なぜ日本では災害に対する心構えが低いのか――特集開始にあたって

アメリカやイギリスといった国々と比べると、災害などに危機管理に対する意識が日本は非常に低い。そういった話は大企業だけのもの、と考えているのであればそれは誤りである。災害は誰にでも等しく起こりうるのだ。

» 2005年10月03日 07時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 先日アメリカを襲ったハリケーン、「カトリーナ」「リタ」の例を挙げるまでもなく、ひとたび災害が発生すると、その影響は広範に及ぶものとなる。災害により情報システムがダウンしてしまうとビジネス上大きな影響を被ることになるが、台風や地震といった天災によりしばしば甚大な被害を受けているはずの日本では、この部分の意識が諸外国と比べて非常に低いという不思議な現象が起こっている。

 災害やテロといった危機的な状況が発生してもビジネスを停止させることのないようにする、あるいはその停止時間を可能な限り短時間にするための事前の計画・準備や事後の対応といった一連のプロセスを総称して、「事業継続計画」(Business Continuity Planning:BCP)と呼ぶことが多い。ディザスタリカバリなども広義ではBCPに加えてもよいだろう。

 BCPは知らなくとも、ビジネスを停止させ得る要因に対して備える、という意味ではリスクマネジメントの枠組みにおいて防災計画などの復旧計画を策定しているかもしれないが、実際には机上の理論である場合も珍しくない。それを示すデータとしては、エヌ・ティ・ティ・建築総合研究所と三菱総合研究所が8月に発表した「事業継続計画とITシステムの防災に関するアンケート調査」を挙げることができよう。このリポートでは、災害等の発生後の業務再開目標時間(Recovery Time Objective:RTO)を事業継続計画で定義している企業の少なさを挙げるなど、その実効性に疑問が残る結果が示されている。また、業種によりその策定状況が大きく異なるなど、まだまだ浸透していない現状が浮き彫りとなっている。

 BCPの策定には、災害時の想定損失を算出するビジネス影響分析(Business Impact Analysis:BIA)を行うことが第一歩となる。この段階で災害時に復旧すべき必要最低限のリソースと復旧の優先順位を確定させ、それを基に災害時からの復旧を具体的な手順に落とし込んでいくことになる。

 10月10日から掲載予定の同特集では、危機管理対策の重要性について考えるとともに、BCP策定のためのポイントを押さえていく。災害は相手を選ばない。中堅・中小企業であっても、情報システムに依存している部分が多いのであれば、この部分の対策をおろそかにしてはもはや立ちゆかないだろう。机上の理論で終わらない計画策定の参考にしていただければ幸いである。

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