで勝負できると思っています。

 仮にDebianがどこかの特定の組織の制御下に置かれ自由がなくなるということであれば、われわれとしてはDebianを推進する理由がなくなります。つまり、われわれはいつまでもDebian Projectという枠で自由な開発がなされることを望んでいますし、それがRHELのような市場とは別に新たなフルオープンソース市場を生み出すと考えています。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ