ネット統治のための新提案

インターネットの発展にはIETFなどが大きな役割を果たしてきたが、問題の中心が規制などに移行した今、新たなガバナンスモデルが求められている。(IDG)

» 2005年08月22日 16時17分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ネットワーク管理者の中には、政治および効果的ガバナンス戦略に、並々ならぬ関心を持っている人が多い。これはネットワーキングが――ちょうど効果的な政府を築くための主要課題でもある――「共通の利益のために多数の異なる物を連係させる」技であり科学だからだ。

 インターネットが登場する前の決定的ガバナンスモデルは君主制だった。AT&Tが紛れもない女王として君臨、独裁的権力をふるっていた。インターネットがこのモデルを打ち破り、権力を“諸国”(個々のISP)と“民”(個々のルータ)に戻した。“諸国”と“民”はそれぞれ十分な情報を得て、納得の上で決定を下す。

 このため多くのインターネット設計者が、民主主義と自由市場の最良構成要素に結び付けて、インターネットのモデルを描いている。IETFでさえそうだ。関係者を集めて共通の利益のための技術プロジェクトの協議に当たらせるIETFのフォーラム形式は、明確に、古代ローマ民主主義をモデルとしている。

 このインターネット/IETF式ガバナンスモデルは機能したか? 多くの点で、機能した。IETFは当初、(IEEEやITUなどの)ほかのネットワーク標準化団体より、はるかに迅速に主要なプロトコルを世に送り出した。長年のIETF関係者の多くはIETFが「標準化団体」と呼ばれることに強く反発するが、何と呼ぼうが、IETFはプロトコルの策定とインターネットの普及促進において、並外れた成果を上げた。

 このモデルは今も有効か? その確信は持てない。わたしの考えでは、今日インターネットに向けられている最大の懸念は、技術よりも、規制と運用にかかわるものだ。例えば、どうすればプロバイダー各社に互いのQoSタグを尊重するよう仕向けることができるのか? プロバイダーにとって、競争優位のためのトラフィックの検閲は受け入れられることだろうか? プロバイダーに対し、売り上げの一部をユニバーサルなインターネットアクセスなどの「共通の利益」となるサービスに充てるよう義務付けるべきか?

 IETFは、こうした規制上、運用上の問題の扱いが得意ではない(もっと公平な言い方をすれば、誰もIETFにそんな仕事を期待していない)。

 では、どうしたらいいのか。解の1つは政府に頼ることだ。わたしは、政府による規制が大好きなわけではない。ほかの手段よりましな場合もあるが、規制は一般に、業界の革新を遅らせる。さらには、インターネットは国際的なものだから、どの国の政府が審判員になるのかという問題もある。かといって、自由市場がこうした問いに答えてくれるのを待っていても、らちは明きそうにない。

 そこでわたしは、IETFに似た、しかし運用面と経済面に特化して関係者が協議できる場を提供する団体が必要だと提言したい。いうなれば、全米証券業協会(NASD)のような団体だ。NASDは基本的に証券業界の審判員として機能、基本的なルールを設定し、会員企業の行動を監視している。

 新しくつくる団体を、国際ネットワーキングサービスプロバイダー協会(IANSP)と呼ぼう。NASDのように(そしてIETFと違って)、参加は(人物単位ではなく)プロバイダー単位とし、サービスプロバイダー同士の良好な連係の確保を設立趣旨とする。IANSPによる自主規制がうまくいく限り、インターネットの運用が合理化されて共通の利益となり、政府介入の必要性も最小限にとどまるだろう。

(By Johna Till Johnson, Network World US)

※本稿筆者ジョナ・ティル・ジョンソンは、テクノロジー調査会社Nemertes Researchの社長兼チーフリサーチオフィサー。

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