Gartner、オープンソースを公平かつ正当に評価(1/2 ページ)

Gartner Application Development Summitでのマーク・ドライバー氏のオープンソースに関する講演は、誠に公平かつ正当なものであった。

» 2005年09月26日 11時11分 公開
[Joe-Barr,japan.linux.com]

 13日のGartner Application Development Summitは、「アナリストとの会食」で始まった。会場では、イベント・ディレクターのPascal Winckel氏が、Gartnerの調査担当副社長マーク・ドライバー(Mark Driver)氏を囲むテーブルに案内してくれた。かくして、このカンファレンスにおけるわたしの取材ターゲットは同氏となった。同氏はオープンソースを話題にするアナリストだからである。

 Application Development Summitには2日間のフォローオン・カンファレンスがセットになっているが、来年のそれは「オープンソースのすべて」だそうだ。そういう噂を耳にしていたわたしは、朝食のテーブルで、この噂が本当かとドライバー氏に尋ねてみた。返ってきた答えは、その前にオープンソースに関する2日間のサミットを予定しているというもの。フロリダ州オーランドで12月に開催するのだという。この日は思いがけなくも喜ばしい話の多い1日だったが、これはその最初の驚きであった。Gartnerはオープンソースの大ファンではないかもしれないが、その存在を認知していることは確かである。

開発プラットフォームの選択

 朝のプレゼンテーションでは、ドライバー氏は「.Net、J2EE、オープンソースでのソフトウェア・サービスの構築」をタイトルに掲げて登壇した。当人によれば、この5年ほど同じテーマで話をしているのだそうだ。部屋はほぼ満席。講演の終わりには質疑応答の時間が設けられており、Dale Vecchio氏が登壇してフロアからの質問のうち幾つかを選んで読み上げた。ドライバー氏によれば、この質疑応答では現在および将来に使用すべきプラットフォームについての迷いが、例年、強く現れるそうだが、今年も例外ではなかった。

 講演の内容に話を戻すと、ドライバー氏は、まず、Global 2000企業の現状と今後数年間の見通しに関する調査から、種々の結果を引用した。たとえば、.Netは過去数年拡大していたが、今は頭打ち状態にあることを示す数字を挙げた。フロアに尋ねると、Java使用派と.Net使用派が半々に分かれた。

 Visual Basic 6の打ち切りに苦しむ人々に対しては「選択の余地は全くない」と断言し、アドオン・ベンダーにも選択の自由はなく、.Netを受け入れなければ絶滅あるのみだと予言した。

 Visual Basicが今消えつつあるわけではないが、Vistaとその新しいAPIが広がるにつれ.Netの実装は今後3年の間に大きく変わるだろう。Windows 95以来、Windows開発者はかなり安定した開発プラットフォームを享受してきたが、Vistaの登場で状況は変わりつつあるというのである。

 ドライバー氏は、複雑なエンタープライズ・アプリケーションではWindows Visual xxよりもJavaの方が優れているが、小さなアプリケーションではWindows開発ツールの方が使いやすく高速だと評価した。

 また、Global 2000企業でMicrosoftあるいはJavaのいずれか一方だけを採用しているところはほとんどないと指摘し、ほとんどの企業は両方を使っているが、開発コスト管理の観点からは、アプリケーションの70%をいずれか一方のプラットフォーム上に置くのが適当であり、80%にできれば素晴らしいと述べた。

 Java開発者に対しては、将来アプリケーションのポータビリティが失われる可能性を警告した。これまでは、適切に留意すればJavaソフトウェアのポータビリティは85〜90%確保でき、プラットフォームの選択は可能であり、併用も容易だった。しかし、この割合は60%程度に低下するだろう。 Javaに関するベンダーによる囲い込み――SunによるものでもJavaのコアに関するものでもなく、Java関連の追加機能を提供するアドオン・ベンダーによる囲い込み――のリスクは、今日、これまでになく高まっていると危惧しているのである。

 講演の大半はMicrosoftとJavaの比較だったが、ドライバー氏はオープンソース開発についても触れた。いわく、オープンソースは「神からの贈り物」。ベンダーによる囲い込みを回避しつつ機能を追加することが可能になるからだという。

 さらに、オープンソース開発フレームワークEclipseは、今や「世界一のJava開発ツール」だとも評価した。

 オープンソースの先行きについて、ドライバー氏は次のように予測した。

  • 3年以内にJava VMの完全なオープンソース実装が実現
  • PHPは、エンタープライズ・ツールの主流に
  • 企業におけるMonoの利用が増加
  • ビジネスとしてのLAMPスタックのサポートが増加

 しかし、Monoについては問題点も指摘した。Microsoftは今はMonoを歓迎している。Javaツールでさえも歓迎している。なぜなら、独占に対するこれ以上の訴訟攻撃から同社を守ってくれるからだ。Microsoftが知的財産権を主張すればMonoに明日はない。しかし、Microsoftはそれを望まず、それ故に今のところは生き延びているのだとドライバー氏は解説した。致命的な打撃は、むしろ、WinFXと新しいVista APIから生まれるだろう。Monoは現在高い互換性を実現しているが、今後もその水準を維持することはできまい。ドライバー氏の見方はきわめて悲観的である。

 講演の終わりに設けられた質疑応答で、今アプリケーションを開発するとしたらどのプラットフォームを使うかという質問があった。Dale Vecchio氏はこの質問を読み上げると、「場合による」という答えでお茶を濁さないようにと釘を刺したが、ドライバー氏は、自分ならJavaとオープンソースを併用するだろうが、これは自分にとっての最善の選択であり、それが他の人にとっては間違った選択であることも大いにあり得ることだと答え、わたしを少々驚かせた。

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