Salesforce.comはOracleのSiebel買収にどう対抗するのか?Dreamforce'05 Report

Salesforce.comのベニオフCEOはプレス向けのQ&AセッションでOracleによるSiebelの買収に対して、あくまで自社サービスの優位性を強くアピールした。

» 2005年09月13日 17時37分 公開
[谷川耕一 ,ITmedia]

 Salesforce.comの「Dreamforce'05」カンファレンスに参加するプレス、アナリスト向けに行われたQ&Aセッションで、OracleによるSiebelの買収をどう受け止めているかという質問に対し、CEOのマーク・ベニオフ氏は古巣でもあるOracleに対するSalesforce.comの優位性についてコメントした。

 「1つのコンピュータプラットフォーム、1つのバージョン、CRMを実現するには1つのサービス選択だけでいい」──ベニオフ氏はこう強気に捲くし立てた。

 PeopleSoft、JD Edwards、さらにRetekと立て続けのエンタープライズアプリケーションベンダー買収で、顧客ベースの獲得とアプリケーション分野でのシェア拡大を進めるOracle。今回のSiebel獲得で、CRM分野での追い上げを一気に加速する。

 しかしながら、ベニオフ氏の言葉を信用するならば、オンデマンドCRMの分野に限れば、Oracleは現段階ではまだ強敵ではないのかもしれない。

 買収を続けたせいで、Oracleは今や複数のCRMアプリケーションを持つことになった。これらのアプリケーションは、既存のインストールベースはもちろん、新規に出荷される製品についてもまだ統合されていない。急激な統合なしに既存のリソースを無駄にせず、緩やかに統合環境を構築しようというのが、「Project Fusion」の戦略だ。当然、この戦略は始まったばかりであり成否はこれから問われる。

 これに加え、各アプリケーションは、オープンシステムのため複数のプラットフォームをサポートしている。そして、利用される各種アプリケーションそのもののバージョンも、さまざまなはずだ。そうなると、サポートしなければならない組み合わせは膨大になる。これらをまず将来的に1つに統合するわけだが、それには莫大なリソースと時間がかかるだろう。

 当分のあいだ、Oracleのサポート窓口では、自社の製品ファミリーのどのCRM製品のどのバージョン、ハードウェア、OS、パッチの状況などすべてを確認し、はじめてトラブル対応することになる(そもそも、窓口が複数の状態が長く続くかもしれない)。このサポートサービスの手間とコストも、相当なものだ。

 さらにベニオフ氏は、「Siebel CRM OnDemandはIBM DB2で動いている。このままOracleがサービスを提供するわけがない。これをOracleのソリューションとして提供できるようになるには、まだまだ時間がかかる」と続ける。複雑なバージョンとプラットホームの組み合わせだけでなく、ここにも先行するSalesforce.comに優位性があるという。そのためベニオフ氏は、Salesforce.comであれば「One Choice!」と豪語するのだ。

 とはいえ、とりわけ日本においてSalesforce.comの認知度は、Oracleに比べかなり低い。販売チャネルとなるパートナー企業の数や規模にも、大きな差がある。莫大な資金力と体力を誇るOracleが、このまま手をこまぬいているわけががない。Oracleが実施するマーケティングおよび販売戦略いかんによっては、シェアの地図も塗り代わる可能性もある。

 ただし、オンデマンドビジネスでは、ハードウェア販売や開発といったシステムインテグレーターが介入する余地が極端に少ない。この点で、これまでのデータベース販売と同様な日本オラクルのパートナー戦略は、通用しない可能性もある。オンデマンド・アプリケーションという、今後発展が期待される分野における次なるヒーローは、サービスの質とともに、顧客の心をつかむマーケティング、販売戦略が重要になりそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ