β2リリースで見えたOpenOffice.org 2.0の真価月刊「OpenOffice.orgコミュニティ通信」――9月号(2/2 ページ)

» 2005年09月09日 21時17分 公開
[可知 豊,ITmedia]
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 現在のOpenOffice.org2.0β2のソースコードは、LGPL/SISSLのデュアルライセンスで提供されていますが、OpenOffice.orgの第一著作権者であるSun MicrosystemsがSISSLを廃止するのに伴い、次回からLGPLだけでリリースされる予定です。

 SISSL(関連リンク)。このライセンスはSun Microsystemsが作ったものであり、同社のオープンソースプロジェクトで使われてきました。OpenOffice.orgを配布する団体や個人は、どちらのライセンスを使用するかを選択することができましたが、大半はLGPLを選んできました。

 オープンソースライセンスは、オープンソースイニシアティブ(OSI)により認可されており、現在50ほどのライセンスがあります。この数週間、OSIは開発者や企業がより簡単にライセンスを選べるように、ライセンスの種類を制限することを議論してきました。このような流れを受けて、SunはSISSL廃止を決定したのです。

 ライセンスの単純化はユーザーに影響を与えません。OpenOffice.orgは、これまでと同じように使用や配布できます。そして自由に販売することもできるのです。ユーザーは、民間/政府機関を問わずどこでもOpenOffice.orgを自由に使用することが可能です。

 通常、ライセンスの種類を変更するには、著作権者の同意が必要です。OpenOffice.orgの場合、Sunを第一著作権者として開発されており、ほかの多くの開発者は、Sunと共同著作権管理契約を結んだ上でソースコードを提供しています。オープンソースでは、ソースコードを自由に改良したり再配布したりできますが、再配布されたソースコードを正式に組み込むための条件は、開発プロジェクトごとに違っています。

 OpenOffice.orgの場合は、この共同著作権管理契約を結ぶことが条件になっています。そのために、Sunは、ほかの開発者と議論することなくライセンスを変更できます。

 この変更は、OpenOffice.orgにはほとんど影響を与えませんが、オープンソースライセンスの数が少なくなることで、企業や開発者がオープンソースソフトウェアを開発する際、ライセンスの選択が簡単になっていくと考えられます。

一太郎、OpenDocumentフォーマットに対応

 9月7日、ジャストシステムは中央省庁/地方自治体向け日本語ワープロ「一太郎ガバメント2006」を来年2月に発売すると発表しました(関連リンク)。合わせて、一太郎でOASIS OpenDocumentフォーマットの読み書きを可能にする追加モジュールを来年夏に無償提供すると発表しています。

 OASISは、E文書情報交換のための標準化団体です。そして、OpenDocumentフォーマットは、OASIS標準のオフィススイート用ファイルフォーマットで、OpenOffice.orgのファイルフォーマットを元に標準化されています。

 OpenOffice.orgは、バージョン2.0から、このフォーマットを標準ファイル形式を採用となりました。また、欧州連合の標準フォーマットの候補にもなっています(関連リンク)

 一太郎がこのOASIS OpenDocumentフォーマットに対応するということは、一太郎とOpenOffice.orgが相互にファイル交換できるようになることを意味します。

 まだ、追加モジュールの詳細が明らかになっていないのですが、これが一太郎ガバメントに限定されたものなのか、ほかの一太郎製品や旧バージョンでも利用できるのかは不明です。しかし、OpenOffice.orgと一太郎が同じファイル形式を採用することで、このファイル形式が日本でも存在感を示していくことは間違いないでしょう。

OpenOffice.orgでSVGファイルをインポート

 SVG(Scalable Vector Graphics)は、線や面の集まりとして図形を定義する2Dベクター形式のファイルフォーマットです。W3Cで標準化されており、XMLで記述されています。

 OpenOffice.orgのDrawでイラストを描くと、この SVGで保存(エクスポート)できます。

 しかし、それを読み込む(インポートする)ことができませんでした。OpenClipart ProjectのようにSVGファイルのフリークリップアートが充実してきているので、これが利用できないのは痛いです。

 そこで開発されたのが、このOpenOffice SVG Importフィルタです(関連リンク)。これを使うと、OpenOffice.org-DrawでSVGファイルを読み込めるようになります。ただし、図形のパスなどは編集できません。サイズ変更したり、あくまで読み込むだけ。まあ、クリップアートを利用するには、これで十分ではないかと思います。

 このフィルタを利用するには、次のように操作します。

1. OpenOffice SVG Importをダウンロードする。

2. ZIPファイルは解凍しないでおく。

3. OOoを起動して、[ツール]→[パッケージマネージャ]を選択。

4. <追加>ボタンをクリック。

5. ダウンロードしたZIPファイルを選択する。

6. <OK>ボタンをクリック。

 これで、"ファイルを開く"にSVGファイルが追加されます。古いフィルターがある場合は、事前にアンインストールしておくといいでしょう。対応しているのは、OpenOffice.org 2.0とJava 5.0です。

 「いや、編集もできないと困る」という意見もありますが、SVGとDrawのファイルに機能差が多いので、全部を編集できるようにするのは大変です。そこで、とりあえずこんな形になりました。

文字数−行数を簡単に指定したい

 OpenOffice.orgでよく聞かれる質問に、「文字数と行数を指定して文書を作成できないか」という点があります。社内報やレポートなどの原稿で「34文字×37行×4ページ」というような形で依頼されることが少なからずあるのだと思います。OpenOffice.orgでは、文字数と行数を[書式]→[ページ]で指定できますが、これがちょっと使いにくい。一方の設定値を変えると他方も変わってしまうことがあるため、思いどおりに設定できないのです。

 そこで、汎用−原稿用紙テンプレートを公開しました(関連リンク)。このテンプレートを読み込むと、原稿用紙のような画面が表示されます。行数の指定は、[書式]→[ページ]で行います。文字数の指定は、ルーラーで行います。各設定は独立して行えるので、今までよりもかなり使いやすいと思います。ぜひ、お試しください。

PerlでOpenDocumentファイルを制御する

 OpenOffice-OODocは、OpenDocumetファイルをPerlで制御するためのライブラリです(関連リンク)。このライブラリだけで、OpenOffice.orgを使用することなく、ワープロ/表計算/プレゼンテーション/ドローといったファイルを扱うことができるのです。

 ファイルフォーマットがOASIS OpenDocumetとして公開されているため、このライブラリだけでOpenOffice.orgを利用しなくてもサーバーサイドでOpenDocumetファイルを扱うことが可能です。

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